運命に導かれて
「ルミエールはほっといて話を進めましょう」
えっ! ほっとくの。ルミエールお姉様、様子が変だけど、大丈夫かな?
「今回、この場でトーラスの身分を明かしたのはいざという時に皆さんにトーラスを助けて欲しいからです。私はあと一年で卒業してしまいます。そうなった時、トーラスを王子だと知っていた方が対処しやすいと思います。是非、私の大切な異母弟であるトーラスの力になって欲しいのです!」
ノアールお姉様はそう言うと、深々と皆に向かって頭を下げた。
「会長、頭を上げてください! 頼まれなくたって、トーラスから助けを求められたら全力で助けます。友達ってそういうものですよね」
「ありがとう、ロイス君」
ここでやっと頭が混乱していたレミーユお姉様が復活してきた。
ルミエールお姉様は未だにおかしいけど。
「そういえば、会長はトーラス君の事を知ってるのはわかるけど、リディアナさんとアルバート先輩はどうして知ってたんですか?」
「僕は武術大会決勝の後に聞いたんだよ。僕が憧れている人が偶然、トーラスの師匠でね。いろいろと話している内に、知ったんだよ」
「私の母とトーラスのお母様のリディアナ様が学園時代からの親友でして、王宮から第三王子の話が聞こえてこないのを心配した母が王宮に行って、トーラスの専任侍女を一年間、務めていたんです。私は帰ってきた母から聞かされました。第三王子が私と同じ年齢であること。素晴らしい人だという事。でも、母は名前や容姿などは一切、教えてくれませんでした。私は学園でずっと探していて、トーラスが第三王子じゃないかと思いました。本人に聞いてみると、案の定という訳です」
「なるほどね。二人の経緯は理解したわ!でもリディアナさんとトーラス君はなんだか、運命にでも導かれているみたいね」
「何ですか、運命って!」
「だって、リディアナさんは顔も容姿も知らないのにトーラス君の事を第三王子じゃないかと思ったんでしょ! なんだか運命の赤い糸が二人を導いたみたいじゃない! 二人は出会うして出会い、友達になり、仲を深めていった」
レミーユお姉様にリディアナは顔を赤くしていた。
「レミーユお姉様、これ以上は勘弁してあげてください。アナの顔が沸騰しちゃいますよ」
「そうね」
「でも、そんな事情があるなんて、大親友の私も初耳なんですけど」
「だってアンジェに言ったら、絶対にからかうじゃない! 学園に会いたい男の子がいるなんて言ったら」
「そうかもね。でも残念だわ。私はトーラスからアナに正体を明かしたんだと思ったのに」
「何でそう思ったのよ」
「やっと、朴念人の二人がお互いの気持ちに気づいたのかと思ってワクワクしてたのに」
「お互いの気持ちって」
「あら、どうしたのアナ? 顔、真っ赤よ! まさか気付いてるの?」
アンジェリカはそう言うと、僕の顔を見た。僕は咄嗟に目を逸らしてしまった。
「まさか、そういう事なの!」
「アンジェリカ、どういう事ですの?」
「もう、イザベルも鈍いわね! この二人の態度は間違えないわ。あなたたち、恋人同士になったわね!」
アンジェリカの言葉に僕もリディアナも顔を真っ赤にした。
「やっぱり。何で言ってくれないのよ!」
「だって、皆に言うの恥ずかしかったし、皆、びっくりすると思ったから」
リディアナがそう言うと、アンジェリカは呆れた顔をして言った。
「びっくりする訳ないじゃない。私がアナの友達、何年やってると思ってるの。分かってたわよ。アナのトーラスへの想いは」
「えっ! いつから?」
「最初からよ。強いて上げるなら、あなた達が初めて街にデートに行った前くらいよ」
「デート? 買い物でしょ」
「あのね。男女で街に買い物に行くことをデート以外なんて言うのかしら」
「えっ! 私、その頃からトーラスが好きだったの?」
「そうよ。多分、トーラスもね。お互い、一目惚れなんじゃないの。気付いたから皆に協力してもらって初デート大作戦を仕組んだのに! その後は中々、進展しないから大分、ヤキモキしたわよ。でも、想いが通じ合って良かったわ。大親友として、心から言うわ。おめでとう!」
「ありがとう」
僕は思い出していた。
あの時の四人の生暖かい目を。
まさかあの買い物が仕組まれていたとは。
リディアナはもうこれ以上赤くならないんじゃないかってくらい顔を赤くしていた。
「ごめんね皆。もう少し心の整理が出来たら話そうと思っていたんだ」
「あら、そうなの。それでトーラスはアナの事がどれくらい好きなのかしら?」
「世界で一番、大好きだよ! これからもリディアナの隣で共に歩いていきたいんだ!」
「そう。トーラスの気持ちはわかったわ。アナをよろしくね。泣かせたらただじゃおかないんだからね!」
「肝に命じるよ」
リディアナはもう、限界そうだった。
何か話を変えないと! 僕は周りを見渡して、糸口を探った。
すると、ある二人を見て、思い浮かんだ。
僕らだけ、恥ずかしい思いをするのは不公平だよね。




