朝食と再会1
ロカとラズメリアは、食堂に行く手前でアルタと合流する。今日のアルタは、耳の高さのツインテールを可愛らしく揺らしていた。
おいしそうな香りが漂う食堂は朝から賑やかだ。窓から入る光は明るく、木が使われているこの部屋は暖色に包まれている。昨日の夕食のときもそうだったが、こんなにもたくさんの人が城で働いているのだとロカは改めて感じた。
並べられている食べ物を好きに取っていくビュッフェスタイルで、ロカは、瑞々しいサラダと温かいふわふわの白いパン、野菜がゴロゴロ入ったミルクスープと蜂蜜をかけたヨーグルト、そしてアップルジュースをチョイスした。
席に着いて食べながら、起き抜けにロカとラズメリアが話していた内容をアルタに共有する。可愛いお店ならたくさん知ってるから任せてと鼻息荒くガッツポーズをするアルタを見ながら、ロカはラズメリアと一緒に笑った。以前も同じようなものを食べていたと思うが、何だか、ここで食べる方がとてもおいしい。
アルタは情報通だ。何とかという通りの角にあるパン屋のクロワッサンに季節限定のものが出たとか、何とかという雑貨屋のガラスのピアスが可愛いかったとか、お気に入りのドライフラワーの髪飾りが再販するとか。どうやらグルメやビューティ関係が主なようで、アルタはそういうのが大好物らしい。
「ねーねー、ロカのそのピアスって良いね。右は小さな青い石で、左は涙の形をした大きめの青い宝石。揺れるから綺麗だし」
「ふふ、ありがとう」
「それって彼氏からの贈り物ー?」
「えっ? はは、ううん、違うよ」
苦笑するロカは涙型の石に触れる。ちらちらと揺れるそれは、光を反射して煌めく。
「小さい頃に貰った、大切なものなの」
「へー、大事にしているんだね。良いね、何かそういうのって」
指先で触れ、青い石の存在を確かめる。ロカにとって、それはかけがえのないものだ。今のロカがあるのも、この石のお陰といってもよいのかもしれない。
幻想的で、とても楽しくて。
青い宝石に秘められた物語は、いつ紐解いても心を輝かせてくれるものだった。
そうやってキラキラしたお喋りをしながら食べていると、ふいにロカの斜め前に影ができる。見上げると、昨日の騎士がいた。
「おはよー、ロカちゃん」
「あ、えと……確か……フェイク?」
「ご名答。こいつの名前は偽者だ」
「ちょっと、レイ? 何、いきなり嘘の答え合わせしてるの」
「いや、お前に的確な名前だなぁと思って」
「ひどい!」
金髪の眼鏡男子と赤髪のいじられ系男子が、突然漫談を始めた。ロカは見知っているので笑って観客になっているが、アルタとラズメリアはぽかんとした表情でそれらを眺めている。
「ロカちゃーん、フェクサーだよ、フェクサー」
「あはは、ごめんね」
「ロカ、騎士とどこで知り合ったの?」
アルタは首を傾げる。コハントルタでは、ソラリコと騎士は共同の仕事があまりないため、ほとんど交流がないといってよい。しかも、ロカは昨日ここに来たばかりなのだから尚更だ。ラズメリアはこの場をどう対処してよいのか分からず、両手を組んであわあわしている。
「昨日、この島に来たときに出会ったの。お城に連れていってもらったわ」
「そうなんだよ。あ、ロカちゃんを城に連れていったのは別の奴だけどね」
「そっかー、良かった。もしや、ロカがナンパでもされたのかと思った」
「おっと、初対面でさっくり言うね」
「フェクサーはそう思われても構わないが、俺は違うからな。まとめられると困る」
「被害者面!」
引き続き漫談を聞かされているアルタとラズメリアへ、ロカは騎士の二人に手を差し伸べる。
「えとね、こちらがフェクサー。そして、こちらがレイブリックだよ」
「……レイの名前は覚えているんだね」
「日頃の行いの成果だな」
「え、いやいやいやいや、レイはどっちかって言うみゅっ!」
「フェクサー、頬が弛んでるから引き締めてやろう」
「うぉうにょくはんにゃい」
「挨拶中に戯れ言が入ってすまなかった。レイブリックだ、どうぞよろしく」
「ぷはっ。あーもー、手を上げる男ってヒドイー。まったく……さて、改めまして、オレはフェクサーだよ。よろしくね」
「……どうも。ぼくはアルタ、よろしく」
「あっ、どっ、あ、ああああの、よろ、」
「ロカの横でテンパってるのはラズメリア、よろしくしてやってね」
「ふふ。うん、よろしくねー」
知っている人たちが繋がっていく。
ロカはそれだけで何だか嬉しくなるのだった。
ファンタジーの世界において、現代の名称のヨーグルトとか使うのってどうなのううーん、でも、任意の名を付けたらどんな味か形かパッと思い浮かばないしううーん、ジレンマァ……!って胸を掻きむしりながら前者選択したのは内緒。




