第42話:反転する絶望?
黄金の焔龍による白熱のブレスが、泥の巨神を焼き尽くしていく。
攻撃を開始してから、すでに数時間が経過していた。
西の空には月が低く沈み始め、夜明けが近いことを告げている。
「……。やった! レオンさん、あと少しで全部消えるよ!」
ハヤトが歓喜の声を上げる。王都を埋め尽くしていた泥の塊は、
……。もはや霧散する寸前まで追い込まれていた。
だが、消滅しかかっていた泥が、突如として不気味な拍動を始めた。
泥の残骸が激しく発光し、内側へ内へと凝縮していく。
弾けるような衝撃と共に現れたのは、巨大な泥の塊ではない。
漆黒の毛並みに禍々しい角を持つ、一匹の魔獣だった。
「……。やってくれたな。奴にとって不要な『余剰魔力』だけを、
……。俺たちに削らせていたのか」
俺は、召喚士としての致命的な見落としを悟り、歯噛みした。
あの泥の巨躯は、この『真の姿』を育てるための殻に過ぎなかった。
「――ギィィッ!」
魔獣が地を蹴った瞬間、視界からその姿が消えた。
次の瞬間、空中にいた焔龍が、たった一撃で地上へ叩き落とされる。
加勢したフェンリルも、首を掴まれ地面へと力任せに叩きつけられた。
魔獣は追撃せず、遥か遠くの山脈へとその顎を向けた。
漆黒の口腔に、凝縮された紫の光が収束していく。
放たれた閃光が夜空を裂き、王都の遥か先にある山の一つを貫いた。
轟音もなく、ただ光が触れた瞬間に、山が影も残さず消滅した。
「……。嘘だろ。……。山が、一瞬で……っ」
俺たちの乗る瑞鳥の背で、ハヤトがガタガタと震え、座り込む。
(……。召喚士として培ってきた俺の戦術が、通用しない。
……。あらゆる魔法も、強靭な獣の爪も、奴の次元には届かないのか)
魔獣が、次に狙うべき獲物を定めるように、ゆっくりと俺を睨んだ。
月光の下、その瞳は冷徹なまでの絶対的な力に満ちていた。




