心に刻む言葉
次の日の放課後、僕はリディアナと生徒会室に向かった。
前回の会議でリディアナのお兄さんのデューク先輩がクライブ先輩に代わって生徒会メンバーとなる事が決まった。
なので先日、リディアナは直接、デューク先輩に生徒会入りを打診しに行った。
僕は付き添いとして付いていった。
ルミエールお姉様のせいで僕もリディアナもとてもひどい目にあった。
目的であったデューク先輩の生徒会入りはあっけなく、本人の承諾により、決まった。
会議でルミエールお姉様がデューク先輩はクライブ先輩の後釜としての生徒会入りは拒否するかもしれないと言われていたから難航するんしゃないかと思っていたのに!
昨日一日で僕とリディアナのルミエールお姉様への信用が地に落ちたのは言うまでもないだろう。
生徒会室に入ると、ノアールお姉様が仕事をされていた。
今日は生徒会活動の日ではなく、単純にデューク先輩が生徒会入りを承諾しましたと生徒会長であるノアールお姉様に挨拶しにくるだけだ。
なので今日は他の先輩方はいない。
「トーラスも来たのね」
「はい。昨日はルミエールお姉様のせいでデューク先輩に挨拶が出来なかったので、改めて挨拶しようと思いまして」
「なるほどね。深くは聞かないけど、二人共ルミエールがごめんなさいね」
「ノアールお姉様が謝る事ではありません。全てルミエールお姉様が悪いんですから」
「リディアナさんは相当怒ってるわね」
「はい。当分の間、ルミエールお姉様と口をきくつもりはありません」
「あらあら、どうやらルミエールはリディアナさんの逆鱗に触れてしまったみたいね」
昨日の話をしていると、ノックの音が響いた。
「デューク・アシュレーです。生徒会入りの打診を受け参上いたしました。入室してもよろしいですか?」
「入って頂戴」
デューク先輩は部屋に入ると、状況を確認して、ノアールお姉様に挨拶した。
「ノアール生徒会長、この度は私を生徒会メンバーに選んでいただきありがとうございます。若輩者ではありますが、精一杯務めさせていただきます。これからよろしくお願いいたします」
「丁寧にありがとう。こちらこそあなたにずっとお詫びを言いたかったの。本来ではあなたが生徒会入りするはずだったのに、愚弟のクライブが無理矢理に生徒会入りしてしまって」
「その事ならノアール生徒会長に謝られる必要はありません。もう終わった事ですから」
「ありがとう」
ノアールお姉様への挨拶も終わり、デューク先輩は真剣な顔から柔らかな顔に戻り、リディアナに話しかけていた。
「リディアナ昨日ぶりだね。今日も可愛いよ」
「ありがとう。お兄様も格好よかったよ」
「リディアナに誉められるなんて嬉しいな。それだけでも生徒会入りした甲斐があったかな」
僕は挨拶するチャンスだと思い、デューク先輩に話しかけようと、機会を伺った。
すると、デューク先輩が僕の方を見た。
今だ! と思い、挨拶しようとすると、僕よりも早くデューク先輩が言葉を発した。
「トーラス殿下、ご挨拶が遅くなりました。デューク・アシュレーでございます。妹と仲良くしてくださっているみたいで、とても嬉しく思います。私が言うのも何ですが、リディアナはとても良い子なのでこれからも仲良くしてやってください」
今、何て言った? 殿下?
なぜデューク先輩がその事を!
