期待と不安
「それでは、最初に上級生の部、準優勝者、クライブ・ジルベスター選手にメダルが授与されます。ウィルフリート将軍、お願いいたします」
クライブ先輩は足取り重く、ウィル先生の元に歩いて行き、メダルを受け取った。
「クライブ様の攻めは本当に洗練されていて、とても良かった。しかし、攻めだけでは駄目です。クライブ様は守る力を付けてください。守りとは、自分を守るというだけではありません!自分以外の誰かを守る力でもあります。クライブ様はこの国の王子として、その力を育まれていかれる事を期待します。ご無礼を承知ですが、国のために言わせていただきました」
「……」
またもやクライブ先輩は無言だった。
一応は頷いてはいたけど。
「続きまして、上級生の部、優勝者、シャルロッテ・フォールビア選手にメダルが授与されます。国王陛下、お願い致します」
シャルロッテ先輩は緊張した様子もなく、国王陛下の元に歩いていき、メダルを受け取った。
「優勝、おめでとう。とても素晴らしいかった。私はこれからの時代は女性の活躍も重要だと思っておる。君は確か、六学年の生徒だったな。卒業後の進路は決まっているのか?」
「はい。軍に入ろうと思っております」
「そうか。努力を怠らず、自分の目指す道へ突き進みなさい!」
「国王陛下、ありがとうございます!」
シャルロッテ先輩と話をする国王陛下の顔はとても穏やかだった。
「続きまして、下級生の部、準優勝者、アルバート・ヴェストリアにメダルが授与されます。ウィルフリート将軍、お願いします」
アルバート先輩はすごくガチガチみたいだ。
無理もない、憧れのウィル先生からメダルを授与されるのだから。
先輩のメダルを受け取る手は震えていた。
「素晴らしい試合だった。攻めも守りも両方共、バランスがよく、読みも良い。君のこれまでの努力がうかがえる闘いだった。まだまだ君は強くなれる。今の気持ちを忘れずに精進を続けなさい!」
「ありがとうございます。一つお願いがあります。握手していただけませんか?」
「構わないよ」
アルバート先輩はウィル先生の手を握ると言った。
「ウィルフリート将軍、あなたはずっと、僕の憧れです。覚えておられないと思いますが、僕はウィルフリート将軍に昔、命を救われました。その時からずっと憧れていて、ウィルフリート将軍のようになりたいと努力して参りました」
「覚えているよ。確か、5年前だったね。あの時の少年が本当に立派になったな!」
ウィル先生の言葉にアルバート先輩は信じられないといった顔をして、泣きそうなのを必死に我慢していた。
「覚えていてくださったんですね。嬉しいです」
「君の更なる成長に期待しているよ!」
「はい!」
アルバート先輩の番が終わり、次は僕の番だ。
父を前にして、僕はちゃんと喋れるだろうか?
「最後になりました。下級生の部、優勝者、トーラス・ロンベスター選手にメダルが授与されます。国王陛下、お願い致します」
僕は今まで、感じた事の無いくらいの緊張を感じていた。
国王陛下の前に立つ。
顔を見ると、僕の事を真剣な目付きで見ていた。
そして、メダルを授与される。
「君の闘いは本当に見事であった。史上初めて一学年の身で武術大会を優勝した君に一つ、問おう。君のその力は何のためのものだね?」
いきなりの父の問に驚いた。
試されているのか?
でも父の問の答えは学園に入る前から決まっている。
「大切な人を守るためです。僕はたくさんの人からたくさんの物を貰いました。その人達にたくさん返したい。そして、その人達のように、助けを求めている人がいたら助ける事ができるように僕は努力したい。ただそれだけです」
「そうか。君の考えはわかった。君の思う道を進みなさい。努力しなさい! 君には成し遂げられるだけの力があるのだから」
父はそう言うと。一瞬だったが、笑みを浮かべた。
何だろう? この気持ちは
父がどういった意図で言ったのかはわからないけど、少しは期待してもいいかもしれない。
僕は見捨てられた訳ではないかもしれない。
これからも努力し続ければ道は拓けるかもしれない。
「以上で武術大会、全日程を終了しました。観客席の皆様、今一度、武術大会に参加した全選手に向けて拍手をお願い致します!」
こうして、転生して、記憶を取り戻して、初めての父との邂逅が終わった。
そして、武術大会も終了した。
いろいろあったけど、また一歩、前に進めたような気がするんだ。




