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ソラリコ  作者: 春鳩るい
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姫騎士

 コハントルタ城は、白とエメラルドグリーンと金で彩られた美しい建造物だった。色鮮やかな町並みも相まって、島全体が宝石箱のように見える。


 三人と一匹と荷物は、そのコハントルタ城の東の裏門に着く。

 ディンセントは、連れのソラニルを見てざわついている門兵の一人へと何かを言付ける。少し慌てながら門の中へと消えていく門兵を尻目に、穏やかな雰囲気を振り撒くロカとリザレオは再会の挨拶を交わしていた。


「ロカが落ち着いたら、街を案内するよ」

「本当? ありがとう」

「ぼくは港の郵便配達所にもいるし、この辺りもよく配達で回っているから、見かけたら声をかけてね。また連絡するよ」

「ムルルル……」

「クゥムーったら」

「えと、クゥムー、いずれまたちゃんとお話ししよう」


 リザレオは真っ直ぐにクゥムーを見つめる。

 そして、ロカに手を振るとエアロハイカーに跨がり、爽やかな淡い青の髪を風に散らしながら飛び去っていった。


「クゥムー、あなた、リザレオのこと、本当にどうしちゃったの?」

「ム!」


 困り顔のロカがクゥムーを撫でている傍に、いつの間にかディンセントがやってきていた。


「しばらくここで待つぞ。ソラニルがいる状態で城に入ることはできないからな」


 そう言うと、腕組みをして城の外壁にもたれたディンセントは目を閉じる。


「ねぇ、早く空の異変を知らせなきゃ」

「ああ、分かってる。それはこちらに任せておけ」

「……分かった。……ねぇ、ソラリコさんを呼んでくれているの?」

「いや。お前が何者か分からないからな」


 ディンセントは目を開くと、ロカへと不敵に笑う。


「まずはうちの軽騎士長だ」




 城内は絢爛豪華とまではいかないが堂々とした雰囲気で満たされており、その廊下を少し不釣り合いな慌ただしさで兵士が駆けていた。彼の脳裏には、先ほど見たソラニルの姿が焼き付いている。岩のような骨のような刺の付いた甲殻を持ち、その見た目の重量感とは裏腹になかなかすばしっこく動き回る。


 軽騎士が連れてきた少女と郵便配達士と一緒にいて、少女に懐いている様子だった。騎士にもソラニルと仕事をする者はいるが、一般の人間とソラニルがそんなに近い距離にいる姿など、彼は見たことがなかった。


 そして、軽騎士のあの言葉。


『ソラリコじゃないが空を渡れる少女と、その友だというソラニルを連れてきた。彼女はソラリコになるためにこの国に来たらしい。真偽を自分では判断できないため軽騎士長に確認してほしいと、話を通してきてくれないか』


 正直、意味がよく分からなかった。

 空を渡れるがソラリコではなくて、ソラリコになるためにソラニルを連れてこの国に来た?

 というか、ソラニルが友?

 一体どういうことなんだと頭の中でぐるぐると渦を巻きながら、彼は軽騎士長を探しながら進んでいく。


 階段を上がり、三階の廊下に出る。

 明るい光が差し込んで落ち着いた気配を湛えている廊下を、二人の騎士が歩いていた。背の高いその姿を見つけた兵士の足がさらに早くなる。


「ノックス軽騎士長!」


 二人の騎士が振り返る。兵士は片方の騎士の姿に釘付けになった。

 振り返る反動で長い黒髪が弧を描く。

 女性だった。


 ディンセントたち軽騎士と似た服装ではあるが装飾や細部の仕立てが豪華で、それに足してこの女性の放つ雰囲気はとても気高く、格上の者だとすぐに見て取れる。腰まである髪は光を飲むとやや紫色に染まり、額のかなり上の位置で真一文字に切り揃えられた前髪が彼女のストイックな気配をさらに強く感じさせる。見た目はディンセントと同年齢くらいなのだが、発せられる風格は桁が違った。


「ふ、副団長!」

「急いてるな、どうした」


 コハントルタ城と同じエメラルド色の大きな瞳が、呼びかけてきた兵士を射す。本当は騎士団副団長の隣にいる軽騎士長に話があったのだがと、彼女の鋭い気配だけで怯みそうになる兵士だったが、ぐっと堪えて口を開いた。


「は、はい。あの、実は今、門の所に、」

「待て」


 急な静止に兵士が驚いていると、大きく見開かれた女性の瞳の先が兵士から彼の右手の窓に移り、すーっと彼女の方へと移動していく。促された兵士とノックスも窓を見返る。

 窓の外に、少女とソラニルが浮かんでいた。


「あっ、あの子!」


 目を剥く兵士を尻目に、困り顔ながらもどこか楽しそうにしているロカと遊んでいるクゥムーが空で踊る。すでにノックスは副団長の前に身を挺していた。

 呆然としている兵士の横で女性騎士が突然笑い出し、ノックスと兵士はぎょっとする。高らかに笑い、髪を水平に払った後、彼女はノックスが止めるのを制して窓を勢いよく開け放った。


「おい、お前はロカだな? ようこそ、コハントルタへ」


 唐突な呼びかけに驚いたロカとクゥムーの動きが空中で停止する。

 纏う風に金の髪を揺らしながらきょとんとしているロカを見て軽く微笑む騎士の瞳が揺らぐ。


「ふふっ。心配するな、グランディネールから話は聞いている」


 近くに寄れと、窓の外へと手を差し出した。指先の向こうに、ロカの顔を捉える。


「私の名はソフィアンネ。コハントルタ国王立騎士団の副団長であり、コハントルタ国王の娘だ」

ソフィアンネはクールビューティふふん系

で、お送りします。

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