来訪者たち
突然、唸り声のような音が男性たちの上空を覆う。
ひとつの影が逆光の中に浮かび上がった。
その影は勢いよく男性たちの中に踊り込むと、驚きで口を開けていた者の手から紫色の袋を奪い取る。
何とか転ばない体勢で床上を滑り、ロカの付近で停止した。
「……リザ、レオ?」
「大丈夫かい、ロカ!」
配達用のエアロハイカーから飛び降り、震えているロカを支える。淡い水色の髪が風に散った。
「どうし……、」
「喋らないで」
リザレオは心配そうにロカを覗き込みながら、彼女に座るよう促す。彼が小脇に抱えた袋から膨らんだハルデンシアの蕾が見え、もぞもぞとユルルが顔を出した。
特に怪我のなさそうなユルルの姿に、ほっとしたロカはその場に座り込む。
唐突な来訪者に男性たちは驚きから一瞬、行動が制限されていたが、解除されてロカたちへと向かってきている。
懲りない足音の集団を、リザレオは睨みつけた。
「あなたたちでしたか」
誰かの声が響いた。
リザレオは倉庫の上からエアロハイカーで飛び込んできたのだが、声の主は階段をゆっくりと歩いて降りてきた。淡い青緑色の長髪を風になびかせて薄い緑色の衣服をまとった、男性とも女性とも見える人物だ。全体的に淡い色調で柔らかな印象を受けるが、凛とした揺るがない風格が漂う。
ロカは誰だか知らなかったが、リザレオが驚いた顔を見せないところを見ると顔見知りのようだ。
「何者だ」
ただ者ではないと直感したのだろう、リーダーの男性はロカたちよりもそちらへの注意を優先する。階段を降りきったその人物は、対峙した男性四人を静かに見渡した。
「私は、ユルルを保護する者です」
「保護?」
「あなたたちは」
「……」
「いえ、言わなくても結構です。私たちはあなたたちがどこの者かを知っています」
「……」
自身を保護者と称した者はふいにロカたちの方を向く。視線を感じたのか袋の中のユルルがぴくりと顔を上げると、一目散にその者の元へと飛んでいった。長髪の人物は、嬉しそうに寄り添ってくるユルルに微笑む。
「この子は私たちの島に住んでいます。この子が私たちの島に住み続けるのを望む限り、それを妨害するものを防ぐ義務が私たちにはあります」
「私たちの? あの島に人は住んで、」
リーダーの男性は、はっとすると言葉を噛み千切った。そして、長髪の男性をまじまじと眺めると、眉間に皺を寄せて仲間たちに何か小声で伝えている。
「此度のあなたたちの行いは大変遺憾です。このような場ではなく、然るべきところを通してお話しいたしましょう」
怒り心頭という態度をあからさまに出すわけではないが一歩も引く気も譲る気もない相手と、リーダーの男性は口を真一文字に結びながら睨み合う。力での争いに発展しそうな不穏な空気が流れた。反射的に、ロカの周囲を漂う光の粒子の密度が濃くなる。
「……行くぞ」
低い声と共に、リーダーの男性はふいに踵を返す。ここで争っても利はないと踏んだのだろう、仲間を連れてさっさと立ち去っていった。
ちらりとロカを一目刻んでから。
呼ばれてないが飛び出てジャジャーン、リザレオです。
郵便配達士は建物の上階までエアロハイカーで荷物を運ぶので、割と運転技術が高くて高所も得意です。




