第57話
未だ魔物の大氾濫が収まりそうにない戦闘に、俺達は飽きが来始めていた。
適度に休憩を取りながらの為、体力的には問題はないが、狭いダンジョンの入口から単体で降りて来る魔物に対して、どうしても攻撃が単調になってしまう。
それともう一つ。魔物はゴブリンに餓鬼にラッシュ三兄弟(猪鹿兎)とコボルトが大半の為、一~二回攻撃すれば倒せてしまうのも飽きが来る要因だと思う。
もし、大型の魔物が現れても地上で対処してるだろうから、こっちは比較的安全なのかも知れない。と言うか、俺達探索者は、ダンジョン内でしか能力を発揮できないから、必然的にダンジョン内での魔物駆除しか出来ない。
因みに、地上だとただの初老夫婦と非力な女性だからな?地上は自衛隊員に任せればいいさ。
「あと六時間か、やっと半分だな」
この魔物大氾濫は夜中の十二時になると収束する。勿論日本時間でだ。
これもダンジョン協会と政府には魔物大氾濫の件と一緒に伝えてある。魔物大氾濫の信憑性がとれた今、俺の情報は信用に値するはずだ。
自衛隊も収束するのを分かっているのと分かっていないとでは、戦略は大きく変わる。特に戦術の影響は大きく、無駄を省いた効果的な戦術を立てやすくなるはずだろう。
「詩織、そろそろ交代だぞ~」
四人でローテーションしている為、詩織を下がらせ今度は俺が前線に立つ。
ゴブリンや餓鬼が相手だと、本当に作業ゲーしている気分だな。コボルトなんて、仲間も呼べずただの的になってるだけだし。
詩織と交代後一時間が経過する頃、ここで魔物の出現がピタリと止まった。何事だ?まさか自衛隊が張り切りすぎて殲滅したとかか?それだと嬉しい誤算だからいいが、防衛ラインが・・・・突破されたとか?
心配にはなるが、俺達じゃ地上に出ても糞にも役にも立てないのは明白。さて、どうするかな。様子を見に行くか、様子を見に行、様子を・・・う~む、一択だな。
団欒部屋で寛いでいる彼女達に現状伝えた俺は、階段を昇っていく。そして昇り切った先で見た光景は、外から多少の光が漏れて入ってくるが、ダンジョン出口が何かに塞がれて地上に出られない状態だった。
これは何だ?テーブル?ロッカー?地上の状況は?建物の崩壊はしてないよな?
非常に不味い事が分かった俺は一旦戻り、階段下で待機していた彼女達に伝えた。
「それじゃ、出られないわけ?」
「今から出られる隙間がないかを探してみる」
外の光が漏れて入ってくるなら隙間が有る可能性はある。問題があるとすれば、外の状況が分からない事だ。ダンジョン出入口を境に音が遮断されている為、音による状況判断が出来ない。
「まずは、これらを排除しないとだな」
「そうね、難儀(意:困難、苦労)だわ」
地道に、瓦礫やテーブルとゲートに使われていた部品等を階段下の広場へ運んでいく。
ある程度運び終えた所で漸く大人一人分の隙間が出来、彩乃がその隙間に入り込み外の状況を確認した。
「発砲音が聞こえてるから、自衛隊はまだいるみたい。それと、こことここを動かせたら外に出られそうよ」
自衛隊が無事なら、防衛ラインはまだ近くに有るって事だな。出来れば使いたくなかったが、次の一手に移るか。
外に出れるだけの隙間を確保し外の状況を確認すると、自衛隊の防衛ラインはダンジョン協会出入口にまで下がっていた。
そしてゴブリンを二回り以上大きくした魔物だろう影を複数見つけた。ホブゴブリンだ。
あいつらが指揮をしているのだろうか、なんとも厄介だ。
美晴達に外の状況を伝えると同時に、新ダンジョン内で魔物の間引きを行う事も伝えた。いくら隣に有ると言っても、新ダンジョンに辿り着くまでに魔物に取り囲まれる心配があり、かなり危険だ。
「それ良いわね。ちょうど不完全燃焼で物足りなかったもの」
え?
「私もよ。手応えが無さすぎて少しイライラしてきたし」
はい?
「宗ちゃん、私の鞭が血が足りないって言ってるわよ?」
いや、それ貴女の心の声ですよね?だとしても怖いわ。
美晴への突っ込みは置いておいて、問題はそこじゃない。
「問題は、ダンジョン一階層までどうやって行くかだ」
「そんなの簡単じゃない。ゴリ押しよ、ゴリ押し」
「パパが、その盾で突き進めばいいんじゃない?階段にさえ入ってしまえばゴリゴリ行けるでしょ?」
「後ろは任せて~。私の鞭が血を吸わせろって言ってるわ~」
アマゾネス感がひどいな、何かのウイルスに感染してないよな?




