第32話:王宮の傲慢、地下の胎動?
王城の地下深く。冷たく湿った空気の満ちる
最下層の儀式場に、王と数人の側近が集まっていた。
(……最低だわ。……。
愛しのレオン様と離れ離れになって、
……こんなカビ臭い地下に潜り込まなきゃならないなんて)
私――カレンは、天井の梁に気配を殺して潜み、
眼下で行われている「実験」を冷ややかに見下ろしていた。
「……ふふ、ははは! 見ろ、魔力が収束していく!
……やはり、あんな『役立たず』を追い出したのは正解だった!
……これこそが、我が王国にふさわしい真の力だ!」
王が狂気じみた笑みを浮かべ、魔法陣の中心を指差した。
そこには、古びた宝物庫から持ち出されたという、
不気味な紋章が刻まれた石板が置かれている。
「御意。……あのような呪い師など、
……最初から我が国には不要だったのです。
……この守護獣さえ目覚めれば、スタンピードなど恐るるに足りません」
宰相が揉み手をしながら、王の機嫌を取る。
だが、隠密として修羅場を潜ってきた私の直感は、
……目の前の現象に激しい警鐘を鳴らしていた。
魔法陣から溢れ出しているのは、救いの光などではない。
それは、周囲の明かりを塗り潰すような、
……粘り気のある「黒い澱み」だった。
(……何なの、あれ。……。
生き物っていうより、ただの『泥』みたいだけど。
……。嫌な予感がする。レオン様なら何か分かるかしら)
石板の隙間から、ドロリとした何かが這い出し始めた。
それは不定形の泥のように蠢き、
……時折、中から無数の「瞳」がこちらを覗いている。
「おお……。これだ……。
……さあ、我が呼びかけに応えよ! 姿を現せ!」
王が歓喜の声を上げる中、
私は、背筋を走る強烈な悪寒に身を震わせた。
(……ダメね。……。
これ、絶対によくないことが起きるわ。……。
……早く、レオン様に知らせないと)
私は、不気味な胎動を始める王宮の地下を後にし、
……音もなく影へと溶け込んだ。




