表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女と刑事の除霊事件簿 時間跳躍編  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/36

崩れた天井

 麗子の霊弾が弾き返され、天井と共に上のフロアの床が崩れていた。

 麗子は落ちてきたコンクリートが足に当たり、痛みで身動きが取れなかった。

 そのため、麗子の中にいたキツネの霊が出てきて言った。

『俺と勝負させろ』

 麗子は橋口とキツネを組ませて、三井と戦う作戦を授けた。

 麗子はポッカリと開いた穴を見つめながら言った。

「かんな…… 頑張って」


 橋口とキツネは六階に上がっていた。

 六階は一部床に穴が開いていた。これは麗子の霊弾が弾かれ、開いた穴だった。

 フロア全体は同じように焚き火をする為の金属の格子が置かれていた。

 ただ、それらに火は入っていなかった。

『……』

 キツネが見つめていると、その一つに火がついた。

 その隣にも、その次の格子にも火がついた。

 今度は橋口の目の前の格子に火がつき、高く炎が上がった。

 そこに三井の姿が現れた。

「これが、あんたの復活の狼煙(のろし)って訳なんだケド」

 三井の姿が笑う。

『復活も何も、やられたつもりはないぞ』

 炎に移る三井の像が、一瞬、揺らぐ。

『全く。妙なこだわりがある人間を操るのは面倒だ』

「?」

 橋口は首を傾げた。三井の姿は言葉を続けた。

『しかし、そんなことももう問題ではない』

 言い終わった時には、フロアの格子の全てに火が入っていた。

「じゃあ、試してみるんだケド」

 橋口は左足を軸に立って、右足で焚き火が炊かれている格子を蹴るポーズをした。

 炎に映る三井はピクリともしない。

「ほら、蹴ったげるんだケド?」

 さっきまでなら、少なくとも動揺していたはずだ。

 しかし、今は、全くブレない。

 三井は言う。

『燃やしてやる。灰も残らないくらい徹底的にな』

 言い終えると、三井の体を映していた炎が円を描いた。そして、その炎の輪が、急速に広がる。

「燃えちゃうんだケド!」

 このままフロア全体に炎の輪が広がったら、どこまで逃げても仕方ないと思われた。

 その時、キツネが橋口を誘導する。

『こっちだ』

 中心から円形に広がった炎は、別の場所にある、格子で燃えている炎とぶつかると、そこで止まった。

 障害物のない場所については、炎は扇状に広がりながらフロアの壁まで到達した。

「何だ、避けるの簡単なんだケド」

 再び橋口の近くにある焚き火が燃え上がり、そこに三井の姿が映し出された。

『今のは、ほんの小手試しだ。お前一人ぐらい、いつでも焼きころせるんだからな』

 三井が言うと、またそこを中心とした円形に炎が広がり始めた。

 キツネは橋口の体運びを、霊力を使ってアシストしながら、また別の燃えている格子の後ろに誘導した。

 炎が橋口の隠れる格子に当たると、その炎は弾かれたように中心に返っていく。

 全ての格子が同じように炎を弾くわけではない。キツネの選ぶ格子には、何か仕掛けがあるようだった。

「さあ、こっちも反撃するんだケド!」

 炎が通りすぎると、別の場所に移動していた三井の姿目掛け、鞭を振り抜いた。

『そんなもの、何度も喰らうか!』

 焚き火から火の粉が落ち、それが爆発する。

 鞭の先端は、その爆風に弾かれて戻ってしまった。

 橋口は、弾き返された鞭を、冷静に(しご)きなら巻き戻す。

 巻き戻しながら橋口は、ここまで状況を判断した。キツネの姿は三井に見えていない。そして、橋口がどうして円状に広がる炎の攻撃を避けて、無事でいられるかもわからないようだった。

 橋口は頷くと、走った。

 三井の姿が消え、橋口を追って、橋口の近くの焚き火に現れる。

 橋口は、それを見て、また方向を変えて走る。

『逃げても無駄だ。今度こそ仕留めてやる』

 再び三井の姿が消え、橋口の近くの焚き火に現れた。

 壁際の、端にある焚き火だった。

『死ね!』

 三井は自らを中心にして、円形に炎を吐き出した。

 橋口は鞭を構えた。

「残念ながら、これは罠なんだケド」

 三井を取り囲む五つの金属の格子から、逆に三井に向かって炎が伸びた。

『何だとっ』

 取り囲んでいる金属の格子に燃えている炎は、キツネが操る『狐火』だった。

 橋口とキツネで、三井をこの位置に誘い込んだのだ。

 円形に広がる炎を押し退けて、五か所から伸びる炎が三井に届く。

 橋口は丸めたままの鞭で三井から広がった炎を避ける。

 五か所の炎に貫かれた三井は、動けないまま壁際の焚き火に立っている。

「これで勝ちなんだケド!」

 橋口は、動けない三井に鞭を放った。

 高速で伸びていく鞭の先端が、三井の体を切り裂く。

 いや、切り裂くはずだった。

 三井の髪の辺りから、幾つかの火の粉が飛ぶと、それが爆発した。

 一つ、二つ、三つ、そして四つ。

 連鎖的に爆発し、強い光を放った。

 それを見てキツネは、三井を止めている炎の制御を解き、橋口に向かった。

『危ない!』

 キツネは橋口の鞭を咥えると、爆発する火の粉から遠ざかる方向に走った。

 爆発した炎と光がフロアに広がっていく。

 橋口の背後に回り、キツネは体を大きく変えた。

 フロアは眩しいほど真っ白に光った後、全ての炎が消えさる。

 うつ伏せになっている橋口が、寝返って、廃ビルの天井をみる。

 体の違和感を確かめるが、特に痛みはない。

 さっきキツネが背後に回ったのと関係するのだろうか。そうか。橋口は気づいた。背後にいたキツネは体を大きくして、私が炎や光を浴びないよう、壁になってくれたのだ。

 上体を起こすと、周囲を探した。

「!」

 橋口の傍に、子犬のように小さくなったキツネの姿を見つける。

 真白いキツネを抱き上げると、うっすらと目を開いた。

『大丈夫だったか』

「私は大丈夫だけど、キツネさんは大丈夫そうじゃないんだケド」

『俺はただの霊体だ、ダメージはイコールエネルギーが減ったということだ。だがお前は生身だ。生身の人間は失ったら戻らないからな。やつもあれだけの爆撃を仕掛けたら、しばらく動けまい』

 橋口は、キツネを抱きしめた。

「ありがとう…… なんだケド」

『そんなことより、上だ…… 上に本体がいる』

「上って七階? そこに三井がいるってこと?」

 キツネの目が開いたり閉じたりした。

『その上かもしれない』

「わかったんだケド」

 そう言って、橋口は天井を睨みつけた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