第38話
そこからは、凄く楽な戦いだった。
前衛が二人になるとヘイトが分散し、ホブゴブリンの攻撃がまったく当たらない。
しかしこちらの攻撃は決定打は無いがチマチマとヒットし続ける。
そして何度目かの攻撃で俺のスコップが頭部にヒットした所で態勢を崩し、背後に回り込んでいた詩織がスタンガンを当てた後に膝裏に蹴りを叩きこみ、そして膝をついたホブゴブリンに詰め寄る美晴と彩乃。
「ママッ!」
「OッK~」
左右から同時に攻撃が振り下ろされる。
バキンッ!!
ホブゴブリンは激しい音と共に何度かバウンドしながら吹き飛ばされ、廃墟の壁にぶち当たり動きを止めた。そして糸が切れた操り人形のように力なく倒れているホブゴブリンを見て『おいおいこりゃ即死だったんじゃ?』と思うのと同時にナニも縮みあがった。
今まで一方的な戦闘だったのに比べ、このホブゴブリンとはダンジョンにきて初めて戦闘らしい戦闘をした気がする。それ程に命のやり取りの怖さに身が引き締まる思いをした。
魔物が生き物がどうかは知らんけど。
瓦礫に埋もれていたホブゴブリンが黒い霧状となり霧散していくと待望のドロップ品(指輪)が落ちていた。
ぃよっしゃー!キター!
ホブゴブリンがイレギュラー的な存在の可能性があるのだから必然とドロップの可能性だってあるはずだろ?だから少し・・いや、かなり期待はしていたぞっ!
そしてドロップ品を拾おうと手を伸ばした所で
「何?指輪?ドロップしたの!?」
と、走り寄ってきた詩織は尻圧で俺を吹き飛ばし、地面に転げた俺は苦笑いするしかなかった。ちょ、おま・・どんだけやねん
俺を吹き飛ばした詩織は、指輪を拾い上げヘッドライトで照らしながら指輪に彫られている文字を読み上げていく。
「暴飲・・暴食?」
ブフーッ
詩織にピッタリのスキルじゃないか。休みの度にスイーツ巡りしているのだから最近体重が・・・ゾクッ!凄い殺気を感じ詩織を見ると背後に陽炎の様なものが見える。そしてゆっくりと顔を俺に向け振り返ると詩織の顔が夜叉に見えた。その時俺は死を覚悟した。
「パァ・・パァァア!?」
ゆっくりと歩み寄る詩織に回れ右をして逃げようと試みるも、何故か美晴が背後に回り込んでいた。
「宗ちゃん、女の子になんて事言ってるの?謝りなさい」
あれ?声出てた?俺は再び回れ右をして素直に謝った。
「ふぅ、しょうがないわね、許してあげるわ。その代わり高級スイーツ買って貰うからね」
トホホ、高くついてしまったな。
所で、スキルの内容はどうだろうか?まさか、魔物を食べれたりしないだろうな?
『ゴブリンの耳って美味しいね』なんて言わないでくれよ?




