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103号室

朝六時。


「ピンポーン」


チャイムが鳴る。

こんな朝早くに誰だ?

仕方なくドアを開ける。


ドアの前には二人の男が立っていた。

一人は、背は低いが、がっしりとした体をしている。

年を重ねているようで頭には白髪が目立つ。

もう一人は背が高く若い男だ。


「警察の者です」


と、言いながら白髪の男が、警察手帳を見せてくる。

後ろに立っている若い男の方も同じようにして警察手帳を見せる。


―――は?

何で警察が?


と、訝しんでいると、


「小野寺幸一さんについて、お話を伺いたいのですが」


と、老齢の刑事が柔和な笑みを浮かべながら訪ねてくる。

人懐っこい印象だが、目つきは鋭かった。


「小野寺さん?」


と、聞いたことの無い名前が出てきたので問い返すと、


「この方なのですが」


と、背広の内ポケットから一枚の写真を取り出し、目の前に差し出す。

写真に写る人物は、履歴書に張り付けるような真面目な表情をしている。

免許証の写真だろうか。

背景は青一色。

胸より上の部分しか映っていない。

黒髪の分け目もきれいに整え、太い眉毛の下には芯の強そうな目がこちらを見つめている。

鼻筋は通り、口は真一文字に結ばれている。

写真を見ただけでも、この人物の誠実さが伝わってくるようだった。



そして・・・、



その人物には見覚えがあった。

見覚えがあるだけではない。

今、この部屋の中にいる。

死んだ状態で。


あの人の名前は小野寺というのか。

あの人を探しに刑事がやって来たということか。

早いところ追い返さなくてはいけないな。

しばらくの間、写真を見続けた後、


「この人は知らないですね」


と、話を切り上げようとすると、


「今、部屋の中で変な音がしなかったか?」


年配の方の刑事が若い方の刑事に問いかける。


「はい、何か妙な音が聞こえましたね」


と、部屋の奥を覗き込むようにしながら答える。


「部屋の中を確認してもよろしいですか?」




―――死体があるから無理だ。




とは言えず、


「自分で確認するから大丈夫です」


と答え、部屋の中には入らせない。

すると、


「パッリーン」


と、硝子の割れたような音が響き渡った。


「今、何かが割れた音がしましたね。不審人物がいるかもしれません。気を付けてください」


と、年配の刑事が興奮した様子で捲し立てる。

続けて、後ろを振り向き、


「お前、確認して来い」


と、若い方の刑事に指示を出す。


「失礼します」


と、言うや否や勢いよく私の脇をすり抜け、部屋の中に入って行く。

若い刑事は


「誰かいるのか!出てこい!」


と、叫びながら部屋の中を探し回っている。

すると、少しの間の後、


「発見しました。小野寺と思わしき男性。死亡を確認」




―――終わった。




「死体遺棄の現行犯で逮捕いたします」


年配の刑事は分かっていたかのように手錠を取り出している。続けて、


「先程の音はベランダ側を見張らせていた部下が誤ってガラス瓶を落として割ってしまった音だったようですね。お騒がせしました」


と、少しも悪びれる様子もなく頭を下げる。




どうしてこうなった?

どうすればよかった?

何が悪かった?


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