朝食と再会2
挨拶を交わす騎士たちの後ろからやってきたのは、黒髪の目付きが悪い系男子。
「あっ、ディンセント」
「……ディーの名前も覚えているんだね」
「偽者と本物の差だな」
「本物って誰!」
ディンセントは漫談を華麗にスルーすると黙ってロカの前に立ち、彼女のセイラー服を見つめる。
「えー、何、何? セイラー服なんか眺めちゃって、ディーってばやらし、」
「お前、ちゃんとソラリコになったんだな」
ロカは少し目を見開く。ソラリコになりたいと言っていた話を、ディンセントは覚えていてくれたのだろうか。
そこには不器用な優しさがある気がして、ロカは思わず微笑んだ。
「……うんっ」
「そうか」
一瞬、ディンセントの目が柔らかく細くなる。
「えー、何、何? 通じ合っちゃってるような空気みゅっ!」
「……で、」
フェクサーの頬を鷲掴み、文字通り言葉を握り潰したディンセントの目がぎらりと光る。思わず、背筋を伸ばすロカがいた。
「ロカ。あれから、また何かやらかしてないだろうな?」
「えっ」
その言葉に、ロカは昨晩、城の屋根に登ってクゥムーと話をしていたことを思い出した。さすがに、この国を統治する城の屋根によじ登っていたことがばれるのはまずい。
「う、ウんっ、何もしてないよ!」
「……」
赤い目がさらに鋭くなる。彼の背中からゴゴゴゴゴという迫りくる擬音が見え聞こえるような錯覚さえ起こる。急な圧力の発生にロカは声を上擦らせ、隣で巻き添えになったラズメリアは眼鏡をずらしながらぷるぷると震えていた。
「……まあ、いい」
ディンセントは眼力を弱める。
「いいか。面倒事を起こして、ソフィアンネ様に迷惑をかけるなよ」
「ディーは本当にソフィアンネ様が大好きだみゅっ!」
「……分かったな、ロカ」
フェクサーの口封じをしたディンセントは、ロカを一瞥すると食堂から去っていく。レイブリックは肩を竦めた。
「やれやれ、協調性の足りない奴だ」
「いてて……力の配慮も足りないディーは冗談通じないお年頃なんだから」
眼鏡を持ち上げたレイブリックは、唐突にロカに問いかける。
「そういえば、昨日のソラニルはどうしているんだ?」
「クゥムーのこと? 多分、どこかで遊んでいると思うけど」
「城のどこかで?」
「いいえ、むやみやたらに城の中には入らないわ。ただ、もしかしたらこの辺りの空にいるかも。それか、主の島じゃないかしら」
「主の島?」
「ええ、主の島」
レイブリックなりに、ソラニルの動向を把握しておきたかったようだが、予想もしていなかった言葉を聞き、彼はフェクサーと顔を見合わせる。アルタとラズメリアもきょとんとしている。
疑問しか浮かんでいないこの場の空気を吸ったロカも、きょとんとしていた。
フェクサーの頬はほぐされてきっともちもちです。




