第58話
俺は新ダンジョン入口に向けて走った。勿論、直線上の邪魔になる魔物を殴り飛ばしながら走った。時間にして数秒だが、重要なのはここからだ。前も後ろも魔物に挟まれる形になる。気合と根性だ、行くぞ!
階段に辿り着き、階段下を覗き込む。予想通り、魔物が列をなしている。
「うォォォォォォォォ!」
盾を前にし、強引に魔物を押し倒していく。足に倒れた魔物の感触が伝わるが関係ない、そのまま突き進む。そして一階層に辿り着き振り返ると、俺の盾で倒れた魔物を彩音と詩織が止めを刺しながら追ってきていた。その後を美晴は後ろ向きに階段を降りながら鞭を振るう。
一時は美晴に階段から来る魔物を相手してもらい、残りの俺達三人は前を向いた・・・
・・・・・・・・弱肉強食のお時間だ。
ここからは俺達の一方的な虐殺が始まった。溜まったストレスを発散するかのように。
要はただの、八つ当たりだ。
左腕の盾で殴り一体、右手のスコップでまた一体と、力任せの一撃で魔物を倒していく。その隣では、木刀を二刀に構えた彩乃が魔物を瞬殺していく。そして詩織はシールドで魔物をいなしながら、突き、切るを巧みに使い撃破していく。最後に美晴は、鞭の先端が縦横無尽に暴れまわり、複数の魔物が一撃で無に帰していく。
何時間経ったかは分からないが、徐々にではあるが渋滞を作っていた魔物も減り始めた。チラリと時計を見る。残り二時間か。何とかなりそうだ。
「俵さん。魔物の勢いが弱まりましたよね」
「そうだな。だが油断するなよ。十二時までまだ二時間ある」
勢いが弱まったと言えど、あのホブゴブリンが厄介だった。
ゴブリンや餓鬼にラッシュボアと小型の魔物には銃の効果があり、時間さえあれば自衛隊で対処出来ていたが、銃の効果が薄いホブゴブリンが現れ戦況が変化したのだった。
「稲葉ぁ、あのデカ物はどうにかならないか?」
「それは、私の上司である俵さんが考える事でしょう?ダンジョン内ならいざ知らず、地上の私は普通の自衛隊員ですから役に立ちません」
「だよなー、本部も防衛の指示のみで、全然使えねぇし」
「俵さん、今のは聞かなかった事にしますから、何かいい方法考えて下さい」
ここでホブゴブリン三体の内の一体がダンジョンの入口に向かっていった。
「お、デカ物が帰るみたいだぞ」
「ですね。小型の魔物でも呼びに行ったのでしょうかね」
「稲葉ぁ、準備しておけよ。残り一体になったら突撃するぞ。そこから制圧、その後にダンジョンの封鎖だ」
「はい、わかりました。準備してきます」
稲葉は各隊員に指示をし、本部への現状報告も行っていく。
そして、待つ事五分。残りの二体の内一体がダンジョンへ向かう。
「よし、中に入ってから残りのデカ物を叩くぞ」
「はい、各員を配置に着かせてきます」
すぐに隊員達を配置に着かせ制圧の準備に取り掛かる。
数分で準備が完了し俵の元へ戻り、俵が大声で叫んだ。
「撃てぇ!」
銃弾がホブゴブリンを襲う。効果が薄いと言えど、ホブゴブリンにもダメージ無い訳ではない。
その隙に俵と稲葉他数名が建物内へ侵入していく。
いつも一緒にダンジョンに潜っているメンバーなだけあって、スムーズに各人が配置に着く。そして、俵が手で合図すると、一斉にホブゴブリンを襲う。
最後は俵のククリナイフでホブゴブリンの止めを刺したが、ダンジョン内と地上では勝手が違うようで、疲れの表情を見せる隊員。すぐに他の隊員達も制圧を開始していく。逃げ遅れた民間人もいないようで、俵は新ダンジョンの入口に向かった。
「十二時まで、まだ時間はあるよな?何故大氾濫が止まった?」
「さぁ、私も分かりません。ダンジョン内で何かが起きているのでは?」
俵は少し考えた後、考えが纏まったのか稲葉の服を掴みダンジョンに降りて行った。




