表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女と刑事の除霊事件簿 時間跳躍編  作者: ゆずさくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/36

TDL

『何もないなら、いたずらってことで』

 とアリスが不気味な声を発した。

 その時、背後からアリスの頭を撫でる者が現れた。

「アリスちゃん、ほら、アメあげるんだケド」

「かんな!?」

 麗子は驚いた。

「集まってくる浮遊霊から、TDLのお客さまを守るのはすごい大変だったんだケド」

 小声で『無限列車編の炎柱と一緒の働きだ』とか、橋口はずっと自慢していたが、麗子には聞こえなかった。

 アメを貰ったアリスは、屈託のない笑顔を見せて言った。

『ありがとう!』

「麗子、お金余ってるでしょ、アリスちゃんも一緒に三人でTDL入るんだケド」

『ヤッタァ!』

 橋口にしがみつくアリス。

 そうだった。かんなにはTDLを恐れないよう、命令(コマンド)を入れてあったのだ。

「いや、二人ならともかく、三人分のお金はないよ。なかったら諦めてね」

「そんなのわからないからチケット窓口に行くんだケド」

 橋口はアリスと繋いで、窓口に行った。

 麗子は思った、私のお金を足さないと二人分でも厳しいのに、橋口が持っているお金だけではチケットは買えないはずだ。

 案の定、あっというまに引き返してくる。

「TDLの偉い人が、私とアリスは無料で入場して良いって言ったらしいんだケド!」

「えっ、マジ?」

 いや、だったら私もついでに『無料(ただ)』の交渉してくれないかな……

「先に入ってるんだケド」

 橋口は手に持った二枚のパスを、見せびらかすようにして振ると、入口へ行ってしまった。

「ちょっと、そのアリスには……」

 なにか悪霊がついているに違いない。言いかけてやめた。橋口だって除霊士を目指しているのだ、手を握った相手に悪霊がついていたら、なにか感じるに違いない。さっきの声といい雰囲気といい、アリスには何かが憑いてしまったはずだ。それとも私の考え違いなのだろうか。

 麗子は慌ててチケットを買い、入口へ回る。

「まさか二十年前のTDLに入るとは思ってなかったな……」

 橋口たちは、ワールドバザールを抜けて、広場に出たところで○デレラ城をバックにして自撮りしていた。

「ねぇ、かんな……」

 アリスに何か、悪い霊は憑いていない? と続けようとしたが、橋口にスマフォを押し付けられたので、黙ってしまった。

「ほら、麗子、中々うまく撮れないから、これで撮って欲しいんだケド」

 橋口のスマフォを使って写真を撮って返した。

 橋口とアリスは写真を見て喜んでいる。

「アリスちゃん、LINKのIDある?」

 麗子は慌てて止めに入った。

 橋口を引っ張って、耳元で言う。

「(こんな小さい子供は携帯持ってないわよ。あと、かんな、この時代はLINKもスマフォもないの。だから、もうそれ以上喋らないで。この時代の人に聞こえるから。変な干渉しちゃダメよ)」

「(そうか、ガラケー時代はLINKは一般的じゃないんだケド)」

「(ガラケーという言葉も、きっとまだ無いわよ。みんながみんな、ガラケー使ってるんだから)」

 橋口は反論する。

「(そんなの分かんないんだけど。だって、今はみんなスマフォ使ってるけど、スマフォって言葉が存在する訳なんだケド)」

 まあ、それは一理あるが、ガラケーはスマフォに対して発生した単語だから、スマフォがない状況では使われていない気がする。麗子は微笑んでいるアリスを見ながら、橋口に言った。

「(それより、アリスちゃんに何か憑いてない?)」

「(全くそんな感じしないんだケド。どんな人間でも、ある程度、霊は混ざっているものなんだケド)」

「(最初の時から声が変わった。絶対に何か憑いている)」

 二人で、アリスの方を見る。

 アリスはアリスで、何かに気づいたらしく、二人に寄ってくる。

『パレードがあるって。ハロウィンパレードだって!』

「……」

 麗子は『疑念』から、笑顔が(いびつ)になる。

 橋口は全く疑わないから、全力の笑顔を見せて返した。

「よし、アリスちゃん。一緒に見にいくんだケド!」

『わーい!』

 アリスが走るのを、橋口が追いかける。

 麗子はさらに後からゆっくりついて行き、様子を観察していた。

 あの霊弾は周囲に沢山の霊が集まっていたせいか、自分の絞り出した霊力より大きくなっていて、思ったより威力があったと思う。だが、鈴木から始まった一連の除霊が、昇天していないのだとしたら、少し出力の大きい霊弾を食らったからと言って、昇天するのだろうか。

 アリスが走るのを見て、周囲の人々が「かわいい」だの「子供はコスプレできて良いわね」とか話している。

 確かに大人は『ネズミさんカチューシャ』をしている程度で、仮装はしていない。大人の有栖刑事があの格好(・・・・)で入園を断られたように、TDLの規則があるのだろう。

 麗子は改めてアリスを見つめ直した。

 自分の心の問題かもしれない。さっきの完全霊体を見て、自信を喪失していることで『アリスに霊が取り憑いた』と思い込んでいるのかも知れない。

『俺もそう思うぞ』

「えっ?」

 麗子は声に出してしまった。キツネが心に話しかけてきているのだ。

『土、木、火、金、水の悪霊はいないと思う』

「昇天したのかしら」

 前に立ってパレードを見ている見知らぬ人が、変な顔をして麗子を振り返った。

 麗子は素知らぬ顔で場所を移動する。

『俺も、お前を通して見ていた訳だからな。真実が見えているかはわからない。だがあの子の中にはいない。いや、もし、万一、いたとしても非常に弱く、小さい』

 麗子の右肩に、小さな小さなキツネの姿が見えた。

 だが、自信ありげには見えない。さっきの発言も、何か、言葉で保険をかけているように思えて仕方ない。あるいは何かのフラグというべきか。

 だが、あまりモヤモヤし続けても仕方ない。麗子は決断した。

「分かった」

 橋口もそう言っていた。そして、キツネが私を通さずに直視して、アリスの中に霊が憑いていないと判断するならいないのだ。私の判断が間違っていたのだ。

 気持ちを切り替えて、パレードを見ることにした。

 橋口がアリスを抱えて、楽しそうに笑顔を浮かべている。

 その前をジャックオーランタンに乗った、魔女やら、お化けに仮装したキャラクター達が進んでいく。

 パレードルートに並ぶ観客は、思い思いに手を振ったり、ガラケーで写真を撮ったりしている。

 キャラクターたちの明るい振る舞いや、その場の雰囲気に麗子も次第に明るく、楽しい気持ちになってきた。

 これがTDL。TDLの力なんだ。

 そう思い、麗子は感動した。

「ねぇ、ねぇ、三人で撮らない?」

 三人はパレードを背景に、スマフォで写真を撮った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