「僕の方がリディアナには助けてもらってばかりです。本当にリディアナと出会えてよかったと心から思っています。デューク先輩ともこれから仲良くしていただけると幸いです」
僕は動揺を何とか隠して、言葉を返した。
「お兄様は何で知ってるの?」
「何をだい?」
「それは……」
リディアナは困った顔をして、僕とノアールお姉様を見ていた。
「デューク先輩はどうして僕の事を第三王子だと知っているのですか?」
「ああ。その事か。トーラス君はやっぱり第三王子殿下だったんですね」
「えっ! やっぱりって?」
「実はトーラス君が第三王子だという確証は無かったんだよ。三人の反応を見て確めたかったんだよ」
「それならデューク君はどうしてトーラスが王子だと思ったの?」
「三人共落ち着いてください!リディアナはトーラス君が王子だと知っているんだよね」
「うん」
「トーラス君から明かされたの? 自分で気付いたの?」
「自分で気付いた。私も確証は無かったけど、お母様から第三王子が私と同じ歳だから学園で会えるだろうって言っていたから。トーラスと友達になって側にいて、トーラスほど王子様にふさわしい人はいないと思ったの」
「そうなんだ。ならわかるでしょ。僕だってお母様から第三王子の事は聞いているんだよ。それは耳にタコが出来るくらいにね。母にそこまで言わせる第三王子にずっと会ってみたいと思っていたから僕も密かに探していたんだよ。そして、トーラス君にたどり着いたんだよ」
なるほど。デューク先輩もリディアナと同じように僕を探してくれていたんだな。
何だかすごく嬉しいな。
「僕はルミエールお姉様がばらしたんじゃないかって少し疑っちゃいましたよ」
「それ、私も少し思った」
「実は私もよ」
「ルミエールも知ってるんだ。他にも知ってる人いるんですか?」
「生徒会メンバーではアルバート先輩とレミーユ先輩が知っています。後、僕の友達5人も知っています。もちろん誰にも他言しない事を約束してもらっています」
「なるほど。僕も決して他言しない事を誓います。これからは同じ生徒会メンバーとしてたくさん接する機会があると思いますので、トーラス殿下のお役に立たせてもらいます」
「デューク先輩、敬語は止めてください。デューク先輩の方が年上ですし、僕の第三王子の身分は公ではありません。普通に生徒会の後輩のトーラスとして扱ってもらいたいです」
デューク先輩は少し悩んでいたが、これからは普通に喋ってくれる事になった。
呼び方もトーラスと呼んでもらう事になった。
「敬語も止めた所で一つ質問いいかな?」
「はい」
「トーラスにとってリディアナは友達? それとも恋人?」
「恋人です。僕にとってリディアナはかけがえのない存在です」
「そこまで断言されちゃうと何も言えないな。兄としては少し複雑だな。もしもリディアナの事を傷つけたらこの世の地獄を味わわせてあげるからそのつもりでいてね」
「そんな事は一生ありえません」
デューク先輩は僕への質問が終わると、次はリディアナの方を向いた。
「リディアナはトーラスが第三王子だとわかったから好きになったのかい?」
「違うわ! 私はこの学園に入学してずっと第三王子を探していたのは事実だけど、トーラスと出会い、トーラスの側にいて、私はトーラスの事を好きになった。決してトーラスが第三王子だからではない。トーラスがどんな身分であろうと私はトーラスを好きになったと思うの」
「そうか。二人の気持ちはわかったよ。二人もわかっていると思うけど、これからの二人の道は決して平坦ではないだろう。トーラスの第三王子という身分は決して軽いものではないよ。いずれ何かしら壁にぶつかると思う。その時、くじけることなく前に進めるようにこれからも努力しなさい。そして、信頼出来る友達や仲間を作りなさい。二人なら絶対に乗り越えられると僕は信じているよ。僕も助力を惜しまないから」
「ありがとうございます。デューク先輩のお言葉を心に刻み、これからも努力を続けていきます」
「私もトーラスの横で共に歩めるように努力します! 壁の一個や二個叩き壊して見せるわ」
その後、ノアールお姉様がデューク先輩と二人で話したいと言われたので、僕とリディアナは先に生徒会室を後にして寮へと戻った。
これから僕の前にどんな出来事が起きるのかはわからない。
しかし、リディアナが側にいてくれたら何が起きても乗り越えていけると思うんだ。
そのためにこれからの一つ一つの経験や出会いを大切に学園生活をおくろうと思う。
きっとそれらが僕らを助けてくれるはずだから




