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幸せと苦悩の狭間で

この小説は完結していません。 7/5

前回投稿時に誤って投稿してしまいました。

本当に申し訳ありません。

 奥から声が響いた!


「レグ・ラザンどうした! 皆さんはここで待機してください!」


 フィザさんは声がした方向に駆けていった。


 僕らは何とも言えないもどかしい気持ちでその場に待機した。


「どうしたのかな?」

「大丈夫かな?」


 各々から心配する声が漏れる。


「オズ先生、このまま待機でいいんですか?」

「待機してろ。特にお前らは自分の立場を考えろ!」

「わかりました」


「止めるんだラザン! とりあえず落ち着け。それを離してくれ。話があるなら聞くから!」


 奥からフィザさんの声が響いてきた。

 内容からしてラザンさんをなだめている感じだ。

 状況から考えてラザンさんが何かを盾にして鉱山の奥に籠城してるんだろう。


「俺の要求は一つだ! この鉱石を俺に寄越せ! それと俺が無事にレモール男爵領まで行くまで手を出さないように手配しろ! それまではこの爆薬は離さない。少しでもおかしなまねをしてみろよ。すぐ火をつけてやるぞ! 俺は自分の命なんてどうでもいいんだ!」


 続いてラザンさんの叫びが聞こえた。

 今、何って言った!

 自分の命なんてどうでもいいだって!

 ふざけるな!

 この世には生き続けたくても生きれない人だっているんだ!


 僕の中に怒りがこみ上げていく。

 いつの間にか僕の足は奥に走りだしていた!


「おいトーラス、待て!」


 オズ先生の制止の声も僕には届いていなかった。


 奥に進んでいくと、更に口論が聞こえてくる。


「何があったラザン! 確かお前はレモール男爵領から出稼ぎにきてたよな。家族はそっちにいるんだったな。もしかして家族に何かあったのか?」

「あんたには関係ない!」

「あるにきまってるだろ! 俺は鉱山で働いている奴らの事は仲間だと思ってる。家族だと思ってる。だから仲間が罪を犯そうとしている所を黙って見過ごせる訳がないだろうが! 今ならまだ間に合う。俺も一緒にオズワルド様に謝る。爆薬を離してくれ! お願いだ!」

「……。何を言っても無駄だ。別に俺の命はどうでもいいんだ!」


 僕は事件の起きているすぐ側に来た。

 機会は一度だけだ!

 爆薬に火をつける前に一撃で倒す


 よし行くぞ! と思って一歩踏み出そうとした瞬間後ろから誰かに引っ張られた。


「落ち着けトーラス! どうした? いつもの冷静なお前はどこにいった」

「オズ先生……。心配しなくても落ち着いていますよ。今すぐ僕が一撃で沈めて来ますから」

「そんな事を考えていたのか! お前の武術の腕前が凄いのは知っているが、今はそれを振るう時ではないだろう。お前はわかっているのか! 自分の立場というものを! お前はこの国の第三王子だろうが! 命が危ぶまれる行為をするな!」


 第三王子……

 僕の頭の中にオズ先生から発せられた言葉が巡る。

 一体、何の意味があるのだろうか?

 昔からずっと放置され続け、今も公に身分は公表する事は出来ない。

 僕には未だに国王陛下の考えがわからないんだ。

 武術大会の時の言葉は正直、嬉しかった。

 だけど反面、ふと思うんだ。

 あの時の言葉は第三王子の僕に言ったのか、学園の生徒である僕に言ったのか。

 僕はあれからずっと悩み続けているんだ。


「オズ先生、一つ聞いていいですか?」

「何だ」

「僕はこれからこの国で第三王子だと認知される時はくるのでしょうか?」

「……」

「今、僕は幸せですよ。学園は楽しいですし、皆と一緒で最高の学園生活をおくれています。学園に通えているのも僕が第三王子だからというのも理解しています。でもいつも思うんですよ。第三王子のトーラスじゃない只のトーラスだったらどれだけ良かっただろうかって! 自分のやりたい事をやりたい道を自ら決めて進んでいける。今の僕は将来どうなっているか想像がつかないんですよ先生!」


 僕の言葉にオズ先生は言葉を失ったように立ち尽くしていた。


 はぁ。僕はこんな時に何を言っているんだ!

 オズ先生に言うのは間違っているだろ!

 僕はこんなに弱かったのか。

 駄目だ! 自分の心が嫌悪感でいっぱいになっていく気がする。


 今は忘れろ! ラザンさんを早く止めなくちゃ!

