学園の派閥
休みも終わり、僕は二学年に進級した。
年越しは皆と思いっきり楽しんだ。
無事に友達全員、Aクラスに残留を果たした。
二学年になり、後輩が入ってきたけど、まだ実感が湧かない。
というのも、一学年の生徒の教室が他の学年の教室と違う棟にあるからだ。
なぜ違うのかというと、一学年の間で同級生同士でしっかりとコミュニケーションを取って、交友関係を構築してほしいという学園側の思いかららしい。
なので、あまり交流が無いのだ。
交流が始まるのは多分、長期休み明けからだろう。
生徒会でも、長期休み明けに一学年のメンバーが入ってくるしね。
そんなこんなで二学年になってから平穏な学園生活をおくれていた。
そう、今日、生徒会室に行くまでは。
今日はノアールお姉様から重要な発表がありますと言われている。
僕とリディアナは何だろう? とワクワク半分怖さ半分で生徒会室に向かった。
生徒会室に着くと、ノアールお姉様とルミエールお姉様以外のメンバーが部屋にいた。
すごく珍しい。いつも、お二人は僕より先に生徒会室におられる事が多い。
椅子に座ってリディアナと話をしていると、ノアールお姉様とルミエールお姉様が入ってきた。
「遅くなってごめんなさい。会議を始めましょう!」
ノアールお姉様がそう言うと、二人は着席して、会議がスタートした。
「本日は会議の前に発表したい事があります。それは次期生徒会長についてです」
ノアールお姉様の生徒会長という言葉にクライブ先輩がびくっと反応した。
この学園の生徒会長は生徒の投票で決めるわけではなく、指名制である。
つまり、ノアールお姉様が指名した人が次の生徒会長になる。
基本的に五学年の二名の中から選ばれる。
つまり、クライブ先輩とルミエールお姉様のどちらかということだ。
普通なら第一王子であるクライブ先輩が選ばれるるんだろうけど、僕はそれが絶対に無いと断言出来る。
というか、絶対にノアールお姉様が指名しないだろう。
もし、仮に万が一にでも、クライブ先輩が生徒会長になったら学園がどうなってしまうのか、考えただけでも恐ろしい。
俺様至上主義だし、身分が低い者を見下すし、頭は空っぽだし、
到底生徒会長が務まるとは思えない。
それに引き換え、ルミエールお姉様は可愛い物が関わらなければ、とても優秀だ。身分の低い者を見下したりなんて決してしないし、リーダーシップもある。
アルバート先輩との件で学園での人気も高い。
「ルミエールを次期生徒会長に任命したいと思います」
その言葉に拍手が起こったが、やはりというべきか、クライブ先輩が反論してきた。
「ふざけるな! なぜ、ルミエールなんだ。この国の第一王子である俺様が生徒会長を努めるのが当然だろう」
「何もふざけていないわ。私はしっかりと考えた上で次期生徒会長にルミエールを選びました」
「俺は次期国王だぞ! その俺様が学園で生徒会長の任につかないという汚点を付けさせる気ですか? いつから姉上はメルクリオの派閥に加わったのですか」
本当にため息しか出ないな。
自分に悪い所が一つも無いと本気で思っているのだから。
「あなたが何を思おうと勝手だけど、私はあなたの派閥にも、メルクリオの派閥にもついたつもりはありません。私は単純にあなたが生徒会長になれるだけの能力を有していないと思ったから判断しただけです」
「俺のどこが不足しているというんだ!」
「あなた、本気で言っているの! 自分の身分をひけらかし、身分の低い者を蔑み、あまつさえ無理やり先輩メンバーの座に就いておきながら、武術大会でぼろ負けしたくらいで生徒会活動を放棄するような人間には決して務まる仕事ではありません!」
「それは姉上の主観でしょ! ラストン、サラーナ、俺はそんな人間か?」
クライブ先輩の言葉に二人は仕方なくといった感じで『いいえ』と答えた。
王宮で第一王子派と第二王子派が争っているように、この学園にもそれが存在する。
貴族の家は今、第一王子派、第二王子派、中立派の三つに別れている。
なので、学園でも、第一王子派の家の子供はクライブ先輩には逆らえないのだ。
今、返事をしたラストン先輩とサラーナ先輩は家が第一王子派に属している訳だ。
「ほらみろ! 姉上一人の意見で決めるのはおかしいだろ!」
「なら、投票でもしてみる? 今、10名、生徒会メンバーが居るわ。私は投票しないから9名で投票して、5票以上獲得した方が生徒会長。それでどうかしら?」
「ふざけるな。そんなの俺が不利だろ。メルクリオは絶対にルミエールに入れるだろし、アルバートはルミエールの恋人だろうが!」
「それでも、ルミエールの票を含めて、たったの三票でしょ。あなたがこれまで示してきた行動が本当に生徒会長に相応しいというのなら他の皆はあなたに票を入れるんじゃないのかしら」
