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ソラリコ  作者: 春鳩るい
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 控え室に戻ったソラリコたち。

 各個自席が用意されており、ロカはアルタとラズメリアの傍の席を指示された。ロカの椅子の横に置いてある赤いトランクを見るに、彼女は裏門へ荷物を取りに行ってきたのだろう。

 クゥムーはたくさんの人間がいる部屋に入るのはさすがに手狭なため、どこかへ遊びにいったようだ。


 セシルに呼ばれたロカは、青いリボンが巻かれた不織布の袋を渡された。柔らかいサテン生地を紐解く。ふわりとリボンの端が舞い落ちる。

 中には真っ白なソラリコのセイラー服が入っていた。

 声を失ったままセシルを見上げる。感極まってぷるぷると微かに震えているロカを見たセシルは苦笑し、ロカの肩をぽんぽんと優しく叩いた。


「おめでとう。ソラリコの証だよ」


 様子を見ていた他のソラリコたちもロカへと拍手を贈る。

 一方で、小さく黄色い声を上げるソラリコたちの目線は、どうやら微笑むセシルを見てのようだ。


 指定の靴も渡され、着替えておいでと控え室のドアから続く隣の衣装部屋を指された。アルタとラズメリアが手を振ったので、ロカはそそくさと衣装部屋へ向かう。後ろ手にドアを閉め、途端にしんと静まった空気を吸う。

 ふと、いつの間にか大事に抱えていた胸の中の制服を見つめる。


 真っ白な制服。

 皆と同じ、ソラリコと同じ。


 自然と笑みがこぼれ、その白く柔らかいものを抱き締めた。

 ふわりと太陽の匂いがした。


 肌触りの良いブラウスをまとい、セイラー服に袖を通す。

 しゅるしゅると生地の擦れる音が流れる。

 制服を装飾する水色の線は、よく見ると微かに煌めく素材だ。

 スカートが落下の重力を受けながら踊る。

 脇のジッパーを上げる。

 大きな襟をふわりと払う。

 ブラウスの襟元に水色の紐でリボンを作る。

 何となく歪んでいる気がしなくもないが、気にしない。

 水色の線の装飾が付いた折り返しのある短めの白い靴下に履き替える。

 少し踵のある白いローファに爪先を滑り込ませた。


 裾を整えながら姿見の前に立つ。そこにいたのは、真っ白なセイラー服に身を包み、少しだけ頬を赤らめた自分。想像していた自身のソラリコの姿に、実物を上書きする。

 後ろを向き、鏡に振り返る。

 膝の裏が見えるか見えないかのスカートのライン。うん、ペチコートの長さも大丈夫。

 また前を向く。

 リボンを触って、やっぱり少しだけ歪んでいる気がする。

 鏡の中の自分と見つめ合う。

 左側の髪を耳にかけ直す。

 金糸の隙間で、片耳のイヤリングの青が肯定するように揺れた。


 誰も見ているわけではないが、秘密の行為のように静かにそっと、その場でくるりと回転した。スカートが柔らかく弧を描く。


 スカートの最後の軌跡を見ながら、溜め息を吐いた。きちんとした服なので動き難いかもしれないと思ったが、それは余計な心配だった。

 さすが、ソラリコの証。

 伸縮性があり仕立ても丁寧で、顔が綻ぶ。


 ふと、ロカは周囲に目をやる。セイラー服に気を取られていたが、衣装部屋と名を持つだけあって沢山のクローゼットやハンガーラックがあり、綺麗な衣装や華やかなアクセサリが所狭しと整列していた。

 衣装が多い、とロカは感じた。彼女のいた島では、華美な衣装を着て舞うソラリコをほとんど見たことがなかった。

 最もそれは、ロカのいた場所が場所であったためなのかもしれない。

 綺麗な衣装ではあるのだが、どこか鋼や防衛術式の臭いがするものばかりだった。

 彼女の島のソラリコは傷付いた騎士やソラニルのために踊りを捧げるのだが、おそらくこの島では国の行事など穏やかな場面でヤタが踊られていることがほとんどなのだろう。

 それはとても素敵なことだ。


 ロカは並んでいる衣装を見回る。ソラリコたちを彩る歴史があふれていて、ただただ心が奮えるのを感じた。

洋服、靴、鞄、腕時計、アクセサリー以下略……新しいものを身に着けるときって、何かこう、ちょっとわくわくします。

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