襲来
もう少しで学園に入学してから丸一年になる。
そんなある日、生徒会室に二人の訪問者が現れた。
「やっほー! 皆、元気にしてたかい!」
真っ先に部屋に入ってきたのはシャルロッテ先輩だった。
「シャルロッテ、君はもう少し落ち着きなさい! 皆さん、久しぶりですね」
次に入ってきた人は僕の見覚えのある人だった。
名前は知らないけど、武術大会の時、アレックスを捜索していた時に出会った人だ。
「シャルロッテお姉様、テオドール先輩、やっと生徒会室に来てくれましたね。私がテオドール先輩から会長の職を継いでからどれたけの時間が経ったと思ってるんですか! もうすぐ先輩達は卒業ですよ」
「違うんだよ。私はノアちゃんに毎日でも会いたかったよ。でもそこの朴念仁のテオドールが生徒会室に行ったら駄目だって言うから」
「なぜですか?」
「ノアールはとても優秀ですからね。私達がいなくても大丈夫だと思いまして。私達がいると、クライブとメルクリオが生徒会室に寄り付かなくなりますからね」
「それでも少しくらいは顔を出して欲しかったです」
お二人がいると、王子二人が寄り付かなくなるって一体、何をしたんだろう?
「そういえば、一学年の二人は初対面ですよね。改めてテオドール・セスティアーゼだ」
「私は二人とは武術大会で会ってるけど、改めてシャルロッテ・フォールビアだよ!」
僕とリディアナは二人の挨拶を受けて深々と頭を下げてからよろしくお願いしますと言った。
「二人とも、礼儀正しくていい子達のようだね。安心したよ。それでノアール、クライブの姿が見えないがどこかな?」
「クライブは武術大会が終わってから一度も生徒会室に来ていません」
そうなのだ。クライブ先輩はシャルロッテ先輩にぼろ負けしてから生徒会室に姿を表していない。
「なんだと! クライブから来ない理由は聞いているのか」
「私やルミエールが聞きましたが、一言、ほっといてくれ! と。多分、シャルロッテお姉様にぼろ負けしたのを未だに引きずってるんだと思います」
あれから何ヵ月経ってると思っているんだ。
クライブ先輩、豆腐メンタルすぎるよ。
「クライブ君、まだ引きずってるの! もう少し手加減してあげたらよかったかなぁ」
「情けない。王族ともあろう者が試合に負けた事を引きずって生徒会活動を放棄するとは、しかも、クライブは無理やり生徒会メンバーになったというのに」
テオドール先輩はクライブ先輩の情けない状況を知り、苛立ちまくっていた。
しかし、テオドール先輩はすごいなぁ。
いくら元生徒会長とはいえ、第一王子のクライブ様に遠慮の一つも無い感じだ。
「トーラス君もリディアナさんもびっくりしてるでしょ」
僕とリディアナはレミーユお姉様の言葉に頷いた。
「二人はテオドール先輩の家名、どこかで聞いた覚え、ないかしら?」
テオドール先輩の家名?確かセスティアーゼだった。セスティアーゼ……!
思い出した。この学園の学園長もセスティアーゼだ。
と言うことはテオドール先輩は学園長のご子息?確か学園長は60歳だったはずだから孫かな?。
「もしかして、テオドール様は学園長の……」
「そうよ。孫になるわね。生徒会長達とは親戚同士になるわね」
親戚だから第一王子に対しても容赦が無いのか、納得だ。
「クライブの件は了解した。私、直々に出向こうじゃないか」
テオドール先輩の言葉の後、二つ横の席から小さな笑い声が聞こえた。
シャルロッテ先輩だ。
「私も行く! 一応、クライブ君を打ち負かした張本人だしね」
「シャルロッテお姉様は止めてください!」
「ノアちゃん、何でよ!」
「シャルロッテお姉様はいつの間にかクライブに止めを刺してそうなので」
「そんな事しないよ!」
「なら、クライブに会って何と言うつもりですか?」
「私に負けたくらいで落ち込まないでよ。私より強い人なんてこの世に五万といるんだよ! かな?」
その後、何とかノアールお姉様が説得して、行くのを断念してくれた。
「クライブの事はとりあえず、置いておこう。それでメルクリオ、君は何を他人事のように笑っているのかな?」
テオドール先輩の言葉にメルクリオ先輩は固まっていた。持っていた本も落としていた。
「私が部屋に入ってから、ずっと、本を読んでいたな。目を合わせることもせずに」
そうなんだ。クライブ先輩もひどいけど、メルクリオ先輩もびとい。
メルクリオ先輩は一応、生徒会室には来るけど、ずっと本を読んでいる。
意見とかも一切出さないし、会議内容なども一切聞いていない。
「本を読むことは悪いことじゃない。しかし、時と場合を考えなさいと昔から私は君に言っているよね。まさかあれだけ言って理解していないとは私は驚きだよ。君は王族である自覚を持ちなさい。情けない! クライブに続き、メルクリオもこのていたらく」
メルクリオ先輩は耐えられなくなったのか、部屋を出ていってしまった。
テオドール先輩は追う事はせずに、二学年のもう一人の生徒会メンバー、サラーナ先輩にいつも苦労をかけて申し訳ないと謝っていた。
サラーナ先輩は逆にテオドール先輩に謝らせてしまい申し訳なさそうにしていた。
「はぁ。王子二人がこんなんでは、国の行く末が心配になってくるな。ノアールはよくここまで立派に成長したね」
「ありがとうございます。クライブとメルクリオも可哀想ではあるんですよ。小さい頃から王になるのよ! と母親から言われ続けて成長しましたから、その影響でクライブはあんな性格に、逆にメルクリオはプレッシャーに押し潰されてしまってあのような性格になってしまいました。私もある人との出会いがなければ、どうなっていたかわかりません。二人にも良い出会いがあれば、いいんですがね」
「もう! 辛気くさい話は終わり。もっと楽しい話をしよう!」
「そうだな。すまない。それにしても、シャルロッテが空気を読むなんて珍しいな」
「失礼な。私だって空気の一つや二つ読みます」
シャルロッテ先輩は頬を膨らませてプンプンしていた。
それを見て部屋中に笑いが起き、雰囲気も一気に良くなったのを感じだ。
その後は、先輩達の昔話をシャルロッテ先輩とテオドール先輩から沢山、教えてもらった。
楽しい時間を過ごした後、お二人は生徒会室を出ていった。
数日後、生徒会室に行くと、クライブ先輩の姿があった。
何かに怯えているようだ。
多分、テオドール先輩が何かしたのだろう。
もうすぐ六学年の先輩達は卒業だ!
何故だかわからないけど、シャルロッテ先輩もテオドール先輩もまだ会ってから間もないけど、これからも長い付き合いになりそうな気がするんだ。




