優良物件
武術大会が終わってから二週間の時が経過した。
怪我をしていたロイスもほとんど回復して、今は普通に学園に通っている。
何だか最近はいろんな人から話しかけられる事が増えた気がする。
そして、本日、放課後、僕とリディアナは一緒に生徒会室に向かっていた。
今日は生徒会の仕事がある訳ではない。
ならなぜ、向かっているのかというと、報告を聞くためだ。
武術大会で僕の本当の身分をリディアナ、ノアールお姉様、アルバート先輩が知った。
その事をノアールお姉様を通じて宰相に報告してもらったのだ。
そして、今日、ノアールお姉様から宰相からの返事がきたから、生徒会室に来てほしいと連絡がきた。
部屋に入ると、ノアールお姉様、アルバート先輩がいた。
「いらっしゃい。早速で悪いけど、宰相から報告内容を話します」
「はい、お願いします」
「要点を纏めると、三つね。一つ目は二人がトーラスの正体を知った事については誰かに話したりしなければ、問題ないとの事よ。二つ目はトーラスはこれまで通り、第三王子としての身分を隠して、学園生活を送るようにということよ。そして、三つ目は武術大会の出来事によって全校生徒のトーラスへの見方は劇的に変わったわ。それにより、私やアルバート君、リディアナさん、だけでは、対処出来ない時がくるからもしれないから、信頼出来る近しい者達にはトーラスの正体を明かすことを認めるとの事よ。以上よ。何か質問はあるかしら?」
やはり、武術大会で優勝するというのは、インパクトがあるみたいだ。
これで、アレックス、アンジェリカ、ロイス、イザベル、カルロスには僕の正体を明かしてもよくなったけど、皆はどう思うだろうか?
リディアナは元々、僕の事を第三王子ではないかと思っていたからいいけど、他の皆は僕が第三王子だなんて夢にも思ってないだろう。
「質問はないです。良かったです。バレたからには学園を去れと言われたらどうしようと思っていましたし、リディアナ以外の皆にも僕の正体を明かしてもいい許可もおりましたし!でも、やはり、武術大会で優勝するのって全校生徒にすごく影響力があるんですね!」
僕は真面目に答えたはずなのに、三人とも、呆れたような顔をしている。
「もちろん、優勝した事は一つの要因ではあると思うけど……」
「アルバート先輩、トーラスにはもっと、直球で言わないとダメですよ。いい、トーラス。もちろん、一学年で武術大会を史上初めて優勝した事はすごい事よ。沢山の生徒があなたに対して一目置いたはずよ。でも、他にもたくさん、やらかしたでしょ。トスティード先輩をボコボコにして、貴族の生徒が平民の生徒に手を出しにくい環境を作ったわ。そして、何より、一番は、あなたの顔よ。今回の事件で学園の女子生徒は知ってしまったのよ。トーラスという超優良物件の事をね」
「優良物件?」
「トーラスの表向きの身分はロンベスター子爵家の跡取り息子。生徒会入りする頭脳、武術大会で優勝する武力、性格も良く、そして絶世の美貌。子爵、男爵、伯爵家の女子生徒にとって、トーラスは最高のパートナー候補なのよ。トーラスは知らないと思うけど、武術大会後にあなたのファンクラブが設立されたのよ。まだ、上級生のお姉さま方がトーラスの成長を見守るために設立しただけだけど、今後、どうなっていくかは私にはわからないわ」
リディアナの言葉に僕は茫然とした。
パートナー候補? 僕にはリディアナという心に決めた人がいる!
ファンクラブ? 訳がわからない!
「パートナー候補って、僕にはリディアナいるから、間に合っているよ!」
僕は焦って、口を滑らせてしまった。
やばい! と思った時にはもう遅かった。
「トーラス、リディアナさん、今の言葉の意味を教えてくれないかしら?」
「僕も興味あるな」
リディアナは顔を真っ赤にして、思考停止状態になっていた。
僕は泣く泣く、リディアナに告白した時の事を二人に話したのだった。
「あらあら、二人の仲がそこまで進展してるとは思わなかったわ!」
「なるほど、闘いの後、帰ってくるのが遅かったのはそういう事だったんだね。」
二人は薄ら笑いを浮かべて僕たち、二人を見つめていた。
「まぁ、相思相愛みたいだから私は何も言わないけど、一つだけ忠告するとしたら、絶対に友達以外に二人の仲をばらさない事ね。じゃないと、ファンクラブの人達にリディアナさんが何、されるかわかりませんからね」
「私、想像しただけで、怖くなってきました」
「ノアールお姉様、忠告ありがとうございます。気をつけます」
リディアナが落ち着くのを待ち、ノアールお姉様は僕に提案してきた。
「トーラス、あなた、他の友達に自分の正体を明かすつもりはあるのかしら?」
「悩んでいます。明かした時、どういう反応をされるか少し、怖いんです」
「私が言う事ではないかもしれないけど、多分、大丈夫だと思うわ。だって、皆は王子だからトーラスの側にいる訳ではないもの。トーラスの事が一人の人間として、大好きだから、一緒にいるのよ。だから、心配しないで。きっと、皆、受け入れてくれるわ」
「リディアナの言うとおりだね。ノアールお姉様、僕、皆に話します!」
「わかったわ。それで私から一つお願いがあるのだけど、聞いてくれるかしら?」
「はい」
「ルミエールとレミーユにもトーラスの事を話したいの」
「それは、なぜですか?」
「私は今、五学年、あと約一年で学園を卒業するわ。生徒会メンバーで知ってるのはリディアナさんとアルバート君だけ。二人だけでは何かあった場合、対処が取れないかもしれない。ルミエールとレミーユはとても信用出来るし、きっと、トーラスの手助けをしてくれるわ。どうかしら?」
「わかりました。ルミエールお姉様とレミーユお姉様に話していただいて大丈夫です。僕もお二人の事は信用しています。素晴らしい方たちですし」
「そんな嬉しい言葉、ルミエールが聞いたら嬉しすぎて、失神するかもしれないわね」
「間違いないですね」
その後、どうせなら明かすタイミングを合わせようという事になった。
そして、全員が集まれる二週間後に、生徒会室に集まることになった。




