松山 茜
私の通う大学の薬学部は授業料がとても高い。とてもドラッグストアのバイトだけでは足りない。
父が死んで、母は二人の弟との生活で大変だから、親に援助を頼むこともできない。だったら、自分で稼ぐしかない。
「収入を増やしたい」
って、バイト先の店長に言ったら、
「それなら良い方法がある」
と、バイト終わりに連れていかれた場所はホテルだった。
なすがままにされていたら、帰りに封筒に入れたお金をくれた。
「備えあれば憂いなし」
私のお父さんの口癖だった。
いつもその言葉を聞いていたせいか、いつの間にか私の口癖にもなっていた。
私が何かをする時には事前に準備するようになったし、不安要素があれば軽率に近付かないようにするようにもなった。
だから、私がバイト先の店長にお金を貰ってホテルに行った時も証拠映像を隠し撮りしていた。店長は奥さんも娘もいる身だから、これで脅しても良かったのだけど、長く付き合った方が、脅して一回で大金を貰うより多く稼げると計算して判断した。
それが、最近急に店長が距離を置くようになった。誘いにも乗ってこない。それとなく理由を聞くと、どこからか店長の奥さんにバレたようだ。
そうなると私の大切な収入源が減ってしまう。
効率的に高収入が得られるもの。
店長の相手をしていた経験から、自ずと行うべきことは決定した。
やり方は簡単だった。闇サイトや裏掲示板にそれとなく自分の情報を流しておく。後は相手からの連絡待ち。
連絡が来れば、待ち合わせ場所を決めてホテルへと向かう。相手の隙をついてカメラを仕掛けて、証拠映像を記録しておくことは忘れてはいけない。報酬を出し渋る男がいないとは限らない。そんな時の為の保険だ。何事もなく終われば、隠しカメラの存在は隠したままにし、証拠映像は消去する。
中には変質的な趣味を持った客も来る。そんな時は出来る限り希望に添えるようにするが、サービスの難易度ごとに追加料金は取る。
この前は私の部屋を見たいという客が来た。もちろん、そのぐらいの要望なら応えることは可能だ。追加料金も貰えるし、隠しカメラも設置しやすい。私の部屋には物が少なく、何かを見られたり、盗られたりして困るものも無いし、次の日に朝からバイトがある時には私の部屋の鍵を預けて、私だけ先に出かけることもあった。
現役女子大生という肩書は思いの外、需要があった。こういう仕事をしているのは派手な女が多い中で、私のような地味な容姿は希少価値があるらしい。
卒業までこの状態を続けていければ、授業料の問題はクリアできる。
悩みが一つ無くなった一方で、最近私の周りでおかしな事が起きている。
最初は私宛の封筒が、一度開けた形跡があった。送り主が封をやり直したのかもしれないと思って気にしていなかった。しかし、他の封筒にも同じように一度開けて、もう一度封をしたような跡があった。
別の日には朝、ゴミ袋を収集所に出した後部屋に戻ったら、他のゴミを出し忘れていたことに気付いて、もう一度ゴミ捨て場に行ったら、さっき私が捨てたゴミ袋が、なぜかそこには無かった。他の人が出したゴミ袋はあったから、収集車が来たわけではなくて、私のゴミ袋だけがなくなっていた。
他にも、私はベランダには出ないのに、足跡が残っていたり。
これって、ストーカーってやつ?
心当たりが無いんだけど。
私の部屋の隣にも女の人が住んでいるんだから、そっちを狙えばいいのに。




