第38話:強襲、断罪の拳?
「……。ハヤト、計画変更だ。……。
……。地下水路を探す時間は惜しい。……。上から行くぞ」
俺は路地裏で魔法陣を展開した。現れたのは、ハヤトのパンで
変貌を遂げた瑞鳥だ。少女を逃がし、俺たちはその背に飛び乗った。
瑞鳥が咆哮と共に跳躍し、一気に王宮のバルコニーへ。
ステンドグラスを粉砕し、俺たちは玉座の間へと強行突入した。
「……。な、なんだ!? ……。反逆者レオンだと!?」
「……。おのれ、やはり貴様の仕業か! この泥を呼び出したのは!」
広い玉座の間には、震える国王と数人の貴族、そして近衛の生き残りが
数名。王は俺を指差し、顔を真っ赤にして醜く喚き散らした。
「……。レオン! 貴様がこの国への恨みで呪いを放ったのだろう!
……。この忌々しい泥を消せ! 王命だ! 今すぐにだ!」
「……。ふん。……。
……。相変わらず、自分の無能を他人のせいにするのが上手いな」
俺は無言で歩み寄り、王の胸ぐらを力任せに掴み上げた。
「……。な、何をする! 不敬だぞ、放せッ!」
「――うるさい」
俺の拳が、王の顔面に真っ向からめり込んだ。衝撃で王が
玉座ごと後ろへ吹き飛ぶ。だが、俺は自分の拳に伝わった感触に戦慄した。
(……。なんだ、今の悍ましい手応えは。……。
……。殴った衝撃が、王の体を通って地下へ吸い込まれていった。
……。こいつの命、すでにあの『厄災』の苗床にされてやがるな)
俺は、腰を抜かして震え、剣を抜くことすら忘れている側近たちへ、
冷徹な声を浴びせた。
「……。おい、お前らもよく聞け。……。
……。このままじゃ陛下は確実に死ぬ。……。それだけじゃない。
……。陛下を依代にしたあの『泥』は、この城にいる全員を呑み込むぞ。
……。お前たちが崇めているのは、守護獣などではない。
……。すべてを食らい尽くす、底なしの『虚無』だ」
「……。な、何を馬鹿な! 陛下が、そんな不吉なものを呼ぶはずが……」
一人の貴族が声を荒らげるが、その足元は小刻みに震えていた。
「……。現実を見ろ。……。
……。魔法陣の輝きが消え、城壁の結界まで食いつぶされた。
……。あれが守護に見えるなら、お前の眼球はただの飾りだ」
俺の言葉に、周囲の者たちの顔が瞬時に土気色へと変わっていく。
逃げ道を探して視線を泳がせる者、祈るように胸に手を当てる者。
玉座の間を満たしていた傲慢な空気は、一瞬で純粋な「恐怖」に塗り替えられた。
(……。よし、少しは話が通じるか。……。だが、悠長な時間は無い)
俺がさらなる状況説明を続けようとした、その時だ。
玉座の足元から、心臓の鼓動のような、重苦しい地響きが伝わってきた。
「――ひっ、あああッ!? 床が、床が黒くなっていくぞ!」
「……。ッ、下がれハヤト!」
脈動するように、より濃い黒泥が床の隙間から噴き出し始めた。
(……。間に合わん。……。
……。地下の『核』が、完全な形を成そうとしている……!)