今、現状ではクライブ先輩は本人、サラーナ先輩、ラストン先輩の三票。
ルミエールお姉様は本人、アルバート先輩、メルクリオ先輩の三票。
まぁ、メルクリオ先輩ならどちらにも入れないとかありそうだから断定は出来ないけど。
残りはレミーユお姉様、リディアナ、僕だ。
僕を含めて三人共の家は中立派だし、クライブ先輩に入れる事はありえない。
つまり、投票は始まる前からルミエールお姉様の勝ちで決まっているんだ。
「わかった。投票を受け入れる」
「それでは紙を配るから皆、そこに名前を書いて、この中に入れて頂戴。くれぐれも、白紙は駄目だからね」
最後の言葉は完全にメルクリオ先輩に対しての言葉だろう。
投票も終わり、ノアールお姉様が紙を開いていく。
結果は予想通り、ルミエールお姉様六票。クライブ先輩三票だった。
「これで満足かしら?」
「何かの間違えだ。さては姉上、不正をしましたね!」
「そんな事はしていません。現実です」
「怪しいと思ったんだ。今日、ルミエールと一緒に生徒会室に来たよな。二人で裏工作でもしてたんだろ。金か? 金でも中立派の三人にでも渡したんだろ。汚い奴め。そんな女に生徒会長は相応しくない」
もう駄目だ。このバカ王子には何を言っても、無駄のようだ。
本当に呆れを通り越して、憐れにすら感じるよ。
「クライブ先輩がどう思おうと自由ですが、僕はお金なんて受け取っていませんし、ルミエールお姉様に入れるように指示もされていません。僕は僕の意思でルミエールお姉様に入れました。ルミエールお姉様の方が生徒会長に相応しいと心の底から思っているからです」
「私もトーラスと一緒です。やましい事は一切、ありません。私もルミエールお姉様の方が生徒会に相応しいと思います」
「下級生二人が全部、言ってくれましたから言うことはありませんが、もし、仮にクライブ先輩が生徒会長になったら私は生徒会メンバーを止めます。生徒会がメチャクチャになるのは目に見えてますからね。クライブ先輩はもう少し自分の事を見つめ直された方がよろしいと思います」
僕らの言葉を聞いても全く、納得していない様子だった。
「あなたがどれだけ足掻こうともう、何も変わりませんよ。次期生徒会長はルミエールで決まりです。私はあなたを甘やかしすぎたのかもしれません。不服なら生徒会を去りなさい。あなたは元々、正式に生徒会メンバーに選ばれた訳ではないですし、これからのルミエールを中心にした生徒会にあなたはいらないわ!」
「ああ、そうかよ。わかったよ! こんな糞みたいな生徒会、こっちからお断りだよ。ラストン、サラーナ、行くぞ!」
「待ちなさい! 行くならあなた一人で行きなさい。ラストンとサラーナは正式な生徒会メンバーです。あなたにその二人を辞めさせる権限はありません」
「そんなの関係ねぇよ。こいつらの家は俺の派閥だ。つまりは手下だ。俺の命令に黙って従う立場の人間なんだよ」
「あなたはどうして、そんな考えしか出来ないの! それならしょうがないわね。はっきりあなたに引導を渡してあげるわ。ラストンとサラーナの家はもう、あなたの派閥に属してはいないわよ」
「えっ!」
ノアールお姉様の言葉にクライブ先輩は凄く間抜けな顔をしていた。
「何を馬鹿な事を言うんですか。やっぱり姉上は少しおかしくなっています。病院に行かれる事をおすすめします」
「おかしくなってはいないわ。正式に昨日、二人の家はあなたの派閥から中立派に移ったのよ。お母様にでも確認してみたら。だから二人共、心配しなくて大丈夫よ」
ラストン先輩とサラーナ先輩はとても安心しているようだった。
お二人も好きでクライブ先輩の言うことを聞いていたわけではないのだろう。
「もうここにあなたを助けてくれる人間はいないわよ。わかったら出ていきなさい!」
ノアールお姉様の最後の一撃でクライブ先輩は一人で生徒会室を出ていった。
「ラストン、サラーナ、今まで愚弟が迷惑をかけたわね。もう大丈夫だから! 決してあなた達の家には害が及ばないようにしたから」
ノアールお姉様の言葉にラストン先輩とサラーナ先輩は涙を流して感謝の言葉を言っていた。
「皆もいろいろと迷惑かけたわね。次期生徒会長はルミエールです。これから長期休みに入るまでに引き継ぎ作業を行っていきます。皆もルミエールを支えてあげてね。後、クライブの抜けた所には四学年の男子生徒首席の生徒に入ってもらいます。出来れば、リディアナさんにその人の元に行ってほしいんだけど、いいですか?」
「もちろん、構いませんが、なぜ私なんですか?」
「それはその生徒があなたのお兄様だからよ!」
「えっ!!」
ノアールお姉様の言葉に部屋中にリディアナの驚きの声が木霊したのだった。
次の話でリディアナのお兄様が登場です。
確か、リディアナとは三歳差だったはずです。
間違ってたらすみません。




