魔王国の王子様
馬車に揺られた先の離宮は魔王国からの賓客を迎えるに相応しい品格で、落ち着いた雰囲気の内装だ。魔王子殿下の私室でお茶を頂き、本日の夜会についてゆっくり語らう。少々他の令嬢に睨まれてしまったが、補佐官殿が上手く収めてくださったことへの感謝から始めた。女性の扱いに長けている方だ。だからこそ遊んでも大きな揉め事が発生していないのだろう。その美貌で上手く誑かしておられるようだ。
「でも名前で呼んではくれない。俺も君のことを名前で呼びたいな。」
馴れ馴れしい男だ。ちらりと魔王子殿下の様子を窺えば、呆れたように溜め息を吐かれていた。よくあることなのだろうか。それくらいは許してやろう。名前で呼び合う親しさを得られたとなれば、王太子殿下もきっと安心される。俺のこともフラウと呼んでほしいと頼み、補佐官のミールウス様とは名前で呼び合うこととなった。
「俺のこともファルクスと呼んでくれるか。」
先程までミールウス様の態度に呆れていたのに自分も同じことを要求した。ファルクス殿下と人前でも呼んで見せよう。姫様より一歩も二歩も先にファルクス殿下と親しくなった。これでさらに王太子殿下を安心させられる。俺の任務も順調だ。そう良い気分になってどうして俺だけ離宮に連れ込んだのか尋ねる。女装している点への興味だろうか。探る姿勢も不快には思われなかったようで、俺についての質問が続いた。任務のことを隠しては答え難い。いっそその話もしてしまおうか。彼らなら伝えても他の令嬢や姫様に手を出さないだろう。先に約束してもらっても良い。
「無理矢理連れ帰っても意味はないな。むしろ誘拐した、生贄を求めた、と魔王国や魔人への印象が悪くなるだけだ。」
「俺も今は興味ないね。フラウちゃんに夢中だから。」
ミールウス様の戯言はさておき、ファルクス殿下も令嬢達や姫様を求めていない。既にばれているなら俺もこれ以上隠す必要もない。一度騎士団に帰還し、団長に報告すると頭の片隅に留めておく。
ともかく今の俺の立場や任務についても一部伝えられる。任務として女装させられているだけ、という部分が重要だ。俺は可愛い女の子を見る趣味はあっても自分がそうなる趣味はない。
「可愛くなろうとはしてくれたんだよね。だからファルクスもお持ち帰りに賛成してくれた。」
「面白い人間がいると思っただけだ。」
両親の選択と侍女の腕のおかげで、他の令嬢にも見劣りしない自信はある。日々の手入れだって行った。掛けた手間は他の令嬢に並ぶだろう。期間は及ばないが、その分専門家の話も聞いた。動きの稽古だって受けた。声だって今は変声用魔道具で女性のものに変えている。よほど密着するか、知り合いか、疑いの目を持って見ていなければ気付けないはずだった。やはりダンスの密着が問題か。
「させられてるって言うわりに褒められると喜ぶんだね。」
任務を滞りなく進められるよう努力した。その結果を褒められている。俺自身が可愛いと褒められて喜んでいるわけではない。こう伝えている間にも殿下は俺を凝視されている。不快な視線ではないが不思議だ。
「なら魔王国には妻として一緒に帰ってくれるか。」
それとこれとは話が別だ。話す時間ならこの一ヶ月でも十分確保できる。姫様を退治するためにも親密さを見せつけるのなら、個人的な交流の時間は増やせる。むしろ表面上多くの時間を独占することは姫様からの申し出を防ぐために必要だろう。俺に令嬢として生きるつもりはない。ファルクス殿下としても令嬢を連れ帰ることには不都合があるだろう。
「特に問題ないな。他の女性を妻にしなければ良いだけだ。男だと知った上で令嬢として迎え入れると伝えれば、そちらの懸念も解消されるだろうか。」
