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ソラリコ  作者: 春鳩るい
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夜の飛行

 憂いで息が詰まるような感覚に襲われたロカは、窓を開ける。そこは静かな夜が空を包むばかりだった。


 静か。

 本当に、静かだと思った。


 あの島は眠らなかったから。

 眠ることを許されず、また、拒んでいた島だから。

 それは気高く誇りある志故のものだった。

 それはとても大切なことで、この静けさはきっと、あの島の志によって成立しているものでもあると思う。

 それを思うに、そこを出てきた自分の行動は本当に良かったのかと心を掻きむしりたくなる衝動に駆られることもある。

 ……でも、それでも。


 ふいに、考え事の向こう側を何かが通る。

 はっと気付くと、そこにクゥムーが浮かんでいた。


「クゥムーっ」

「ム!」

「あっ、あらあらあら」


 驚いてベッドから立ち上がったラズメリアも、ロカの傍へと近寄った。


「よかった、あなたを探しに行こうとしていたところなの。ねぇ、眠れる場所は見つかった?」

「……ムム」


 何故か急にテンションが下がるクゥムーに首を傾げるロカだったが、とにかく寝床は見つかったようだ。

 クゥムーはロカの腕を甘噛みすると、窓の外へと誘う。


「あっ、あらあらあら、クゥムーちゃん、わ、私たち、よ、夜は空を渡れないのよ」


 そう。ソラリコは、太陽の出ている間しか空を渡ることができない。飛行船やエアロハイカーなどの乗り物も同様である。

 先のクゥムーを見てのとおり、ソラニルは昼夜問わず飛行することができるが、基本的に人間は日没後から日の出までの時間帯は空を移動することができないのだ。太陽が沈む時刻のボーダーラインを日没ラインといい、太陽が顔を出す時刻のボーダーラインを日の出ラインという。特に島間での日没の時刻のずれには注意が必要で、万が一、飛行中の船が日没ラインを越えてしまうと、飛行能力を失い墜落してしまう。

 そこが島の上空ならばまだ何とかなるかもしれないが、外となると、ずっと下の海に落ちる他ない。


 船やエアロハイカーは、飛行能力を生み出す源のソライシを燃料として空を渡ることができる。

 ソライシとは、昔、ソラニルによってもたらされた花の蜜を原料とし、その蜜を特殊な加工により固まらせたものだ。そのソライシを飛行機構の中で撹拌させ、互いにぶつからせたときに生まれたエネルギーが飛行時の動力源となる。

 ぶつかったときに生じる光の粒子が、ソラリコの空を渡る際に生じる光の粒子とそっくりなので、ソラリコの能力もソライシと同じではないかというのが研究者の間では有力な仮説なのだが、まだ実証できているものではない。


「ムー?」


 クゥムーは不思議そうにロカを見た。ロカはラズメリアをちらりと見ながら、少し困ったような表情でクゥムーを撫でる。


「そうだ、クゥムー、外でお話ししよう」


 ロカはすぐ隣にいたラズメリアに向き直る。


「ちょっと外に出てくるね」

「あ、あう、うん。あ、あの、あまり、遅くならないようにね。み、見つかったら、怒られちゃうから」

「分かった」


 ロカはクゥムーに指差しして外に行こうと伝える。クゥムーは体を翻して窓から消え、それを確認したロカはすぐにドアから出ていった。ボディランゲージでのやり取りを見たラズメリアは、頬に手を当ててうっとりとする。


「ロカちゃんとクゥムーちゃんは、ほ、本当に仲が良いのね。ソラニルといつも共にいるなんて、な、な、なんてソラリコらしくて素敵なのかしら。き、きっと、二人ならではのお話とかもあああるはずよね。ま、また、お話を聞かせてもらわなくちゃ!」

今回はちょっと説明多めですね、かくかくしかじか。



/// お知らせ ///

今回で三十話目となります。

一旦、更新の頻度を一日一話にしようかなと思っています(今日は二話更新します)。

たまに二話更新しているかもしれませんが、そこら辺は私のふわふわした脳の衝動の赴くままに投稿ボタンをポチらせていただくことをご了承くださいませ。

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