第60話
「それで、何を聞きたいので?」
「いえ、大した事は有りませんがね・・・一月三日の十二時から十二時間、新ダンジョンで魔物大氾濫が発生する・・・これについて何かご存じでは?」
思ってたよりド直球をぶん投げてきたな。そないなもん知らんがなの一言で終わりそうだが?それとも何か別の意図が?
「・・・俺には、わかりかねます」
「ふむ・・・そうですか、ありがとうございます。聞きたい事は以上です。今日はもうお帰りで?」
「えぇ、ここは立ち入り禁止みたいですので引き上げます」
「では、残りの魔物はこちらで引き受けますので、こちらからどうぞ」
階段の昇り口を開けてもらい、俺達は地上へと戻っていった。
「俵さん、どうでした?あのスキル使ったのでしょ?」
「あぁ、使ったさ。彼等は限りなく黒に近いだろう」
〈政府とダンジョン協会に情報提供したのは彼で間違いないだろうが、その情報は何処からだ?〉
これ以上考えても答えが出ないと判断した俵は、一つの指輪を親指で弾き、稲葉に返した。
地上に出た俺達はこそこそと駐車場へと戻り、車に乗り込んだ俺達は家路につく。
「パパは言い訳が下手だね~」
「あんなの知りませんの一点張りでいいのに」
「それよりも、今回何もドロップしていないのはどうして?」
言われて気づいたが確かにそうだ。
魔物を倒す事に夢中で意識していなかったが、あれだけの魔物を倒したのだ。ドロップ品の一つや二つ有ってもおかしくない。せっかくの収穫チャンスだっただけに溜息しかでない。今度、琴音さんに会ったら聞いておくか。覚えてたらの話しだが。
我が家に着く頃には日付も変わり、世界中のダンジョンで起きた魔物大氾濫は収束していった。
今日も朝早くに目が覚め、炬燵のスイッチを入れテレビをつける。テレビは昨日の大氾濫の放送をしていて、自衛隊の戦闘シーンや魔物がダンジョン協会の建物から溢れ出てくる映像が流れる。そして海外ダンジョンの被害状況も報じられ、日本国内ダンジョンの被害は海外に比べて少なく、いかに自衛隊が活躍していたかがわかる。
映像も終わり画面がスタジオに切り替わり、前回同様の自称ダンジョン専門家達がそれぞれ感想を述べていく。そして、ある男の順番が回って来た時にスタジオがざわざわと騒がしくなる。
そう、探索者は人殺しだ!魔物と共存するべきだ!と吠えていた男だ。
魔物大氾濫発生時の映像には、俺に言い掛かりをつけてきた男が見事に殺されるシーンも放送されており、スタジオ内にいる人達からも嫌悪感を抱かれている。そんな男の第一声が、私の言った事を守らなかった為に起きた事象だ、責任は探索者や自衛隊に有る。と、またもや吠えた。
この期に及んで、まだこんな事を言えるのが凄い。スタジオにいる他の専門家達も、そのコメントに対して異論を唱えるが、男は反論せず持論を展開するのみで議論にもならなかった。
これを見ていた俺は、呆れて言葉を失う。いや、この番組の視聴者全員が言葉を失ったと思う。
結局この男は本気で魔物と共存出来ると信じているのか、意図的に世論を誘導したいのか、分からないまま番組は終わっていった。彼の左薬指に指輪が二つ装着されていた事に誰も気づかずに・・・・