最終的には俺の意思に委ねてくださる。それはありがたいのだが、第一に俺が嫁になるつもりなどないという点は無視された。家のことを口実に断ろうにも、兄と弟がいるため問題ない。むしろ伯爵家としての実家のことを考えるなら、今まで全く関わりのなかった魔王国の王子と繋がりを得ることはプラスに働くだろう。騎士団の任務だって一人くらい抜けても問題ない。ただの騎士一人が抜けた程度でどうにかなるようならこの国に留まること自体が危険だ。むしろ自分の安全のために迷わずついて行ったかもしれない。それとも家族のために留まっただろうか。
「この国の王は賢明な判断のできる人だ。どこかの国のように聖女と祀り上げ、追い出すように魔王国に送り込むようなことをしない。」
酷い言われようだ。追い出すようになのかは知らないが、ヴェルート王国の西に位置するクリスタロ神国は聖女と勇者を育てている。聖女と聖女に選ばれた勇者が魔王国に魔王討伐のため旅立つ。そんな話は聞いたことがあるが、実態は分からない。もし本当に送り込まれたのだとしたら、その送り込まれた聖女はどうなったのだろう。聖女は魔王を倒す者。魔王国で討伐か処刑をされたのだろうか。可哀想だがそうなってもおかしくない立場だ。
「そうなる場合も、魔王国民になる場合もある。俺の母も元聖女だ。結婚して五百年になるのに、未だに仲睦まじい。」
聖女が魔王の妻。クリスタロ神国に伝わればとんでもないことになりそうだ。その子どもであるファルクス殿下は魔王国の第一王子。つまり王位継承権第一位だ。産める者を妻に迎えなくて良いのだろうか。愛人を囲うつもりならそれを口実に断ろう。
「魔王は魔王として生まれる。魔王の子が継ぐわけではないから安心して良い。愛人を抱えるつもりもないな。」
本気でファルクス殿下は俺を魔王国に誘っておられるのか、魔王国について教えてくださる。様々な種族の生きる魔王国は、食事や衣服の種類も多い。魔人はおおよそ人間と同じ物を食べ、虎や獅子の獣人は肉を好む。その他服装も鳥人など特徴的な部位を持つ者に合わせた作りになっているなど、色々と教えてくれた。もうそろそろ寝る時間だと止められても、話す内容には興味を持ってしまった。一度素直に風呂を借り、その間に話す時間を作るための策を練る。令嬢の振りをしているが男性であることも伝わっており、侍女が驚くこともない。分かった上で全身の肌の手入れもしてくれた。流石は賓客の泊まる離宮で世話を任せられる侍女だ。心地良い手際をしている。
うとうとしている間に手入れは終わり、可愛い寝間着も着せられた。侍女は退室し、一人部屋に取り残される。鏡に映る自分は着たことのない可愛いネグリジェ姿だ。実家に急ぎ連絡を取り、持ってきてもらった服なのだが、いつの間に用意したのだろう。優しい白に、フリルの桃色。令嬢の寝間着など知らないが、完全に女の子仕様の服装であることは分かる。入浴後にまたファルクス殿下と話の続きをしようと思っていたのに、この格好では難しい。それともネグリジェで寝室に入れてもらったと姫様に自慢しようか。お母様からは甘え方も仕込まれているが、それを披露するかどうかもまだ決められていない。迷いつつ、彼の寝所を訪ねた。
「よく来た。大胆で愛らしい服装だな。」
どこまで本気の言葉なのだろう。服自体は愛らしいと言える物だ。露出度は決して高くなく、立っていれば膝まで隠れている。不躾ではないがやはり観察はされており、落ち着かない。快く招き入れてはくださるが、彼はこの時間をどう扱うつもりなのだろう。姫様に伝えて良いのか、婚前の令嬢との関係として不適切として隠すのか。
「令嬢ということになっていたな。俺が連れ帰るなら何ら問題ないだろう。強引に連れ込まれたとでも言うと良い。」
