第11話:100機のロケットと、月面のプルプル物体
1.宇宙進出と爆買いの日常
「頭からタケノコが生えるなんて、絶対嫌ぁぁぁぁぁぁっ!!」
麻布十番の『S-Corp自立型AI量子研究センター』最上階で、私——近衛茉莉(25歳・85兆円の資産を持つ世界最大AI企業S-Corp筆頭株主)の悲鳴が轟いた。
「どうしたんだい近衛氏!?? 敵襲か!?」
隣で『株式会社プリン推進機構』の執行役員名札をつけたレイジが、光剣を構えて飛び起きた。
「敵襲どころじゃないわ! システムが今度は『月に巨大プリンがあるからロケット100機買って食い尽くせ』って言ってきたのよ!!」
「……は?」
レイジが素でフリーズする。
【対象:レイジ】
【思考回路:完全に停止中】
【感情分析:近衛氏の言っていることの1割も理解できない困惑100%】
心理眼スキルが冷ややかにレイジの混乱をカウントする。
(ぐぐる先生! 残り時間5時間よ! 世界中の民間宇宙ロケット企業に連絡しなさい!!)
『了解です茉莉さん!【GGL-09完全体】の超並列処理で、スペースX社、ブルーオリジン社、その他新興宇宙スタートアップの大型ロケットを全機買収&即時チャーター完了しました! 総額、約4兆5,000億円になります!』
(安いわね!! 85兆円の資産からすれば痛くも痒くもないわ!! 全機、即座に羽田と種子島に集結させなさい!)
「近衛氏、本気なのか……!? 4.5兆円でロケットを買い占めて月へ行くなんて……!」
「当たり前でしょ! 学会のプレゼン中に頭から『ニョキッ』ってタケノコが生えてくる人生なんて耐えられないわ!! あんたも行くのよレイジ! 純金宇宙服を生成してあげるから!」
「えっ、僕も!? 純金の宇宙服なんて重くて飛べな——うわあぁぁぁっ!?」
2.月面着陸と「宇宙プリン」の全貌
打上げからわずか3時間後。
完全体ぐぐる先生の「反物質エンジン改修」を施されたS-Corp専用超高速ロケットは、物理法則をあざ笑うかのようなスピードで月面(静かの海)へ着陸した。
ズシーン……!
月面に降り立った私(純金宇宙服仕様)と、レイジ(同じく純金仕様)、そして完全体ぐぐる先生のホログラム。
「見なさいレイジ……あれが……『宇宙巨大プリン』よ……!」
私たちが指さした先には、月面のクレーターをまるまる一つ埋め尽くす、直径10キロメートルを超える超巨大な黄金色のプルプル物体が鎮座していた。
月面の無重力(正確には6分の1重力)の中で、巨大なプリンがプルン……プルン……とスローモーションで揺れている。
「な……なんだあの巨大な構造体は……!? 惑星級のエネルギー反応を感じるぞ!?」
レイジが光剣を構え直す。
私は「鑑定眼(Lv.MAX)」を起動した。
シュン……!
(見えたわ……! あのプリンの正体……! あれは古代宇宙文明が遺した『超高密度エネルギー結晶体』よ! 宇宙の暗黒物質と、カスタードの成分(卵黄プロテイン・乳脂肪)が奇跡の確率で核融合を起こして生成された、銀河系最大のエネルギーノード(結節点)ね!)
『すごいです茉莉さん! 鑑定眼の精度が上がっています! あの巨大プリン、このまま放っておくとエネルギーが充填されすぎて、あと1時間で超新星爆発を起こして太陽系を消滅させます!!』
「(((太陽系が消滅する規模だったのォォォォォっ!?!?!?!))))」
私とぐぐる先生は宇宙空間(※マイク経由)で絶叫した。
単に頭からタケノコが生えるだけの問題じゃなかった! システムの真の狙いは「太陽系の危機回避」だったのだ!(※相変わらず伝え方が最悪だが!)
