憧れの人
「リディアナ、今後の事なんだけど」
「今後の事?」
「本当はリディアナと今すぐにでも婚約したいと思ってる。だけど、今の僕の微妙な立場では難しいのは理解してる。だから、待ってほしいんだ。僕が自分の力で君を支えられるようになるまで。絶対に僕は確固たる地位を築いてみせるから!」
リディアナは『婚約!』って呟きながら、また顔を真っ赤にしていた。
「もちろん待つよ。トーラスの立場は重々承知してるもの。私はトーラスと恋人になれただけで今は満足だから」
「ありがとう。僕もリディアナと恋人になれて嬉しいよ。僕、頑張るから」
「違うわよ。一緒に頑張るでしょ!」
「そうだね。リディアナが側にいてくれると心強いよ」
今後の方針は決まった。
後は、努力あるのみだ。今はリディアナと恋人同士になれた事を純粋に喜びたい。
「トーラス、私たちが付き合い始めた事、皆に言う?」
「リディアナさえ良ければ、僕は言いたいと思う。皆、大切な友達だし、絶対にバレそうだし」
「そうね。アンジェは鋭そうだもんね」
「武術大会が終わったら、皆に話そう。後、ノアールお姉様にも話したいんだけど、いいかな?」
「構わないけど、どうして?」
「ノアールお姉様は学園でリディアナを除いて僕の本当の身分を知ってる唯一の人間だからいろんな事を相談すると思うから」
「なるほどね。その時は私も一緒に行っていい?」
「もちろん、いいよ」
そんなこんなで話も纏まって僕らは互いにリディアナは仕事に僕は上級生の部、決勝戦を見るためにリングそでに戻った。
本当は観客席で皆と見たかったけど、試合後に表彰式があるそうなので、僕とアルバート先輩はこの場所で待機となった。
リングそでに戻ると、アルバート先輩の姿を見つけた。
「トーラス、戻ってこないから心配してたんだ。どこか身体を痛めたりしたのかい?」
流石にリディアナに告白してましたとは言えないので適当に誤魔化した。
「身体は問題ないです。試合で力を出しきったので少し裏で休憩してたんです。心配していただいてありがとうございます」
「そうか。それなら良かったよ。もうすぐ試合が始まるから一緒に見よう!」
やっぱり優しいなアルバート先輩は
「はい」
「ところで、試合前の待機室で聞きたい事があると言った事を覚えているかい?」
「はい。僕も聞きたい事があります」
「だろうね。丁度いいから、今、話さないか」
「もちろんです」
「なら、単刀直入に聞こう。君の剣術の型は誰に習ったものだい? 君の闘い方にはとても見覚えがあるんだ」
やはり、先輩の質問はその事だった。
「察しの通り、僕の武術の師匠はウィルフリート将軍ですよ」
アルバート先輩はやはりなという顔をしていた。
「師匠かぁ! 羨ましな! 今度は君の質問をどうぞ」
「はい。僕も先輩の質問とほとんど一緒です。先輩は構えから闘い方までウィルフリート将軍と一緒です。先輩もウィルフリート将軍から手ほどきを受けたのですか?」
僕の質問を受けて、先輩は笑みを浮かべて言った。
「やっぱりわかるよな。なんたって弟子だもんね。最初に言っておくと、僕はウィルフリート将軍の弟子ではないよ。直接、指導を受けた事はないよ」
弟子でも指導を受けた訳でもない?ならどうしてあそこまで似ているのだろう?
「昔話をしよう。あれは僕がまだ10歳の時だった。父に連れられて王都に行く途中に野盗に馬車を襲われたんだ。もちろん護衛は連れていたけど、相手は多勢に無勢でね。僕はもう駄目だと思ったよ。でもそんな時、現れたんだよ。救世主がね。その方が野盗を全て倒して僕達を救ってくれたんだ。その人こそウィルフリート将軍なんだ。僕はその時、憧れたんだ! 野盗と戦う姿を見てそれから僕は武術に打ち込むようになってね。その時の戦い方が忘れられなくて、自然と僕も同じような戦い方になっていったんだよ。これで君の疑問は晴れたかな?」
「はい。ありがとうございます。充分過ぎるほど先輩の思いが伝わってきました」
「トーラス、もう一つ質問、いいかな?」
「はい」
「トーラスはどうやってウィルフリート将軍の弟子になったんだい?」
先輩は僕に包み隠さずに教えてくれた。
僕は悩んだ。僕がウィル先生に会ったのは王宮だ。いろいろ誤魔化せば大丈夫だけど、アルバート先輩に嘘をつきたくない。
第三王子という身分を隠して説明するのは難しい。身分を明かすべきか。
アルバート先輩は信頼出来る人だ。絶対に秘密をばらす人じゃない。
周りには誰もいないし、観客の声援がすごいから観客席までは絶対に聞こえない状況だ。
僕は決心した。
「アルバート先輩、今から僕が言うことは他言無用でお願いしたいのですが、よろしいですか?」
僕は真剣な目でアルバート先輩を見て言った。
「わかった。決して家名に誓って他言しないと誓う」
僕は自分の本当の身分と過去、王宮でのウィル先生との出会いから弟子にしてもらった経緯を話した。
話し終えると、先輩は僕を見つめて言った。
「改めて、今、聞いた事は決して他言しないと誓う。そして、言わせてくれ。よく頑張ったな。僕は常々、トーラスを見て思っていたんだ。トーラスは13歳とは思えないぐらい落ち着いていて心の芯がしっかりしている。どういう人生を送れば、トーラスのような人間が育つのかと。今、聞いて理解したよ。トーラスはそんな仕打ちをした人間が憎いとは思わないのかい?」
「思いません。それ以上にかけがえのない人達との出会いが合ったから! 人の温かさを知りましたから」
先輩は『そうか』と言って何度も頷いていた。
その後は、いろいろ話をした。
先輩のウィル先生話は尽きる事はなかったが、僕はウィル先生のいろんな武勇伝が聞けて嬉しかった。
そうしている内に、アナウンスが流れた。
「お待たせいたしました。上級生の部、決勝戦を始めたいと思います」




