第47話:甘すぎる復興?
「……。離れろ、カレン。……。暑苦しいし、傷に響くと言っただろ」
激闘から一夜明けた、診療所の一室。窓から差し込む朝日は昨日までの
地獄を忘れさせるほど穏やかだったが、俺の隣の空気はひどく重い。
俺の腕を抱きしめ、恍惚とした表情で頬を寄せてくる執着の塊。
「嫌ですわ。……。レオン様の死の淵の残り香を、一滴
……。漏らさず摂取するのが、わたくしの役目ですから……!」
ダメだ、こいつには何を言っても無駄だ。
俺が深い溜息をついた時、ノックもなしにギルド長が部屋に入ってきた。
「……。ふむ。……。相変わらず、朝から盛んなことだな。
……。包帯の隙間から覗くその不機嫌そうな顔を見て安心したよ」
「……。ギルド長。……。冷やかしなら帰れ。
……。それより、……街の様子はどうなっている」
ギルド長は眉間に深いシワを寄せ、窓の外を指差した。
「……。現状か。……。一言で言えば、王都は今、
……。歴史上もっとも『甘い香り』に包まれておるよ」
窓の外を見下ろせば、そこには昨日よりもさらにシュールな光景があった。
瓦礫の隙間という隙間を埋め尽くす、山のようなメロンパン。
人々はこの世界にない極上の美味に目を輝かせ、子供も老人も夢中で
……。パンを頬張っている。地獄のような夜を越え、家を失った
……。連中にとって、その甘さは何よりの救いとなっているようだった。
「……。そして、……あの泥の残りかすの中から、奴が見つかった。
……。魔獣を呼び出した張本人、……この国の王だった男だ」
「……。この国の王だった? ……。どういうことだ。
……あの泥の中から、生きて出てきたのか」
「……。ああ、魔獣が消えた後、泥の中から這い出てきたそうだが、
……。待ち構えていた家臣たちに、魔獣召喚の罪をその場で糾弾された。
……。王の座は、既に剥奪されたよ」
俺は包帯だらけの顔で、不敵に口角を上げた。
「……。ふん。自業自得だな。……。
……。あとのことは、この国の人間が勝手に決めることだ。
……。俺にとっては、……あの無能がどうなろうと興味はない」
「……。そうもいかん。……。本人はまだ現実が分かっておらん。
……。牢の中で、城をパンで汚した責任を貴様に取らせると、
……。今も喚き散らしておるぞ」
「……。ふん。……。勝手に言わせておけ。
……。そんな寝言に付き合っている暇があるなら、
……。この国の連中も、次はもっとマシな王でも担ぎ上げるんだな」




