凄まじい手腕
「邪魔するぞ!」
オズ先生は堂々と事件現場に乗り込んだ。
「何だ! お前は……!」
「オズワルド様。なぜこちらに! 待機していてくださいと言ったではありませんか。もしもあなた様に何かあったらどうしますか!」
「フィザとりあえず落ち着け! 俺はこいつに用が合ってきたんだよ」
「俺に用だと! 誰が来ようと俺は引かない」
「別に俺はお前を止めにきたわけじゃねぇよ! その逆だ。その鉱石を持っていっていいぞって言いにきたんだよ」
「えっ!」
「聞こえなかったのか! その鉱石をレモール男爵領に持っていっていいと言ったんだ。そして、レモール男爵に渡せばいい」
「!!!」
ラザンさんはオズ先生の言葉に動揺を見せた。
「何を言っているんだ。俺はこの鉱石を売って贅沢三昧の生活をしたいだけだ!」
「そうなのか。じゃあわざわざレモール男爵領に戻らなくてもいいじゃないか。何なら他の豊かな領地を俺が紹介してやるよ!」
「領地には俺の家族がいるんだ!」
「ああ知ってるよ。それが何だ!」
「何だだと! 大切な家族を置いて俺がどこかに行くわけないだろ!」
「ほう! お前はそんなに大切に思っている家族がいるのに盗みを犯した上にその事実を黙ってこれから家族と幸せな人生を歩もうとしているわけだ。お前はなかなか凄い神経をしているな!」
「うっ!」
「理解したか。今からお前がやろうとする事は誰が見たって犯罪なんだよ! 犯罪を犯してしまったらこれからの人生に決して平穏なんて訪れないんだぜ! いつかはお前の大切な家族にも害は及ぶだろうよ。お前はそんな人生を大切な家族に背負わせようとしているんだぞ!」
「……」
ラザンさんはオズ先生の言葉に愕然とした表情を浮かべる。
「なら俺はどうしたら良かったんだ! このままじゃレミーの病気は治らないんだ! だからこうするしかなかったんだ!」
「お前の奥さんはお前が犯罪を犯してまで薬を手に入れて本当に嬉しいと思っているのか!」
「思わないさ! でもレミーが元気になるなら……俺はどうしたらよかったんだ!」
ラザンさんは涙を浮かべ地面に伏していた。
手に持っていた爆薬もはなしていたが、まったく気が付いていない。
「お前にチャンスをやろう! と言ったらどうする?」
「チャンス?」
「そうだ。チャンスだ! 今、現在お前が起こした事件を知っているのはここにいる者だけだ」
「黙っていてくれるんですか!」
「いいぜ! これから俺の言う通りにお前が行動すればな。それを行えばお前の妻の病気が治るまで我が公爵家が面倒をみよう。もちろんお前が働きたいと言うならそのまま、この鉱山で働いてもいい。家族と一緒に住める家も町に用意してやる。どうだ! 凄い条件だろ」
ラザンさんはオズ先生の旨すぎる話に疑心暗鬼になっていた。
「なぜ俺なんかにそんな事をしてくれるんですか?」
「お前のためじゃない。俺は糞野郎のレモール男爵に地獄を味会わせたいだけだ! そのためにはお前の協力が不可欠なんだ。さぁ決めろ! 俺の側に付くかレモール男爵に付いて家族もろとも破滅するか!」
怖っ! 多分、今ここにいる皆がそう思ったに違いない。
でもラザンさんにとっては最高の条件だろう。
「オズワルド様の指示に従います。何でも言ってください」
ラザンさんは頭を地面に付けて土下座していた。
「よしわかった。ラザン立て」
「はい」
「今からお前は俺の協力者だ。俺は絶対に懐に入れた人間は守ってやる! だから俺を信じろ!」
「はい。ありがとうございます」
流石オズ先生だな。
すごい手腕だ!
あっという間にラザンさんをこちら側に取り込んでしまった!
「じゃあまずは確認だ。お前はレモール男爵に頼まれて女神の瞳を盗みだそうとした。そうだな?」
「はい。間違いございません」
「女神の瞳の受け渡し場所は決まっているのか?」
「はい。直接男爵邸まで持ってくるように言われています」
「ほう! 俺達も相当舐められているみたいだな。わかった。お前は女神の瞳を持って明日の朝にレモール男爵の元へ出発しろ! もちろん護衛は付ける」
「わかりました」
こうして鉱山内で起きた事件は解決した。
僕らは鉱山見学を取り止め、公爵邸に戻った。
公爵邸に戻ると、宰相とミサーナさんに出迎えられ、そのまま応接間に向かった。
「父上、報告したと思いますが、これからレモール男爵を潰そうと思います。もちろんよろしいですよね!」
「異論はない。早速計画を聞こうじゃないか!」
「流石父上、話が早くて助かります。それではお話しいたします。先ずはラザンが明日の明朝にレモール男爵邸に向かって出発いたします。到着は明後日の昼になるでしょう。我々は先回りしてその現場を押さえ、男爵の罪を暴き、地獄に落とします」
「なるほどな。だが私やお前がレモール男爵の元に言ったら怪しまれるのではないか?」
「はい。その通りです。なので子供達に協力してもらおうと思います」
「「「「「「「えー!」」」」」」」
「子供達も初耳のようだな」
「はい。とりあえず説明します。カルロスを除く子供達にはこれからレモール男爵邸に向かってもらおうと思います。そして、滞在の許可を取り、男爵邸に滞在してもらいます。有数の貴族の子息・令嬢ばかりだからレモール男爵も喜んで滞在を承諾してくれるはずです。奴は権力者に繋がりを持ちたいはずですから!」
「そんな危険な場所に子供達を行かせるなんて私は許しませんよ!」
「母上のお気持ちはわかります。しかし、決めるのは子供達です。どうする? この重要な役目を引き受けてくれるか?」
僕らはお互いに顔を見合わせると、首を縦に振っていた。
「やらせてください!」
「そうか。よろしく頼む。カルロスは俺と共に少し時間を置いてから出るからな!」
「わかりました!」
「サラーネさん、心配していただいてありがとうございます。でも安心してください!僕らには頼りになる護衛の皆さんがいますから!」
この旅でもずっと陰ながら僕らを守ってくれている。
「命に変えましても守らせていただきます!」
フロースが代表して宣言した。
「わかりました。くれぐれも気を付けてね。オズワルドもしっかりと片付けてきなさい。子供達に少しでも傷を負わせたら許しませんよ!」
「母上の言葉、肝に銘じておきます。そして、我が家に手を出したレモール男爵に地獄を見せてやりますよ」
こうして、僕らは急遽、レモール男爵領に向かう事になった。
僕らは部屋に戻り、荷造りや身支度を手早く済ませて玄関に向かった。
すでに外では馬車の準備が完了していた。
「バクストンさん、サラーネさん、短い間でしたが、お世話になりました。」
「こちらこそ楽しかったわ! これからもカルロスの事をよろしくね。またいつでも遊びにきてね。いつでも歓迎するから!」
「「「「「「はい!」」」」」」
本当は公爵邸にあと1日居る予定だったけど、これからレモール男爵領に行って全てが片付いたらそのままイザベルの実家のテンペスター公爵領に向かう事になっている。