彼は魔人だ。ヴェルート王国の礼儀作法について学んでいるとはいえ、全てを把握しているわけではない。感覚の違いもあるだろう。彼の感覚では自分の妻にするなら婚前に連れ込んでも問題ない。ヴェルート王国では婚約者であっても不適切扱いになる。そしてフラウはヴェルート王国の伯爵令嬢となっているため、断らなかったとして非難を浴びる。そういう娘のいる家と思われれば俺達の妻になってくれる女性も見つかりにくくなる危険はあるか。姉妹がいないため、そこまで致命的ではないとも言える。任務のためであると公表できるのなら、何の傷も残らない。
「他国の王子の求めを拒めないだけで非難されるのか。不思議なものだな。」
離宮に泊まっている時点でヒソヒソと言われるだろう。寝室に入っていなければそれでもまだ取り返しはつく。そのことを伝えると、彼はなるほどと呟き、俺の手を引いた。向かう先は寝台だ。少し足取りを遅くすることで軽い断りの意思を見せる。しかし彼は俺の手を強く引き、寝台に半ば放り投げるように押し倒した。
一体何を考えているのか。そもそも話を聞いていたのか。こんなことをすれば取り返しがつかなくなるという話を今したばかりだ。
「既に夫婦になったと言ってしまえば良い。印を付けて構わないか?」
構うに決まっている。印とは何のことだ。ひとまず押し倒された姿勢から起き上がることを許され、寝台に腰掛ける。そうすると手を取られ、手首に口付けられた。しっとりと、ゆっくりと。令嬢のふりをして魔王子を落とす任務のため、口付けまでなら覚悟してきた。手首に唇を付けられる程度なら耐えられる。僅かにぬるま湯のような温かさを感じるが、他の人の魔力を受け入れた時のような不快感はない。何の印なのだろう。
「俺の妻だという印だ。これで魔人や鳥人、獣人なども手を出さないだろう。」
俺は何も了承していないのに、何を勝手なことをしているのか。人間には分からないのなら、問題ないと言えばないのかもしれない。俺が気に食わないだけだ。勝手なことを平然とするこの殿下には少々苦言を呈しても許される。夫婦である印をすることで婚前に同衾しないという決まりは守っているとも言えるが、どことなく腑に落ちない。
俺の不満をどう受けて止めているのか、殿下は何故か楽しそうだ。何も堪えた様子も反省の様子もない。一ヶ月の辛抱だ。魔王子殿下の気を惹き、姫様が魔王国に行くと言い始めないようにする。それが俺の任務だ。ひとまずここはこの印も妃になるという話も前向きに受け入れるふりをする。そうと決めれば聞くべきことは魔王国での生活について。場所も変える必要はない。魔王国という未知の場所で生活するにあたって一番の問題は食事だろう。ファルクス殿下はヴェルート王国で振る舞われる食事を取っておられるそうだが、魔王国でも同じように食事を取れるのだろうか。
「人間同様食事を必要とする種族も多い。魔人も取る者が多いな。」
様々な種族に対応するため、様々な食材や料理があり、個人の好みや気分によって選べる。魔人は人間と食べられる物が似ているが、魔力の補充ができれば食事は必須でない。虎や獅子などの獣人は生肉でも問題なく食べられ、それを好む者も表面だけ炙った物を好む者もいる。中身まで軽く火を通した物や燻製などもあり、俺が食べるなら燻製がお勧め。野菜の調理方法も豊富で、ゼリーにもするそうだ。木の実類のケーキも種類が豊富で、木の実の種類によって使う小麦や砂糖の種類まで合わせるという拘りがある。当然果実類でも同じだ。聞いているだけでお腹が空いてきた。
「魔王国に行けば順番に食べられる。興味があるなら眠くなるまで話してやろう。」
聞きたいと言えば、体は休めようと布団も被せられる。今は任務中だ。話に夢中のふりをして、気にした素振りは見せない。殿下もそれを信じてなのか、俺の様子を気にしていないのか、話の続きをしてくださる。
