第35話
その後、辺りを探索しながらお互いの連携を確認する為、何度かゴブリンを見つけては倒しを繰り返していた時に装備面で俺が前衛を受け持つ事となった。
詩織も前衛向けの装備なのだが俺より半歩後ろで陣取るようにさせた。最前衛が俺で前衛が詩織と言う少々歪だが、父親としてのプライドだ。
そして詩織はスタンガンでは心許ないとの事なので、俺の腰の背面に刺していた鉈斧を渡しておいた。その後詩織はその鉈斧で叩き切るを試しながら手に馴染ませていった。
この階層での最終目的としていた強敵とされる魔物”餓鬼”を発見した。
この餓鬼は落ち武者のように髪が乱れ、下っ腹がこれでもかってくらい出ている魔物で、かなり見た目が良くない。うちの女性陣も嫌そうな表情をしているので嫌われる風貌なんだろう。因みにゴブリンは和訳で小鬼と呼ばれているらしい。
餓鬼の数は一匹と少ないが、体高がゴブリンより一回り大きく成人女性とほぼ同程度。かなりやせ細っていて腕力がなさそうに見えるが相手は魔物。この階層最強と謳われる餓鬼相手に俺達が何処まで通用するか楽しみだ。
「前衛は俺と詩織。美晴と彩乃は左右後方で隙を見て攻撃を頼む」
詩織は、殺傷能力は無いが自身の隙が少なく敵の隙が作れるスタンガンにスイッチしている。
そして美晴が俺の右後ろ、彩乃が詩織の左後ろに陣取った。
これは、かなり連携が上手くいっている陣形だ。
俺達に気づいた餓鬼は、走り寄る事はせずのっそのっそと歩み寄る。
そして俺達との距離が残り三メートルを切った所で、餓鬼が急に素早く動き俺の懐に入ろうとしてきた。
クッ、こいつ頭良いな。
餓鬼は左手で横から薙ぎ払う体勢でいる。鋭い爪が確認出来たので引っ掻く気なのだろう。
俺は咄嗟に左腕に装着しているシールドを餓鬼の攻撃に合わせる。
ガツッ
鈍い音と共に軽い衝撃がくる。
爪の攻撃はそこまで重くなく、体重を乗せた攻撃でない事が分かる。
と言う事は、シールドで受け流し餓鬼の態勢を崩すのは無理か。
「パパ、行くわよ!」
餓鬼の攻撃に対して思考を巡らせていると、後方から声がした。
ん?何だ?と振り向き彩乃を見てみると、餓鬼に向かって走り出した所だった。
ちょっ、おまっ、ま、待てよ、まだ何も・・・
バシッ!ゴンッ!バキッ!!
鈍い音が鳴り響く。
俺が叫ぶより先に餓鬼の懐に入った彩乃は餓鬼の腹部目掛けてフルスイングし、そして餓鬼が体をくの字に曲げて頭が下がった所を詩織が両手を組み、振り上げた拳を頭部に振り下ろし、前屈みに倒れた所に美晴が背中に向けて木刀を振り下ろし、餓鬼は黒い霧状となり消えていった。
「パパ、慎重になるのは良いけど、なりすぎるのはパパの悪い癖よ?」
そんな事言ったってなぁ
「確かに慎重すぎかもね」
死んだら終わりだぞ?
「まぁまぁ、彩乃も詩織もあまり宗ちゃんを責めないの。家族を想ってのことなんだから」
説教されてしまった。
怪我を負わないように慎重になっているのは自分でも分かっているから、娘達の言い分は分かる。
「分かった、分かった。しかしこれだけは覚えておいてくれよ?
一に、初見の魔物はっかりと観察。
二に、極力魔物一体に対して複数で当たる事。
最後に三・・・・・・・・・
・・・・・・・・・絶対に死ぬな」




