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ソラリコ  作者: 春鳩るい
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招請

「もうっ、心配したんだよー!」


 倉庫から上がったところで待機していたロカに走り寄ってきたアルタは、腰に両手を当てて怒っている態度を取りながら、開口一番、そう告げた。


 リザレオのサンドウィッチが胃に収まる頃、ロカはアルタたちや騎士団のことを思い出した。リザレオもいるし、ユルルを捕獲した場所に戻るよりはここに自分がいると主張した方が話が早いと、発光術式を使ったのだった。光の色は、アルタが使った閃光弾を思い出しながら配色した。発光術式は島によって使われる色が違うのだ。


「ロカちゃん、よよ、よ良かったー」


 アルタの後から追いついたラズメリアは、両手を組んで泣きそうな顔になっている。


「ごめんね。あの後、ちょっと事件が起こってあの場にいられなかったの」

「では、その事件について聞かせていただきましょうか」


 アルタたちの後ろから知らない声がした。黒の詰め襟の軍服を着た、背の高い女性だった。褐色の肌に乳白色のベリーショートの髪がとても似合っている。

 彼女は左手を胸に当てて礼を取る。


「貴公がロカ殿ですね。私の名はジョルクシュ。貴公のことはソフィアンネ様から話を伺っております」

「は、はい」


 毅然とした態度といい、話し方といい、今まで出会った騎士の中では一番騎士らしい人だと言ったら、他の者に失礼だろうか。

 突然のことで若干面食らうロカだったが、アルタとラズメリアが身を引いたこともあり、彼女を見上げながら話すことになった。

 ジョルクシュは軽く周囲を確認する。大筋はアルタたちが報告しているだろうから、捕獲したソラニルの姿を探しているのだろう。

 それから、ロカの傍にいる郵便配達士の少年を見た。


「そちらの方は?」

「ぼくはリザレオと言います」

「リザレオは私を助けてくれたんです」

「助ける? ロカ殿は助けが必要な状況に置かれていたのですね」

「はい」

「ふむ。では、聞かせていただけますか」


 ロカはリザレオと一度目を合わせて合図を取ると、これまでの経緯を説明した。その話を聞き、幾つか質問を交わすにつれジョルクシュの眉間に皺が増していき、人間から姿を変えた緑色の鳥が登場した辺りで小さく唸り声を上げるまでになった。


「うーむ……」


 ジョルクシュは目を瞑りながら軽くこめかみを押さえる。

 この件は、彼女が考えていた以上に大事だった。ソラニルが間違って町に入り込んでしまっただけだと思い、ロカが関わっているとの報告を受けたソフィアンネが自ら出ようとしたのを引き止めて代わりにジョルクシュが出てきたのだが、今回の事柄は彼女だけで処理するには大き過ぎると直感した。


 とにかく、まずはその男性四人組の追跡だ。ジョルクシュは近くの騎士を呼び何か伝えると、その騎士は後数名を引き連れてどこかに去っていった。


「……申し訳ありませんが、城までご同行願えますか? この場で今回の事件を収める訳にはいかないようです」


 自分が出ると渋っていたソフィアンネを何とか諫めてまでジョルクシュは出てきたのに、結局、ソフィアンネに直に関わってもらわなければならないようだ。ほら見たことかと不敵に笑う彼女の顔が目に浮かび、ジョルクシュは深く鼻から息を吐いた。

 ロカとリザレオは再び顔を見合わせてから頷く。


「あの、ぼく、まだ仕事があるので、城に向かうのは郵便配達所に説明してからでもいいですか」

「それならば、お手を煩わせることはありません。こちらから連絡を取りますので」


 リザレオがジョルクシュと話をしている間、アルタとラズメリアがロカに近寄ってきた。


「あの後、大変なことになっていたんだね。ぼくも一緒に待っていればよかった」

「うん、ちょっとね。でも、大丈夫よ」

「ほっ、ほっ、本当に、ロカちゃんが無事で良かった……」

「ありがとう」


 ふいにアルタはリザレオをちらちら見ながら、ロカへと小声で話した。


「ねぇねぇ、あのリザレオって子、誰? ロカの知り合い?」

「うん。私がこの島に着いたときに、手を貸してくれたの」

「へー、そうなんだ。リザレオといい、あの騎士三人組といい、ロカってナンパされやすいのかな」

「もっ、もう、アルタちゃんってば。い、い、いつもそんなこと言って」


 ロカの代わりにラズメリアが軽く頬を染めながら注意し、少女たちは笑った。


「それより、ごめんね。せっかくのお出かけだったのに」

「う、ううん! き、き、気にしないで。だ、だって、ロカちゃんは悪くないもの」

「そうそう、仕方ない……とは言いつつだよ、せっっっかくロカをもっと可愛く変身させようと思って、色々計画立ててたのにー」


 拳を握ったアルタが口惜しそうに唇を尖らせる。ロカを色々着せかえて楽しむ魂胆だったらしい。どこかで聞いたり体験した話だと、ロカとラズメリアは互いを見合って苦笑した。


「次は必ず連れて行くからねー!」

「話は一段落つきましたか」

「えっ、あ、はい!」


 いつの間にか後ろに立っていたジョルクシュに、アルタは飛び上がりそうな勢いで振り返った。分かりやすい態度のアルタを見てジョルクシュは苦笑する。


「あなた方からもお話を聞かせていただきますので、お願いしますね」


 その声と共に、別の騎士が近寄ってきた。ジョルクシュはアルタとラズメリアに礼を取ると、ロカとリザレオを引き連れて城へと向かい始める。


 次回の約束があるとはいえ初めてのお出かけがこのような形で終わってしまうことは残念で、手を振るアルタとラズメリアの姿に少し後ろ髪を引かれる思いのロカだった。

ジョルクシュは、真面目丁寧わんこ系

で、お送りします。

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