ファンクラブ会長
「トーラス君だよね!」
「はい。」
僕が返事をすると、周りにいた女子生徒、お姉様方が歓声を上げた。
僕は自分に一体、何が起きているのかさっぱり理解出来なかった。
「本物だわ!」
「可愛すぎるわ!」
「まさに王子様ね!」
「本当にどっかのバカ王子に見習って欲しいわ!」
「本当よね!」
バカ王子ってクライブ先輩だよな。クラスメイトからこの扱いって相当嫌われてるんだな。
普段からあの態度なら当然だけど。
「お姉様方、落ち着いてください」
「ごめんなさい。普段は会長からあまりトーラス君に近付きすぎないようにって言われているの。だからこんな近くでトーラス君を見れて皆、嬉しいのよ」
会長? ノアールお姉様がなぜ?
「そんな、僕なんて見ても何も意味は無いと思いますが」
「謙虚ね」
「そんな所もいいわ!」
「聞いてた通り少し鈍感さんなのね。可愛すぎるわ!」
再び、周りのお姉様方からの言葉の連続
僕は何とかそこから逃げようとするも、四方八方、逃げ場がない。
困り果てていると、そこに、ルミエールお姉様がやってきた。
「はいはい皆、トーラス君が怯えてるわよ。会えて嬉しいのはわかるけど、落ち着いてね」
「会長すみません。突然、視界にトーラス君が写ったものですから、私達、暴走してしまいましたわ」
何とか僕はお姉様方の囲みから抜け出す事が出来た。
今、ルミエールお姉様が会長と呼ばれていた。
先程、お姉様方の一人が言われた会長とはルミエールお姉様の事みたいだ。
でもなんで会長なんだ?
まだ生徒会からは正式にルミエールお姉様が次期生徒会長になる事は発表されていないのになぁ。
そんな疑問を抱えながらも何とかリディアナの元にたどり着く事が出来た。
「トーラス、お疲れ様。大変だったね」
「本当にね。誰のせいでこうなったかは明確だけどね」
僕はルミエールお姉様の方を見ながら言った。
「リディアナちゃんのために囮になったんだからいいじゃないの」
「ルミエールお姉様が一声かけてくれたらよかったじゃないですか!それにルミエールお姉様、面白がってましたよね?」
「そんな訳ないじゃない。私はリディアナちゃんを救おうと必死だったのよ。偶々、トーラス君が居るのを見つけて気がついたら、トーラス君の名前を口に出してたのよ」
「もういいです。これ以上言っても、無駄なようですから。それより僕、先程のお姉様方の一人がルミエールお姉様に対して、会長というのを聞いたのですが、どういう事ですか?」
僕の言葉にルミエールお姉様はすごく動揺していた。
「私、クラスメイトから会長っていうあだ名で呼ばれてるのよ!」
「本当ですか?」
「本当よ! 信じて!」
ルミエールお姉様の動揺から確実に嘘をついてると思ったので、標的をルミエールお姉様から少し離れた所に居た男子生徒に変更した。
「すみません。先輩に質問があるんですが?」
「トーラス君だったね。何だい? 僕に答えられる事なら答えるよ」
「普段、先輩やクラスメイトの人達ははルミエールお姉様の事を何てお呼びになっているのですか?」
「普通に名前で読んでるよ」
「そうなんですか。ありがとうございます」
僕は情報を掴み、ルミエールお姉様の元に戻った。
「クラスメイトの方に確認したのですが、ルミエールお姉様は普通に名前を呼ばれているみたいなんですが?」
僕がルミエールお姉様を問い詰めていると、一人、女性が歩み寄ってきた。
「トーラス君、これ以上は勘弁してあげてちょうだい。私が話してあげるから」
「わかりました。すみません先輩は?」
「ごめんなさい!私はエリーゼって言います。そこにいるルミエールの友達です」
「エリーゼ先輩ですね。了解しました。早速、説明お願いしてもよろしいですか?」
「わかったわ。トーラス君はあなた自信にファンクラブがあることを知っているかしら?」
「恥ずかしながら、知っています。」
そうなのだ。なぜか僕にはファンクラブがあるみたいなんだ。本当に謎なんだけど。
「なら話が早いわね。ルミエールがそのファンクラブを作ったのよ。だから、創設者としてファンクラブ会長を務めているのよ」
えっ! ファンクラブを作ったのがルミエールお姉様だって!
僕はゆっくりとルミエールお姉様の方を見た。
すると、ルミエールお姉様はいきなり土下座して、説明を始めた。
「ごめんなさい。最初は友達同士でトーラス君の成長を見守る会みたいなものを作ったの。しかし、武術大会でトーラス君の勇姿を見た生徒が噂を聞き付けて、次々に入会してきたの。あれよあれよという間にすごく大規模になっちゃってファンクラブになっちゃったのよ。不可抗力だったの!」
なんか土下座しているルミエールお姉様を見ていると、どうでもよくなってきた。
本当はどうでもよくはないけど……
どうしようもないが正しいかな
「ルミエールお姉様、立ってください。僕自身すごく恥ずかしいですが、嫌われるよりは好かれている方がいいと思いますので、これからも僕に迷惑がかからなければ、存続していただいても大丈夫ですから」
「本当に? これからはトーラス君ファンクラブ『トーラス君を愛でる会』はトーラス君公認って事でいいの?」
「何ですか、その恥ずかしい名前は! もうどうとでもしてください」
僕はもうヤケクソだった。
なんだか疲れたよ。
反論する気力も湧いてこない。
「リディアナ、帰ろう。少し疲れたよ」
「御愁傷様。私も何だか疲れたわ。お兄様、ノアール生徒会長から伝言があるんだけど今、いい?」
「何だい?」
「先日、クライブ先輩が生徒会メンバーを除籍されました。ですので新たにお兄様に生徒会に入ってほしいのだけど」
「いいよ!」
「いいの?」
「断る理由が無いんだけど」
「お兄様はクライブ先輩の後釜として、生徒会入りするのが嫌なのでは無いの?」
「誰から聞いたの? そりゃあバカ王子は嫌いだけど、何とも思わないよ」
「そうなんだ。なら明日の放課後に生徒会室に来てもらっていい?」
「いいよ」
「それじゃあ今日は私達、帰るから。また明日ねお兄様!」
「ああ。また明日ねリディアナ!」
ここに来た目的も果たし、後は帰るだけだ。
リディアナは最後にルミエールお姉様に向かって言った。
「もう当分の間、ルミエールお姉様と仕事以外で喋りませんから! ルミエールお姉様のうそつき!」
リディアナが言い終わると、一緒に部屋を後にした。
本当に今日は疲れる一日だった。
でも、リディアナのお兄さんが生徒会入りを受諾してくれてよかった。
いろいろとゴタゴタして、ちゃんと挨拶出来なかったから明日しっかり挨拶しよう!
今日はもう、ゆっくり休みたいよ。
完全にリディアナのお兄様の存在感ゼロの回になってしまいました。
きっと、次で輝いてくれると思います。




