第39話:捕食される軍勢?
「……ッ、足場が保たん! ハヤト、瑞鳥に飛び乗れ!」
玉座の間の床が轟音と共に爆ぜ、深淵から黒い飛沫が噴き上がった。
俺はハヤトの襟首を掴み、待機させていた黄金の鳥の背へと
……。崩落する瓦礫を蹴って、間一髪で飛び移った。
瑞鳥が鋭い咆哮を上げ、王宮の天蓋を突き破って急上昇する。
眼下では、白亜の城が内側から溢れ出す黒泥に飲み込まれ、
……。まるで巨大な泥の心臓のように、おぞましく拍動を始めていた。
「……。レオンさん、見て! 外にいた魔物たちが……ッ!」
ハヤトが震える指で城郭の外を指差した。
泥の山から無数の触手が鞭のようにしなり、空を貫いた。
それは包囲していた魔物たちを、次々と正確に串刺しにしていく。
(……。魔物どもが逃げようともせず、貫かれたまま動かん。
……。貫かれたそばから、ミイラのように干からびていくな)
「……。ふん。あれは『守護』などではない。ただの食事だ。
……。外の連中が逃げずに待っていたのは、呼び出された『核』に
……。捧げられるための生贄だったわけか」
「……。あんな大きな化け物、僕たちの力でどうにかなるの……?」
震えるハヤトに、俺は冷静な声をかけた。
「……向こう側の。ハヤト、絶望している暇はない。……。
……。奴が外の魔物を食らい尽くすまで、まだ時間はかかる。
……。今のうちに、街の人々を逃がすぞ」
俺は空中で魔法陣を展開し、数十体の『風の精霊』を召喚した。
(……。王都の民よ、聞け。……。家を捨て、城門へ集まれ。
……。生き延びたければ走れ! 出口は俺が作る!)
精霊たちが放つ俺の声が、風に乗って街の隅々にまで響き渡る。
だが、眼下の城門は資材で埋まり、物理的に厚く補強されていた。
(……。あんな厚い壁、まともにどかしている時間は無いぞ。
……。通常の魔法では、あの厚みごと焼き切るには出力が足りん)
俺は眼下の絶望的な袋小路を見下ろし、不敵に口角を上げた。
「……。よし、やってみるか。……。ハヤト、例のパンを出せ」
俺は空中で巨大な魔法陣を展開し、一頭の『レッドドラゴン』を召喚した。
そこへハヤトが生成した特製ホイップメロンパンを叩き込む。
「――グルゥゥァァッ!!」
パンを喰らったドラゴンの紅蓮の鱗が、まばゆい黄金へと染まっていく。
四本の角は天を突き、巨大化した翼は空を覆い尽くさんばかり。
……。伝説の王、『黄金の焔龍』への強制進化だ。
「……。ハヤト、掴まっていろ。……。
……。門が開かないなら、城壁ごと焼き払って出口を作ってやる」
黄金の光を帯びた超弩級のブレスが、厚い城壁へ向けて放たれた。