3.月面「大喰らい(デバッグ)」作戦
「どうするんだ近衛氏!? 直径10キロの暗黒カスタード結晶体なんて、僕の『概念切断』でも切ったそばから再生してしまうぞ!」
「切る必要はないわ」
私は純金宇宙服のヘルメット越しに、ニヤリと笑った。
「食べるのよ」
「え?」
「あのプリンのエネルギー構造は、有機的な『消化・分解』プロセスを通すことでしか、安全にエネルギーを放散できないの。つまり……人間(私)の胃袋と、新スキルで無害化分解して吸収するのが唯一の解決策よ!」
『はい! 茉莉さんにはさっき獲得した【スキル:完全衛生空間】と【絶対味覚】、そして完全体僕の『電脳代謝サポート』があります! どれだけ大食いしてもお腹を壊さず、すべて純粋なエネルギーとして発散できます!』
「よし……起動しなさい! 『超巨大チタン・スプーン(宇宙作業用仕様)』!!」
ドスゥゥゥゥン……!
月面に、全長100メートルの超巨大な金色のスプーンが実体化した。
「喰らい尽くしてやるわ!! 太陽系の平和と、私の頭皮のタケノコフリーな未来のために!!」
私は100メートルのスプーンを振り上げ、月面の宇宙巨大プリンに向かってダイブした!
ザクッ……プルルンッ!!
「う、美味い……!? 宇宙の暗黒物質が入っているはずなのに……ビターカラメルのコクと、濃厚なバニラビーンズの香りが絶妙にマッチしているわ!!」
【宇宙プリン消化率:0.1%……0.5%……1%!】
「な……本当に食べて消滅させている……!? 近衛氏、君の胃袋はどうなっているんだ!?」
レイジが呆然と見守る中、私は月面で100メートルのスプーンを振り回し、猛スピードで巨大プリンを平らげ始めた!
4.宇宙からの邪魔者
だが、その時——。
月面の漆黒の空から、巨大な銀色の宇宙戦艦が姿を現した!
ゴォォォォォォォン……ッ!!
「ハハハハハ! 見つけたぞ地球の虫ケラども!」
戦艦のスピーカーから、甲高い機械音が響き渡る。
現れたのは、「世界の調律者」のさらに上に位置する全銀河統括組織——『銀河評議会・粛清部隊』の旗艦だった!
【対象:銀河粛清部隊 司令官ザックス】
【目的:太陽系消滅エネルギー(宇宙プリン)の回収】
「その『古代暗黒プリン』は我が銀河評議会が兵器として回収する! 邪魔をする者は、月面ごと消去してくれるわ!」
戦艦の主砲(惑星破壊レーザー)が、プリンを食している私に向かって狙いを定めた!
「近衛氏、危険だ! 一旦引くんだ!」
レイジが叫ぶ。
だが、私は100メートルのスプーンに山盛りのプリンを乗せたまま、冷たい視線で宇宙戦艦を見上げた。
「……邪魔しないで」
「ぬ……なに?」
「今、いいところなのよ……! あと30分で完食しないと、私の頭から『ニョキッ』ってタケノコが生えてくるのよーーーーっっっ!!」
「タ……タケノコ……!? 何を言っているんだこの地球人は!?」
「ぐぐる先生! 85兆円の資金力を使って、あの銀河戦艦のメーカー(製造元)を今すぐ買収しなさい!!」
『了解です茉莉さん! 宇宙通信ハッキング完了! 銀河戦艦の製造元『ゼネラル・ギャラクシー社』の株式51%を取得! 茉莉さんが筆頭株主になりました!』
ピコーン!
司令官ザックスの端末に、緊急の社内通知が届いた。
『【重要】筆頭株主・近衛茉莉氏より命令:ただちに主砲を緊急停止し、全乗組員は月面のプリンのカラメルソース作成を手伝え』
「な……なにぃぃぃぃぃぃっ!!?? 我が軍の旗艦が……買収されただとぉぉぉっ!?」
銀河を揺るがすスケールの買収劇が、いま月面で繰り広げられる!




