第61話
未だダンジョンの開放が始まらないまま正月休みが終わり、平凡な毎日を過ごしていた。
そして週末の金曜日の夕方、おれの帰宅を待つお客さんが我が家の前に居た。
「武田宗一郎さんで間違いないでしょうか?」
このイケオジは誰だ?。俺は職質を受けるような事はしていないし、男と会う約束もない。
「怪しい者ではありません。私はこう言う者です」
イケメンの中年男性は、懐から名刺を取り出し俺に渡した。
「日本探索者組合 ギルド”光明の月”代表 飯島光輝さん・・・・ですか」
「はい、そうです。私達日本探索者組合は、全国のダンジョン攻略や同組合員の探索補助等を行っていまして、現在組合員数も国内最大となっています。そして私達”光明の月”は、この近県付近を拠点に活動しているギルドです。武田さんはギルドと言う名称を聞いた事は御座いませんか?」
「えぇ。中世ヨーロッパに実在した共同組合的立ち位置だったと記憶していますが」
「はい、昔はそうですね。現代では目標や目的を共にするチームや集団に近い存在ですかね。そして我々は新ダンジョンに新たな資源が豊富に有ると踏んでおりまして、早い内に優秀な探索者を確保しておこうとしていた所、武田さんを知った訳です。それで武田さんにお会いしに来た理由は、早い話が勧誘です」
新ダンジョンからの資源で、日本探索者組合が覇権、権利を取ろうと?いや、考えすぎか。そういう政治的利権に興味は無いが、そもそもそれって重要な情報じゃ?と思ったが、既に琴音さんから聞いている情報なだけに、ギルド加入のメリットにはならない。逆に自由に行動出来ないデメリットしかない。
「その前に、一つ聞かせて下さい。・・・・・何処で俺の事を?」
俺は有名人ではない。最近探索者になったばかりの俺に、白羽の矢が立つとは到底思えなかった。
「我々の組合員から、探索中に凄い探索者を見たと言う情報提供を頂き調査した所、武田さんだと分かったしだいです」
凄いの定義が曖昧だが、これは嘘だな。俺は他の探索者との接触を避けてた上に、一般的な目立つような活躍もしていない。なのに情報提供されただって?荷物の搬入ばかりしてた俺が?怪しい探索者であっても凄い探索者ではないぞ?そんな俺を知っているのは、ダンジョン協会の人間か自衛隊員だけだろう。
「俺は凄い探索者ではないですし、目立った功績もありません。その上、ひと月前に探索者になったばかりの初心者です。なので、その情報は間違いでしょう。お誘いは嬉しいのですが、俺達はギルドに興味有りませし、なにより俺達は楽しむ事に重きを置いていますので。では、失礼します」
勧誘に来た飯島光輝をその場に放置して、我が家に入った。俺の家族には関わるなと釘を差して。
「ただいま」
「宗ちゃん、お帰り。外の人誰?宗ちゃんの帰りをずっと待ってたみたいだけど」
「あぁ、ギルドの勧誘だってさ。俺達には必要ないけどな」




