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第34話:不気味な胎動と、不敵な進軍?

「……。おいレオン、いい加減その女を縛っておくのをやめろ。

 話が進まねえだろうが」


 バルガスが呆れた顔で手を伸ばすと、カレンはひいっ、と

 短い声を上げて身を縮め、芋虫のように床を転がった。


 「や、やめてください! 

 この糸はレオン様が私を想って紡いでくれた『愛の檻』なのよ!

 解くなんて万死に値するわ。このまま報告させてちょうだい!」


 「……おいハヤト。

 お前のパン、ただの粘着にしちゃあ効きすぎだぞ。

 縛り上げられて悶え喜ぶなんて、どんな呪いを込めたんだ」


 バルガスが引きつった顔で、のたうつカレンとハヤトを交互に見た。

 ハヤトは気まずそうに、机の端で小さくなっていた。


 「僕のせいじゃないです……。

 僕はただ、『ベタベタして離れないやつ』って念じただけで……」


 俺はそんな茶番を一切無視し、床で悶えるカレンを見下ろした。


 「……カレン。遊んでいる時間は終わりだ。

 王都で何を見てきたのか、早く喋れ」


 「はぁ、はぁ……。ええ、レオン様

 王たちが儀式を始めた途端、魔法陣の輝きが吸い込まれるように消えて、

 中から黒い『泥』が溢れ出したの。不気味な澱みよ」


 (魔法陣の輝きが吸い込まれた……?

 やはり、あの王宮の無能ども手綱も握れん分不相応なナニカを呼び出しやがったな)


 召喚士としての嫌な予感が、背筋を冷たく撫で上げる。


 (既存の召喚術で対処できる相手ならいいが……。

 万一、俺の手札が通用しないような事態もあり得るな)


 俺は椅子から立ち上がり、ハヤトを真っ直ぐに見据えた。


 「ハヤト、お前も来い……。

 お前のその『デタラメな生成物』が必要になるかもしれん」


 「えっ!? ……僕もですか!?

分かりました。行きます」


 俺はギルドの玄関先で魔法陣を展開した。

 眩い光と共に現れたのは、二頭の『風切り馬ウィンドホース』だ。


 「……。おい、レオン!」


 馬の背に飛び乗った俺に、バルガスが鋭い声を投げかけた。


 「まさか、そのガキと二人だけで行くつもりか!?

 ギルドの連中も何人か連れて行け。せめて人数だけでも揃えろ!」


 「……断る。

 何が起きているか分からん現状で、人を増やすのは愚策だ。

 俺たち二人なら、最悪でも身軽に逃げられる」


 「レオン……。お前なぁ」


 「それに、こいつの菓子パンが役に立つなんて、

 バルガス、お前だって信じられないだろう?

 笑えない冗談だが、俺の安眠のために少し片付けてくる」


 俺はハヤトを連れ、夜の闇へと馬を走らせた。

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