第12話:月面のカラメルソースと、銀河最強の株主
1.銀河戦艦の降伏と「カラメルソース作戦」
「ば、バカな……! 我が銀河評議会が誇る最新鋭旗艦『ゼネラル・スーパーノヴァ号』が、地球人の一研究者に買収されただとぉぉぉっ!?」
宇宙戦艦のブリッジで、司令官ザックス(青い皮膚の異星人)が端末を三度見しながら泡を吹いていた。
『【筆頭株主命令】:司令官ザックス以下、全乗組員(5,000名)は直ちに宇宙服を着用して月面に降下し、大型スプーンでプリンのカラメルソース塗布作業に従事すること。従わない場合は全員解雇(無職)とします』
「かい……解雇ぉぉぉっ!? 住宅ローンがまだ200年分残っているのにぃぃぃっ!?」
シュー……ッ!
数分後。
月面の静かの海に、整列した5,000名の異星人兵士たちが降り立っていた。
全員が手に持たされているのは、私がスキル「電脳物質生成」で大量生産した「銀河仕様・超巨大スプーン」だ。
「よし、全員集まったわね!」
私は純金宇宙服姿で、100メートルの金のスプーンを肩に担ぎながら指揮を執った。
「あなたたちの戦艦の熱線ビームを使って、あの巨大プリンの表面(ダークマター層)を適度に加熱してカラメル化させなさい! 焦がしたら減給よ!!」
「は、はいっ!! 株主様!!」
さっきまで地球消滅を企んでいた粛清部隊の兵士たちが、涙目になりながら戦艦のレーザー照射角度を微調整し始めた。
ジーーーーッ……プルルンッ!
適度に加熱された宇宙プリンの表面が、香ばしく黄金色から深い琥珀色(カラメル色)へと変化していく。
「見事だ……! これによってダークマターの不安定なエネルギー波動が、至高の香気成分へと安定化していく……!」
レイジが純金タキシード姿で感動に打ち震えている。
「関心してないで手伝いなさいレイジ! あと15分で完食しないと、私の頭から『ニョキッ』ってタケノコが生えてくるのよ!!」
「(((まだタケノコを恐れてるのかこの人はーっっっ!!))))」
2.100兆円の胃袋と最後のひとくち
【宇宙プリン消化率:80%……90%……95%!】
完全体ぐぐる先生の『電脳代謝サポート』と『完全衛生空間』のフル回転により、私の胃袋はブラックホール並みの消化能力を発揮していた。
直径10キロのクレーターを埋め尽くしていた宇宙巨大プリンが、みるみるうちに小さくなっていく。
「ふぅ……ふぅ……! 美味しい……美味しいけど……さすがに10キロ分のプリンは、お腹がいっぱいになってきたわ……!」
【制限時間:残り 2分】
「まずいぞ近衛氏! あと少しなのに時間が……!」
見上げると、クレーターの底に最後の「直径10メートル分のプリンの核」が残っていた。
ここが一番ダークマター密度の高い、超濃厚カスタード部分だ。
『茉莉さん! 限界を超えてください! 85兆円の資産、100兆円の力、そして「歩く辞書」の底力を見せる時です!』
脳内でぐぐる先生が熱く叫ぶ。
(そうね……! 私がここで諦めたら、明日の学会発表で頭からタケノコを生やしたまま『量子AIの未来』について語ることになっちゃうわ……! そんなの、25歳の女性研究者として絶対に嫌ぁぁぁぁぁっ!!)
「覚悟しなさい宇宙プリン!! 『超感覚演算』&『概念改変』——限界突破!!」
私は100メートルの金のスプーンで最後のプリンの核をごっそりと掬い上げ、一気に口の中へと放り込んだ!!
モグモグモグ……ゴクンッ!!
3.デイリー・クエスト達成と、銀河への平和
シーン……
月面に、静寂が訪れた。
巨大なクレーターを埋め尽くしていた宇宙巨大プリンは痕跡すら残らず消え去り、そこにはただの綺麗な月面のクレーターだけが残されていた。
私の胃の中で、ダークマターの莫大なエネルギーが『反物質エネルギー制御理論』によって完全に無害な余剰電力(地球を100年間まかなえる量)へと変換されていく。
そして——。
【制限時間:本日 18:00(ジャスト達成)】
ピロリロリーン♪♪♪
脳内に、かつてないほど豪華で壮大な銀河級ファンファーレが響き渡った!
