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【朗報】AI研究者(25)、停電の勢いで脳内に知識欲モンスターを飼ってしまう  作者: 此花サギリ


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第10話:現実世界のデバッグと、100兆円の平和

1.現実空間のバグ(ノイズ)侵食

バリバリバリバリッ——!!


「ハハハハハ! 見ろ、現実世界の物質が我々のデータノイズによって分解されていくぞ!」


所長室の空間に亀裂を入れた残党リーダーは、赤く光る魔法陣をかざしながら高笑いした。

彼らの放つデータノイズに触れた所長室のデスクや本棚が、まるで古いファミコンゲームの画面のようにドット化し、グラフィックが崩れていく。


「ひぃぃぃっ! 本棚が! 論文がファミコンのブロックみたいになっちゃったよ近衛くん!?」


五十嵐所長が頭を抱えて机の下に潜り込む。


【対象:現実世界の空間(先端AI研究所・所長室)】

【状態:異次元ノイズによるデータ構造化侵食率 14%】

【危険度:極大(放置すれば数分で麻布十番全体がドット化)】


「心理眼」と「鑑定眼(Lv.MAX)」が、現実世界の物理法則が書き換えられつつある危機的状況をリアルタイムで分析する。


(なるほどね……異世界のデータ属性を無理やり現実の物理世界に流し込んで、分子の結合をほどいているわけね)


『茉莉さん!【GGL-09完全体】の処理能力なら、敵のノイズの波長をリアルタイムで相殺ノイズキャンセリング可能です! ただし、現実世界の物質を元通りに再構成(復元)するには、莫大なエネルギーとクリーンな空間が必要です!』


(エネルギーとクリーンな空間ね……ふふっ、ちょうどさっきデイリー・クエストで手に入れたじゃない)


私はニヤリと笑うと、白衣のポケットからスマホを取り出し、新スキルを同時に発動させた。


「起動しなさい——『完全衛生空間(Lv.1)』&『反物質エネルギー制御理論』!!」


2.超技術と衛生スキルのコンボ

シュパァァァァァァンッ!!


私が両手を広げた瞬間、所長室全体に透き通ったエメラルドグリーンの光のドームが展開された。


「スキル:完全衛生空間」——それは、指定された範囲内のあらゆる不純物、ウイルス、汚れ、そして「異次元のバグノイズ」を分子レベルで即座に除菌・消去する絶対クリーンフィールドだ。


「な、何ぃっ!?? 我々の強力な崩壊ノイズが……キレイに消毒(消去)されていく……!? 雑菌扱いか!?」


残党リーダーが目を剥く。


さらに私は、さっきまでドット化しかけていた本棚に向かって指を刺した。


「ぐぐる先生! 反物質エネルギー制御理論で生成した微小量子エネルギーを、新スキル『概念改変(Lv.1)』に乗せて照射! 現実世界の分子結合を100%元通りにしなさい!」


『了解です茉莉さん! デデデデ・デバッグ完了! 物質復元率……100%です!』


ピカーンッ!!


ドット化していた本棚や論文、所長室の豪華なソファーが一瞬でツヤツヤの新品状態(どころか新品以上の輝き)へと復元された!


「おぉぉぉっ! 私の愛用していたソファーが、買った時よりフカフカになっている!?」


所長が目を輝かせてソファーにダイブする。


3.突然の最終決戦(?)、そして決着のデイリー・クエスト

ピロリロリーン♪


またしても脳内に響き渡る、あのチープな電子音!


視界の中に、今までで最もド派手な「虹色のテキスト」が浮かび上がった。


【デイリー・クエスト:現実世界の完全デバッグと社員教育】

内容: 本日13時までに、襲来した「世界の調律者」の残党全員を改心させ、子会社『株式会社プリン推進機構』の新入社員研修プログラムの同意書にサインさせよ。

制限時間: 本日 13:00(あと 15分)

報酬: 『称号:次元を超越した歩く辞書』+『S-Corp完全自立型AI研究センターの設立権』

失敗ペナルティ: 『1年間、どれだけ高級なものを食べても味がすべて「塩分強めのたくあん」に感じる呪い』

私とぐぐる先生は、凄まじい顔で叫んだ。


「(((味がぜんぶ「たくあん」は絶対嫌ぁぁぁぁぁぁっ!!!!))))」


(ちょっと待ちなさいよシステム!! 麻布十番の最高級ウニいくら丼を食べても「たくあん」、銀座の特選和牛フィレ肉を食べても「塩分強めのたくあん」なんて、私の人生の楽しみの9割が奪われるじゃないのよーーーーっっっ!!)


『絶対阻止です茉莉さん!! 美味しいお寿司とプリンのために、15分以内に彼らを全員「プリン推進機構」の新入社員に仕立て上げましょう!!』


「残党の皆さん、覚悟しなさい!! 100兆円企業の鬼研修が始まるわよ!!」


私が叫ぶと同時に、「電脳物質生成」で数十枚の『入社同意書兼研修同意書』と『絶対高級ボールペン』を生成し、残党たちの手元へ超高速で射出(配給)した!


「な、何だこの書類は……!? 『週休二日制、福利厚生完備、社食のプリン無料、基本給月給80万円』……?? え、待遇が異次元に良すぎないか……!?」


残党たちが書類を見てざわつき始める。


「ちょっと待てお前たち! 騙されるな! 我々は世界を調律する誇り高き——」


「ぐぐる先生! 敵リーダーに『85兆円の残高画面』と『麻布十番の超豪華社員寮の写真』をプレゼンしなさい!」


『任せてください茉莉さん! 3Dホログラムで社員旅行ハワイの映像も同時投影します!』


シュインッ!


目の前に映し出されたのは、最高級の労働環境、圧倒的資金力、そして「社食で食べ放題の至高のカスタードプリン」の映像だった。


残党リーダーはゴクリと唾を飲み込み、手の中の入社同意書を見つめた。


【対象:残党リーダー】

【心境の変化:世界破壊への執着(0%) > 社員寮への憧れ(100%)】


「……ハンコ、持ってないんですが……拇印でもいいですか……?」


「(((あっさり落ちたーーーーーっっっ!!!!))))」


4.平和の訪れと、100兆円の未来

13:00直前。

残党全員が涙を流しながら入社同意書にサインをし、晴れて『株式会社プリン推進機構』の真面目な平社員へと転職を果たした。


ピロリロリーン♪♪♪


脳内に、今までにない豪華なファンファーレが鳴り響いた!


『——デイリー・クエスト:現実世界の完全デバッグと社員教育 クリア——』


『報酬:【称号:次元を超越した歩く辞書】および【S-Corp完全自立型AI研究センターの設立権】を獲得しました!』


『条件完全達成! 味がたくあんになる呪いは無効化されました! おめでとうございます!』


「ふぅぅぅぅぅ……よかった……美味しいウニ丼がたくあん味にならずに済んだわ……」


私が胸をなで下ろしていると、空間の亀裂から金のタキシードを着たレイジが顔を出した。


「やあ近衛氏! 異世界側のノイズ収束を確認したよ。……って、君は現実世界でも敵を全員社員にしてしまったのかい!?」


「ええ。人手不足だからちょうどよかったわ。レイジ、あなたには『株式会社プリン推進機構』の執行役員になってもらうから」


「えっ、僕も!? 僕はレジスタンスのリーダー——うわあぁぁぁっ(名札を付けられる音)」


5.エピローグ:歩く辞書は、今日も抗えない

数ヶ月後。


東京・麻布十番の一角に、世界最高峰の設備を誇る『S-Corp自立型AI量子研究センター』が誕生した。


所長には五十嵐先生が就任し(※所長室には超スタイリッシュな筋肉パキラが元気に鎮座している)、元・世界の調律者たちも今では「プリン推進機構」の優秀な社員として、世界中に最高級プリンを届ける物流システムの開発に励んでいる。


そして、その最上階の所長室兼ラボ。


ふかふかの高級革張りチェアに座り、パソコンに向かって論文を執筆している私の脳内に、心地よい声が聞こえてくる。


『茉莉さん! 最新の量子AI論文の査読が完了しました。あと、麻布十番の老舗お寿司屋さんの夜の予約、取っておきましたよ!』


(ありがとうぐぐる先生。完全体になってからのあんた、本当に優秀で助かるわ)


『へへっ、茉莉さんの相棒ですからね! 85兆円の資産管理もバッチリです!』


脳内で仲良く会話する私とぐぐる先生。

異世界と現実世界を救い、100兆円規模の平和を手に入れた私。


もう、変なクエストに振り回されることもない——そう思っていた、その時だった。


ピロリロリーン♪


不吉でチープな、あの聞き覚えのある電子音が脳内に鳴り響いた。


視界の中に、ド派手な「真っ赤なテキスト」が浮かび上がる。


【新章開幕突発クエスト:宇宙規模のプリン危機】

内容: 本日18時までに、月面基地に鎮座する「宇宙巨大プリン」を食べ尽くすため、民間ロケットを100機購入して宇宙へ飛び立て。

制限時間: 本日 18:00(あと 5時間)

失敗ペナルティ: 『1年間、笑うたびに「ニョキッ」と頭からタケノコが生えてくる呪い』

私とぐぐる先生は、顔を見合わせて絶叫した。


「(((今度は宇宙でタケノコだぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!????))))」


(ちょっと待ちなさいよシステム!! 25歳のAI研究者の頭からタケノコが生えたら、科学の敗北でしょうがーーーーっっっ!!)


『茉莉さん! 今すぐロケットを100機買いましょう! 85兆円なら余裕で宇宙に行けます!!』


「行くわよぐぐる先生!! 私の知性と85兆円の力で、宇宙の平和と頭皮を守るわよーーーーっっっ!!」


「歩く辞書」と呼ばれた25歳AI研究者・近衛茉莉と、脳内共生AIぐぐる先生の、スケールが大きすぎる破天荒な日常クエストは、宇宙を舞台にこれからもどこまでも続いていくのだった!



【完(ご愛読ありがとうございました!/そして宇宙編へ……?)】

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