 僕は再び歩き出そうとした。

 すると、今度は後ろからそ衝撃を感じた。


「トーラス! トーラス! トーラス!」


 僕の名前を呼ぶ声。

 振りむかなくても誰だかわかる。

 リディアナだ。

 今、僕はリディアナに抱き締められている。

 温もりを感じる。

 只、名前を呼ばれているだけなのに……

 心が満たされていく。


「一人で背負わないで! 私がずっと側にいるから。私はトーラスが王子だから好きになったんじゃないよ! トーラスだから好きになったの! どんな過酷な未来が待ち受けていようとも決して私はあなたの側を離れない。だから頑張ろう! 一緒に頑張ろう!」

「リディアナ、ありがとう! 弱くてごめん」

「弱くて何が悪いの! この世に完璧な人間なんて存在しないでしょ! トーラスは私達と出会ってからずっと完璧だった。完全無欠の王子様だった。だから私は少し安心したくらいだよ」


「お前ら二人がそんな関係だったとは思わなかったわ」


 僕とリディアナはその言葉を聞き、我に返り、赤面した。


「オズ先生すみません。変な事を聞いてしまって」

「俺もちゃんと答えてやれなくてすまなかったな。まぁ何だ、一つ言えるのは今のお前のままでいろ! って事だ。俺に懸命に勉強を教えてくれと言ってきた頃から、お前は何一つ変わらず最高の俺の弟子だ。そんな奴の未来は薔薇色に決まっているだろ! 悩む必要はない。自然と道は拓けていくさ! お前の愛する者と大切な友人達と今まで通り学園生活を謳歌しろ! お前には手を差しのべてくれる味方はお前が思っている以上に沢山いる事を忘れるなよ」

「ありがとうございます!」


 オズ先生が師匠で本当に良かったと改めて思った瞬間だった。


「そういえば、お前の家名はアシュレーって言ってたよな!」


 いきなりの振りにリディアナは動揺しながらも肯定した。


「はい」

「なら母親はマアサ・アシュレーだよな」

「はい。確かオズワルド様は母と同級生でしたよね?」

「あぁそうだ!」


 オズ先生は何だか虚空を見上げて感傷に浸っているように『マアサの子供かぁ。これは運命だな!』と呟いていた。


「さっきのお前の言葉でお前の覚悟はしっかりわかった。これからもトーラスを支えてやってくれ!」

「もちろんです!」


「よし! それじゃあトーラスの頭も冷めた所でこれからの対応について考えるぞ。そこに隠れているファミルと小僧達、出てきていいぞ」

「別に隠れていたわけではありません。うら若き二人を見守っていただけです!」


 出てきたファミルさんの顔がすごくキラキラしていた。


「ファミル、わかっていると思うが、さっき聞いた事について話があるから後で時間を作れ」

「かしこまりました。とりあえず決して他言はいたしません」


 多分、僕の本当の身分の事だろう。後ろにいたファミルさんには僕の声は駄々漏れだっただろう。


「早速だが、ラザンの情報を教えてくれ! お前ならここで働いている全ての人物の情報くらい頭に入っているだろう!」

「もちろんでこざいます。これでも商業ギルドではギルドの頭脳と呼ばれておりますので! 奥の声が聞こえていたと思いますが、ラザンはレモール男爵領から出稼ぎに来ております。一年前から働いております。家族は妻と子供が二人おります。ラザンの妻は一年前から病にかかっているそうです。薬代が高いため給料の良いこの鉱山に出稼ぎにきているという経緯があります」

「なるほどな。ラザンの妻の病名は知っているか」

「フェザー病ですね」

「フェザー病だと! 確かフェザー病の薬は主にレモール男爵領で作っているんじゃなかったか」

「その通りでございます。ほぼ100%を生産していますね。それを利用して現レモール男爵領主はお金を荒稼ぎしているという噂です。フェザー病は薬を定期的に飲めば治る病気です。しかし、薬はかなりの高額だと聞きます。ラザンの収入ではとても追い付かないと思われます」

「何となく見えてきたな。これは結構な大事かもしれないな」


 何で大事なんだろう? 今回の事件は奥さんの薬のためにラザンさんが鉱石を盗み出そうとしているだけではないのだろうか?


「大事とはどういう事ですか?」

「お前ら、さっき工房で女神の瞳のブローチを見せてもらったのは覚えているか!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

「あの女神の瞳は約一年ぶりに発掘されたんだ。出た時はいろいろな所から買いたいと依頼がきたらしい。その中にとある人物の名前があったんだが誰かわかるか?」


 まさか!


「レモール男爵ですか!」

「流石ロイス、正解だ。俺はその時、現場にいなかったから詳しくは知らないが、資料によると、レモール男爵は相当、女神の瞳を気に入っていくらでも出すから買いたいと親父に懇願していたらしい。しかし、親父は売らなかった。その時は親父が公爵ということもあり、引き下がったが、未だに根に持っていると噂だ。本当に調子に乗ってやがる! その宝石を買う金はあり得ないくらい高い金で薬を売って作っているのにな。社交界でも親父の悪口をこそこそ裏で言いふらしているしな。本当にいい度胸してるよな! 俺達を甘く見すぎだろ!」


 本当に男爵はアホなのか。この国の宰相であり貴族のトップに君臨するマークウェル公爵家を敵に回そうとするなんて。

 薬で荒稼ぎしているなんて本当に許せない!


「オズ先生、これは男爵に痛い目に合ってもらうしかありませんね!」

「当たり前だろ! 俺の我慢も限界だったんだよ! 近い内に地獄を見せてやろうと思っていたんだ! まさか自分から地獄に落ちてくるとは思わなかったがな!」


 僕とオズ先生は黒い笑顔を浮かべていた。


 そこにいた他の者はこの瞬間、レモール男爵終わったなと思った。

 何せ相手がオズワルド様とブラックトーラスの二人なのだから!








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