二人のソラリコ
「入ってきてくれ」
ソフィアンネは不敵に微笑む。入室した二人の内の右側にいる背の高い人物へと手を差し向けた。
「こちらがセシル、コハントルタ国付ソラリコの管理長だ。そして、隣が副管理長のオハラ」
「あなたがロカさんね」
品のある笑みで声をかけたオハラは、髪とスカートをなびかせながらその場で軽く一回転し、最後に踵と踵を小気味良く当てる。その衝撃で足元から光の粒子があふれ、風に乗る毛先にも微かに光が舞う。隣の所作を見ていたセシルが笑む吐息を漏らした。
「オハラ、こんな所で踊るなんて」
「あら、だって私たち、ソラリコですもの」
オハラの微笑みに微笑みで返したセシルも、回転こそはしないが踵と踵をこつんと鳴らした。光が弾けて漂う。
「こんにちは。これからよろしく、ロカ」
風が吹き、部屋の中に小さな光が満ちる。微かに頬を紅潮させるロカはソラリコの二人の雰囲気に気圧されたのか口を開けたままだったが、小さく身震いすると、とびきりの笑顔で答える。
「はいっ! よろしくお願いします!」
ロカもソラリコの二人に習って踵を合わせる。上手く踵を鳴らすことはできなかったが、足首に一瞬光の羽を生やし、風に乗って光を舞い上がらせた。どうやら、踵を鳴らし、光を注ぐ行為がソラリコの挨拶の一環だと思ったらしい。
セシルとオハラよりも密度も量も多い光の嵐に、ソラリコの二人も騎士団の者たちも驚く。ロカの肩の後ろでソラリコたちの様子を窺っていたクゥムーも光に導かれるように飛び出すと、体を捻りながらロカの周囲をくるりと一周する。
オハラが笑った。
「まあ! うふふ、素敵。これから楽しみだわ」
彼女は両手を合わせ、少し傾けた顔をその手の甲に沿わせるポーズが妙に板に付いている。
セシルがソフィアンネに礼を取った。
「ソフィアンネ様。それでは、私たちはロカと一緒に参ります」
「ああ、頼む。ロカ、落ち着いたらまた話そう」
「はいっ」
嬉しそうにロカは笑う。
幸せがあふれ出ているのは誰の目にも一目瞭然で、こんなにも心待ちにしていたのかとディンセントは静かに思った。
巨大な客船を押し止めた小さな両手が、あのヨロイクジラの王とやらにも臆せず話しかける胆力を持つ不可思議な少女が、ここではソラリコに憧れるただの夢見る乙女になっていた。
「ディンセントも色々ありがとう」
「ああ」
こう見ると、その辺にいる女の子と変わらないな。
あの、周囲を浮遊しているソラニルを除けばだが。
どうでもいいことを考えているディンセントにロカは手を振ると、セシルとオハラの後ろを足取りも軽くついていく。ソラニルも一緒に城内を行動していることは城側からしたら由々しき事態かもしれないが、ソフィアンネが咎めないので今回はスルーして構わないのだろう。
ソラリコたちがいなくなったからか、単に時間が経過したからなのかは分からなかったが、部屋の中の光の粒が急速に減少していった。
「ディンセント」
「はっ」
ソラリコたちの消えゆく輝きの軌跡を眺めながら、ソフィアンネはディンセントへと告げる。ふいに顔を微かに傾けディンセントを流し目で見るそのエメラルドグリーンの瞳に、彼は心臓を掴まれそうな気持ちになる。
「此度は本当にご苦労だった。お前がいなかったら、事態はさらに重大になっていたかもしれん」
「はっ」
「不思議な娘だろう?」
「え、あ……はい」
「ロカは、まぁ、色々あってな。うちで預かることになった」
ソフィアンネの表情に微かに憂いの色が滲んだのは、ディンセントの気のせいだろうか。
不思議な娘。
その言葉は、ロカと出会ってたった数時間しか経っていないが、しっかり脳に刻み込まれているディンセントだった。
オハラは、きっと怒らせると誰よりも恐いゆるふわ系
セシルは、頑固的王道キラキラ王子様系
で、お送りします。




