怒りのリディアナ
「リディアナさんがそこまで驚くとは思わなかったわ」
僕も本当にびっくりだ。お兄さんが四学年にいるとは、リディアナから聞いていたけど、今まで会う機会は無かった。
「優秀なのは知っていましたが、まさか、クライブ先輩のせいで生徒会メンバー入りを阻まれたのがお兄様だとは思っていませんでした。お兄様はそんな話、一度もしてませんでしたし」
「デュークの優秀さは凄いわよ。あのアホ王子がいなくて、生徒会入りを果たしていたら、多分、次期生徒会長は私では無く、デュークだったと思うわよ」
想像以上に凄い人みたいだ。
でも考えてみたら、リディアナのお兄さんでマアサの子供だもんな。当然だな。
「お兄様ってそんなに凄かったんですね。びっくりです。というか、ルミエールお姉様はお兄様と同じクラスなんですから、直接言っていただく訳にはいかないんですか」
「無理ね。デュークの性格上、死んでもアホ王子の後釜で生徒会入りはしないと思うわ。妹のあなたが一番、わかってるんじゃない?」
「お兄様は頑固者ですからね。それじゃあ私にも無理じゃないですか?」
「いけるわよ。デュークの妹好きはクラスで有名ですもの。リディアナちゃんが生徒会に入って! って言ったらイチコロよ」
「クラスで有名って何ですか? お兄様は一体、クラスで何を話しているですか?」
「聞きたいの? 僕の妹は世界一可愛いとか、僕の妹は本当に優しいんだとか、僕の妹は頭も良いんだ。でも元から良かった訳ではないんだ。努力をいっぱいして学園の生徒会入りを果たしたんだ。努力家なんだよ。凄いだろ。とか・・」
「もういいですから。わかりました。私がお兄様を説得しますから」
リディアナは顔を真っ赤にして、ルミエールお姉様にもう言わないでと懇願していた。
「まだ、沢山あるのに」
「勘弁してください」
「こらこらルミエール、もうそろそろ、リディアナさんをおちょくるの止めなさい」
「はーい」
「それでは、リディアナさん、お兄様の説得、お願いしますね」
「わかりました。明日にでも行ってきます」
その後は会議が行われ、解散となった。
その帰りにリディアナから相談を受けた。
「トーラス、明日、お兄様の所に一緒に行ってほしいんだけど、いいかな?」
「もちろんいいけど、どうして?」
「もし、私が説得出来なかったら援護してほしいの。後、純粋にお兄様にトーラスを紹介したいなぁと思って!」
「嬉しいよ。僕もずっと、リディアナのお兄さんに挨拶したいと思ってたんだ!」
「良かった。じゃあ、多分、明日になると思うけど、よろしくね」
「わかったよ」
次の日、教室に行くと、いつもの明るいリディアナはそこに無く、ため息をついていた。
「おはようリディアナ。ため息なんかついて、どうしたの?」
「おはようトーラス。実は昨日、フィオーネに手紙をお兄様に持っていってもらったの。そしたら今日、お兄様の教室に来て欲しいって返事が来たの」
「そうなんだ。それで何でため息なんかついてるの?」
「だってもし、教室にお兄様以外の生徒が居たらと思うと、恥ずかしくて行きたくないの」
「大丈夫だよ。きっとお兄さんは緊張しないように、一人で会ってくれるはずだよ。お兄さんを信じようよ」
「そうよね。わかった。お兄様を信じるわ!」
何とかいつも通り、明るいリディアナに戻す事が出来たみたいだ。
しかし、放課後、リディアナのお兄さんへの信用は地に落ちる事になるのだった。
放課後、僕とリディアナは少し時間を置いてから教室へと出発した。
「結構時間経ってるけどお兄さんは大丈夫かな?」
「大丈夫だと思う。時間は指定してないから。私が行くまで教室に居てねって返事出したから」
「そうなんだ。なら安心だね」
そして、教室の前に到着した。
リディアナは唖然としていた。
なぜかというと、教室の中には沢山の生徒が残っていたからだ。
というか、ほぼクラス全員、いるんじゃないかな。
「きゃあー! あなたがデューク様の妹ね! 本当に可愛いわ。デューク様の言われていた通りね。デューク様にそっくりね」
たくさんの生徒がリディアナを囲んでいた。
リディアナは恥ずかしそうに、下を向いていた。
そのまま、リディアナは教室の中に連行されて行った。
僕は突然の出来事で反応する事が出来なかった。
教室の中を見ると、リディアナが連行された先に面影がリディアナに良く似ている生徒を発見した。
多分、あの人がリディアナのお兄さんだろう。
クラスにいる生徒は皆、リディアナに夢中だったので、僕はこっそり教室に入った。
すると、リディアナの怒りに満ち溢れた声が聞こえてきた。
「お兄様、一人で教室で待っててねって返事したよね。どうしてこんなに人がいるの?」
「そんなの決まってるじゃないか。クラスの皆に僕の大切な妹を紹介したいからにきまってるだろ」
「ルミエールお姉様から聞いたよ。お兄様、クラスの人に私の事、過剰に美化して話してるらしいじゃないですか」
「何も美化なんてしてないよ。リディアナの素晴らしさを有りのまま語っただけだよ」
「もういい。お兄様のバカ! 大嫌い!」
リディアナはお兄さんにそう言うと、僕の方に歩いてきた。
「トーラス、行こう」
「リディアナ、まだ本題を話してないよ。いいの?」
「いいの。そこで笑ってるルミエールお姉様にお任せするから」
リディアナの指した先を見ると、笑っているルミエールお姉様がいた。
「リディアナちゃん、待って! 機嫌なおして。トーラス君も止めてよ」
ルミエールお姉様はなぜか教室にいる生徒に聞こえるように喋った。
すると、教室の中にいる生徒が僕の名前を呟き始めた。
「トーラス?」
「トーラス君?」
「まさかトーラス君がいるの?」
「どこ? どこにいるの?」
「あそこよ! 妹ちゃんの横!」
「きゃあー!」
「トーラス君よ!」
いきなりの反応に僕は驚いた。
僕は再び、ルミエールお姉様の顔を見た。
すると、作戦成功! っていう顔をして、僕の方を見ていた。
僕はやばい! と思ったが、思うのが一瞬、遅かった。
気がついた時には周りを囲まれていたのだった。