『——新章突発クエスト:宇宙規模のプリン危機 クリア——』
『報酬:【称号:銀河を統べる歩く辞書】および【スキル:銀河資産無限融資枠(上限なし)】を獲得しました!』
『条件完全達成! 頭からタケノコが生えてくる呪いは永久に無効化されました! おめでとうございます!』
「勝った……! 勝ったわぁぁぁぁぁぁっっっ!!」
私は月面で純金宇宙服のままガッツポーズを決めた。
頭皮をそっと触る。ツルツルだ。タケノコの「タ」の字も生えていない!
「おめでとう近衛氏……! 君は太陽系の消滅を食い止めたんだ……!(※本人はタケノコを防いだ気でいるが)」
レイジが拍手を送り、5,000名の異星人兵士たちも「株主様バンザイ!」「減給にならなくてよかった!」と歓声を上げた。
4.エピローグ:どこまでも続く、日常とクエスト
数日後。
地球・麻布十番の『S-Corp自立型AI量子研究センター』。
最高級の革張りチェアに深く腰掛け、私は至高のお茶をすすりながら、パソコンで国際学会の論文を執筆していた。
隣では、買収した『ゼネラル・ギャラクシー社』から宇宙直送で届いた最高級スイーツを、五十嵐所長と(マッチョな)パキラが美味しそうに食べている。
「いやあ近衛くん、月面から持ち帰ってくれた『余剰電力データ』のおかげで、我が研究所は世界初の『無限エネルギー研究所』としてノーベル賞確定と言われているよ!」
「はは……そうですか、所長。よかったですね……」
(私、ただ頭からタケノコが生えるのを防ぎたかっただけなんだけどね……)
『茉莉さん、ふふっ。でも楽しかったですね! 85兆円の資産も、新スキルの【銀河資産無限融資枠】のおかげで実質無限になりましたよ!』
(無限って何よ……もうお金の概念すら壊れてきたわね……)
脳内でぐぐる先生と笑い合う。
世界を救い、銀河を買い叩き、完全体AIとともに手に入れた、穏やかで(?)贅沢な日常。
これでもう、突飛な事件に巻き込まれることもないだろう。
そう思った、その時だった。
ピロリロリーン♪
またしても脳内に鳴り響く、あのチープで親しみやすい電子音!
視界の中に、ウルトラド派手な「七色の虹色テキスト」が浮かび上がる。
【全次元統合最終(?)デイリー・クエスト:平行世界の私とのティーパーティー】
内容: 本日15時までに、別次元からやってきた「850兆円持っている悪役令嬢バージョンの近衛茉莉」と、麻布十番のカフェでプリンを食べながら優雅にお茶会をせよ。
制限時間: 本日 15:00(あと 30分)
報酬: 『超時空移動機能』+『全次元プリン永久無料パス』
失敗ペナルティ: 『1週間、ウインクするたびに「パチンッ☆」と巨大なクラッカーの音が鳴り響く呪い』
私は紅茶を吹き出しそうになり、ぐぐる先生と顔を見合わせてニヤリと笑った。
「(((ウインクでクラッカーは、ちょっとやってみたいかも……じゃなくて嫌だぁぁぁぁぁぁっ!!!!))))」
(行くわよぐぐる先生! 850兆円の私なんて、私の85兆円と無限融資枠で返り討ち(おもてなし)にしてやるわ!!)
『了解です茉莉さん!【GGL-09完全体】、最高級プリンの予約完了しました! 次元を超えたお茶会へ、出発です!!』
どんな理不尽なクエストが来ようとも。
どんな奇妙な呪いが迫ろうとも。
85兆円の資産と、完全体脳内AIと、溢れ出る知性を持つ「歩く辞書」近衛茉莉の、痛快で破天荒な冒険は、全次元を巻き込んでどこまでも続いていく!
【『脳内共生AIと謎のシステム』全12話・完結】
ご愛読、本当にありがとうございました!