魔王国の一部地域にしか自生にしない植物を利用した料理も多いそうだ。魔人は魔力量が豊富だが、食事以外でも吸収するため、食事は基本的に趣味嗜好の部類。そのためか人間と似たような料理も多いらしい。魔王国に行く羽目になっても一安心だ。野菜ケーキも上手く作られているのか、子どもにも人気のメニューだとか。俺も食べてみたい。
そんな話をしていたからか、甘いトマトのショートケーキを食べている夢を見た。新鮮で瑞々しいトマトから砂糖のように甘い汁が零れていたような気がする。
「幸せそうな寝顔だったな。来てくれたら馳走する。楽しみにしていてくれ。」
よだれも拭われてしまった。額への口付けも子どもに対するもののようだ。俺はもう大人なのにという反論は控えよう。そこで妃という話をされても困る。美味しい話を聞かせてくれたという点で聞かなかったふりをしてあげよう。二百年も生きる彼からすれば俺など子どもなのだろうか。そうだとするなら妻として迎え入れるつもりというのも不思議な話だ。演技とはいえ彼も少々警戒したほうが良い相手かもしれない。
着替えさせてもらい、フィブラ家まで送ってもらう。お父様とお母様に挨拶し、少しだけ報告し、寝不足のまま騎士団へ出勤だ。女装していないのにフラウちゃんと揶揄されながら団長の部屋に向かう。任務の報告と相談だ。魔王子殿下と補佐官様に俺が男と気付かれたこと、姫様の態度は王太子殿下のほうがよく分かっているだろうが念の為姫様から言われたことも報告する。それから魔王子殿下から俺を妻として連れ帰るつもりであると伝えられたことを相談する。印を付けられたことはまだ内緒だ。それなら嫁げと言われても困る。それなのに団長の反応は印の話をうっかりしてしまったかと思うようなものだった。
「行きたいなら行くと良い。任務としては魔王子の気を惹き、姫様や令嬢方に目が向かないようにすることだけだ。その後のことは自分で決めると良い。家族には相談しなくて良いのか。」
魔王国に行くつもりはない。相談する内容はない。念の為誘われているという話は伝えてみるか。いつも好きにすると良いと言ってくれているため、これが本気の迷いで相談だったとしても、両親からの回答は変わらないだろう。
次の仕事はミールウス様とのお出掛けになるため、今日は軽く体を動かし、それから両親に今後の話をしよう。そう帰れば何故か屋敷が騒がしい。何かあったのだろうか。
「フラール!これはどういうことだ?」
父上の手にある紙を受け取る。ファルクス殿下からの手紙だ。自分の妻として連れ帰りたい旨が書かれており、俺ではなく父上に向けての手紙であるため、表現もとても丁寧にされている。昨夜の出来事についても言及されているが、非常に美化と脚色がされている。既に届いているということは、別れてからすぐにこの手紙を書いたのだろう。昨夜の話題に続いて、俺に不自由させないこと、大切にすること、自分が守ること、など父上に対する訴えも続いた。婚姻を前提とした関係、その第一段階としてのデートのお誘いもある。
「お前が娘なら良いんじゃないかと言ったところだが。何故魔王子殿下からお前への求婚の手紙が届いている?」
彼が俺を気に入ったからとしか答えられない。知った上で求婚しているはずなのだが、その理由は俺にも分からない。令嬢としての戦い方を知らない者を妃に迎えようなど一体何を考えているのか。
迷いつつもファルクス殿下とのデートに応じた。ばれているのなら女装せずに案内することもできる。むしろフラウとしてデートし、王都の人々にフラールが女装していたと気付かれてはもう騎士として巡回任務に当たれない。しかし姫様にファルクス殿下との仲が進展していることを分からせるなら、フラウとしてデートしたい。そうなると問題は服装だ。俺の令嬢仕様の服などそう多くない。まずは母上に相談しよう。父上にもそう伝え、母上の私室を訪ねる。ファルクス殿下からデートのお誘いを受けたこと、王都の市民達に騎士フラールだと気付かれない服装にしたいことなど要望を伝えた。
「任せなさい。夜会ドレスの時についでに色々頼んでいたのよ。ネグリジェだけじゃなくね。」
母上は侍女に指示して俺の城下町デートに着ていける服を選び始める。俺の知らない俺のスカートが何着も並べられ、あーだこーだ言われつつ選択肢が絞られていく。どれも男の特徴が出ないようにか、丈は長く、喉元まで覆われる物だ。夜会の時は白と桃色のドレスだった。今回は白のブラウスに淡い黄色のスカートにするようだ。スカートの裾には白と桃色の花の模様が描かれ、大変愛らしい。首元まで覆い、胸元の大きなフリルで胸の無さを誤魔化している。これを俺が着るのか。
小物も選ばれていく。フリルの多い白いブラウスの上に羽織るショールは淡い緑の物で、白く小さな鞄には桜色の花飾りが着いていた。腰にはリボンを巻き、飾りの白い花が女性らしさを演出する。手袋も白く、清楚な令嬢のようだ。ヒールは手加減してくれたのか、太く低い物になっている。要点を伝えられながら着せられたそれらを着た自分は、剣など握ったことのなさそうなご令嬢だ。これなら騎士フラールと気付かれることはないだろう。
十分気合を入れ、到着したファルクス殿下を出迎える。こうなると分かっていたかのような準備の良さだ。俺が騎士団に報告に戻ることも、戻り次第支度をする時間も、全て考慮されているかのようだった。そこは気になるが、今は口を噤もう。その代わりお母様に着飾ってもらったフラウに対する感想を求めた。
「よく似合っているよ。花の妖精のようだ。その下に騎士の筋肉質な体があるとは意外だな。」
ダンスの際に密着した。昨夜は同じ寝台に眠った。そこで気付いたのだろう。これでも騎士としての務めを十分果たせるよう鍛えている。ダンスや薄着で分かる程度には筋肉が付いているのだ。褒め言葉に気を良くしながら、城下の活気を案内する。平民も利用する香料の店や衣類の店、八百屋、肉屋などどこも活気に満ちている。宿はまだ空いている時間だ。
「賑わっているな。良い国だ。」
俺が治めているわけではないが、どことなく誇らしい。今はまだ魔王国ともこうした交流しかないが、いずれ国境が開かれればもっと色んな楽しみが増えるだろう。ファルクス殿下やミールウス様の受け入れられ方を思えば、少しずつ交流を深めることは現実的に思える。
「君は一足先に味わうことも可能だ。」
前向きに検討すると誤魔化し、案内を続ける。いつもは騎士として歩く道も、人々に知られていない令嬢の立場では違って見える。誰にも助けを求められず、ただ微笑ましい目で見られるだけ。屋台で買い物した時などお嬢さんと言っておまけを頂いた。おまけ自体はフラールの時も頂くが、話しかけられ方が少々異なる。
「人気者だな。やはり皆可愛らしい人は好きだ。魔人も人間も変わらない。」
格好良い人だって好きだ。今も美丈夫と美少女で絵になると声を掛けられた。腰に回されるファルクス殿下の手も受け入れる。これだけやれば姫様に勝ち目はないと言っても説得力があるだろう。他人を蹴落とす趣味はないが、この時間は悪くない。時折可愛いとも褒めてくださる。やはり彼は褒め上手なのだろう。俺の格好良い部分も彼は認めてくれている。美味しい昼食の店も案内し、お茶も共にし、今日の逢瀬は終了だ。その予定だったのに、また離宮に泊まるように求められた。逢瀬の後にお持ち帰り。随分な仲に見えるが、他が入り込む隙などないと見せつけるにはこのくらい必要だろうか。
フィブラ邸に遣いを出し、離宮まで同行する。予定になかった宿泊のため、使用人達を急に忙しくしてしまうが、そんな様子など一切見せず完璧な対応をしてくれた。今夜もまた寝落ちしてしまうまでお話の時間だ。




