第46話:世界一高いメロンパン?
「……。はあ、……はあ。……。お、終わった……?」
ハヤトがその場にへたり込んだ。手元の異様なパン銃は粒子となって
消え、空を埋め尽くしていた数千万のメロンパンが、焼きたての
香りを漂わせながら、雪のように地上へ降り注いでいた。
「……。レオンさん、……。さっきの『サンライズ』って……」
ハヤトが、何かに気づいたようにポツリと呟いた。
「……。サンライズって、太陽の光……日の光って意味だっけ?
……。そういえば、一部の地域でメロンパンのことを『サンライズ』
って呼ぶんだった。……。あ、だからサンライズレーザーなの!?」
ハヤトが虚空に向かって、全力のノリツッコミを炸裂させる。
「いや納得できるかぁぁッ! パンなんだから光線出すなよ!
……。僕のスキル、もう物質生成の枠を超えすぎだよおぉ!!」
「……。ふん。……。騒がしい奴だ。……。」
俺は血を吐きながらも、その間抜けな叫びを聞いて、ようやく
生きている実感を噛み締めた。禁忌の代償で、指一本動かすのも億劫だ。
そこへ、遠くから大勢の足音が響いてきた。
「――レオン様ぁぁぁーーーッ!!」
「……。生きておるか、貴様らッ!!」
瓦礫を掻き分け現れたのは、ギルド長とカレン、そして騎士団だ。
俺のボロボロな姿を見つけたカレンが、他には目もくれず、
鼻息を荒くして一直線に猛ダッシュしてくる。
「レオン様! あああぁっ! その傷、その血! なんて美しく
……。そして……エロティックなのでしょうかレオン様ぁぁ!!」
「……。お、おい、カレン。……。今は、よせ……。死ぬぞ」
嫌な予感がした。だが、感極まった変態に止まる気配はない。
「このまま一生離しませんわぁぁぁ!!!」
カレンが、俺の折れた肋骨などお構いなしに、全力でダイブした。
「――ギ、ギャァァァァァアアアアッッッ!!!」
王宮跡に、魔獣の咆哮よりも凄まじい俺の悲鳴が響き渡る。
「……。バ、バカか貴様は……っ! 死ぬ、今ので寿命がさらに
……. 五日は縮んだぞ……!! ハヤト、助け……ろ……っ」
「……。あはは、……。レオンさん、……本当にお疲れ様でした」
ハヤトが降り注ぐメロンパンを一つ拾い、それを頬張りながら、
朝日に目を細めて笑った。
(……。全く。……。高くつくと言っただろう。……。)
俺は痛みに悶絶しながらも、王都に満ちた甘い香りと、
退屈な平和の訪れを確信した。




