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メイさんは自己紹介をする

 街に高く聳えるダンジョンがまだ高く見える。

 長く続く田園風景の中を、のんびりと歩く一行。

 グリフォンのエロクーが二人を乗せて一気に駆ける事も可能ではあるが、別に急ぐ必要もなく、ただ歩く。

 恐る恐るというように、ワータイガーのウトが話しかけてきた。


「メイ……さん? で良いのかな、呼び方って」

「んー? なんでもいいよ。ムカついたら殴るけど」

「……洒落にならないからやめてください……。まあ、メイさんで。

 それで、メイさんには色々聞きたい事があるんだけどさ、良いか?」

「答えられる事なら。でも、ここから10日以上のんびり歩くんでしょ?

 道中で私もこれから格闘家として色々学びたいし、私も色々2人に聞きたい事あったりするから」


 エロクーが口を挟んでくる。


「ワタシも何か学べるだろうかね?」

「呼吸や自己強化ってところなら、多分役立つところはあるはず、だ。……多分な」

「ふぅん、楽しみにしておく。結局ワタシも、15階のフロアボスをやっていたとは言え、結局ヒト共の成長にはその内突破されるだけの哀れな存在だったからな。

 そこを抜けられるなら大歓迎だ」

「……俺も、お前が高くに飛ぶからどうしようもなかっただけだからな」


*


 人の事を聞く前に、まず俺の事、か。そりゃそうだな。

 ……とは言っても、俺は別に……ただのワータイガーだよ。

 港町の何の変哲もない漁師の家で生まれて、魚ばっか食って大きくなって、血の気がより強いもんだから道場にぶち込まれて。

 その道場で俺が一番優れていた訳でもねえが、ダンジョンなるもんを知って居ても立ってもいられなくなって道場も飛び出して、そして一番初心者向けのダンジョンのある街に来て。

 出来れば海を渡っての方に行きたかったが、そんな金も無かったしな。

 そこで基本はパーティを組んで挑むのが定石だとも聞いたが、たった一人で踏破した奴も稀に居るって聞いて、それに憧れてしまった俺は、日銭を稼ぎながらコツコツ挑み続けていた訳だ。

 まあ……踏破する前に出る事になっちまったが。でも1年もしない内に踏破するだろうって思われてたなら、そういう未練もさっぱり消えたからな。

 それにその次にパーティが挑んで散っていく、本番のダンジョンにはそのメイさんやらユーリさんやらが居るって知れたからな、

 あそこで真っ直ぐ頑張り続けるよりは、メイさんに着いて行く方がよっぽど強くなれそうだなって。

 ……才能ある方って言われてもなあ。メイさんやらを見てしまったらなあ。

 俺がそこまで成るのに、どれだけの時間が必要なのやら。




 うーん。

 私が強いのは、先祖返りなだけだよ。私自身も努力したけれど、半年鍛えられただけでいきなりフロアボスとして務めるだなんて事が出来るのは、早々居ないよね。

 ……んー、私も話に聞いただけなんだけど。

 何千年も大昔の話って聞いた事あるでしょ? 一番最初の災厄の時代で、何もかもが移ろいゆく時代。

 気付いたら新しい人族だったり、グリフォンみたいなその人族と同じくらいの知性を持つ魔獣が生まれてくるだとか。人の中でも、変な性質を持った人が生まれてきたり。

 限られた種族しか他の種族と交わっても子供を作れなかったのに、いつの間にかそんな制限がなくなっていたり。

 今は交わったら基本的に魂の質(レベル)の高い方の子供が生まれてくるけれど、両方の性質を併せ持った新しい種族がかなりの確率で生まれてきたり。

 そんな、世界の法則みたいなものすらも書き換わりまくっていた時代の事。

 その時に生まれた、その災厄の時代を終わらせた人達の中のミノタウロスの血が、時々濃く出てくるんだって。

 体格は平均かそれ以下だけど、パワーは一段と強くて、だからこそ身軽でもあって。それから敬虔でもないどころか、人を殺す事をなんの躊躇いもなく出来るのに、僧侶の才能も持っている。

 もう何千年も前のことだから、そういう特性を持った血は他にも色々あるみたいだけれど、私はその血が色濃く出たんだって。




 ワタシ?

 メイの務めるダンジョンの近くで生まれた、ちょっとズル賢いだけのグリフォンだよ。

 西のダンジョンに挑みにくるパーティを遠目で眺めている内に魔法も使えるようになって、そして徒党を組んで西のダンジョンに挑みにくるはずだったパーティを食い荒らしたところでユーリさんに目を付けられた。

 別に途中で魔獣に食い殺されるのは良いらしいのだけれど、ワタシみたいにワイバーンやらグレートウルフだとかベアボーパルバニーだとか、そういう他の魔獣も率いて有無を言わさず皆殺しにしてしまうのは想像していなかったみたいでね。

 ……いや、西のダンジョンの人達とは戦った事はないよ。

 …………あんまり良い思い出じゃないんだけど。

 ……ユーリさんがある夜に、ワタシの元に唐突に来たんだよ。そのパーティの武器やらを戦利品として頂いて、キレイだなあって月明かりに当てて楽しんでいたら、いつの間にか目の前に居てね。グレートウルフすら気付かなかったし、その癖して存在感は凄くて、ワタシが何しようとも勝てないってすぐに悟ったし。

 だから……そうだね、紹介というよりは命令だったね。

 でもそこからは何だかんだ楽しかったね。お金の概念も知って色々贅沢も出来たし。言葉も覚えたし。

 それより何より、空への攻撃手段を持たないパーティをネチネチ攻め立てるのなんて本当に爽快でね、最近はどいつもこいつもワタシへの対策を立ててきて初見でも殺される事の方が多くなってきていたんだけど。

 だからワタシの事を全く知らないウトが来たのは久々に楽しかったよ。

 ……別にそんな顔しなくたって良いじゃないか。どうせウトも次かその次くらいにはワタシを地に堕として復讐を果たせているだろうなって、ワタシ自身思っていたんだからさ。

 ……メイが来ていたら?

 ……ああ、もし、西のダンジョンに挑む為にメイが来ていたら?

 そりゃあもちろん、襲わないよ。

 ワタシがそんな事をしたのはね、ワタシに従えば誰も死なずに、美味い汁だけ啜れるって確信を全員にさせられたからだよ。その程度のパーティだったしね。

 メイはね、総勢で襲い掛かれば殺せはするだろうけどね、確実に10体以上は持っていくだろうし、そうしたら嘘を吐いたワタシも啄まれて骨まで食い千切られてオワリさ。

 ウトだったら? そりゃあ、食い殺してたね。いや……ワタシは見逃していたかな。だって、格闘家でキラキラした武器とか何も持ってないじゃないか。

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