揺さぶられる心
「アハハハ。トーラス君、大人気だね」
「すごいね。地面が揺れてるようだよ」
シャルロッテ先輩、アルバート先輩が順に笑いながら言ってきた。
その中で僕はというと、恥ずかしくて死にそうだった。
【天使】、【学園の王子様】、ルミエールお姉様は何ていうことを言うんだ!
誇張するにもほどかある。
僕は心の中で早く、リングから降りたいと願い続けたが、これから学園長、将軍、国王のありがたーいお話が始まるので当分、先になりそうだ。
「選手紹介も終わりましたので、続きまして、学園長のお言葉をいただきます」
アナウンスが流れると、貴賓席で一人の男性が立ち上がった。
この学園の学園長は御年、60歳を越える男性だ。体型は少しぽっちゃりしていて言い方があってるかわからないが、典型的な校長先生っていう感じだ。
現国王の父親の弟でもある。
僕の親戚でもあるということだ。
今は王籍から抜けて公爵家の当主もされている。
「学園長のレザール・セスティアーゼだ。今日は天気にも恵まれて武術大会日和である。だからして……………であるからしてここに集まった四名は自分の力を出しきり心踊る試合を期待している。短くなったが、後もつかえているので終わりとする」
きっと今、競技場内の生徒の心は一緒だろう。
(話、長いよ!)
「続きまして、ウィルフリート・ルッテンベルク将軍からお言葉をいただきます。」
「武術大会で敗退した者も、これからの国を担っていく若者達です。学園生活でしか得ることはたくさんあります。これから有意義な学園生活を送り、国のために成長してほしい。そして、勝ち上がった四名の選手達は素晴らしい試合を期待しています。以上です」
将軍として、名を呼ばれたのはウィル先生だった。
「最後は本日、視察にお越しいただいております、国王陛下にお言葉を頂戴いたします」
ルミエールお姉様の言葉に競技場中に緊張がはしる。
「叔父上の話で皆、疲れただろう。なので私は手短に、君達の闘いに期待している」
国王陛下の言葉に競技場中に笑い声が木霊した。
「国王陛下、ありがとうございます。それでは15分後に下級生の部、決勝戦を開始します。アルバート選手とトーラス選手は準備をお願いします」
僕は茫然と国王陛下(父親)を見つめていた。
最後に直接会ったのはいつだっただろうか?
まったく記憶にない。
同じ王宮に住んでいたのに、僕と国王陛下(父親)の関連性はとても薄いんだなと改めて実感した。
国王陛下(父親)は僕の事をどう思っているのだろうか?
学園に入る前は放置され、入学後は王族だと名乗るのを禁止された。
僕は嫌われているのだろうか?
駄目だ。様々な感情が溢れてくる。
今は考えるな。試合に集中しないと!
「トーラス! トーラス! 大丈夫?」
誰かの声が聞こえて、そっちの方を見ると、リディアナの顔があった。
「リディアナ! ごめん。少し考え事をしてて。」
僕の言葉にリディアナは僕の手を握り言った。
「トーラス、大丈夫よ。落ち着いて。私がついてるから」
リディアナの言葉にポッカリ空いた心の隙間が埋まっていく気がした。
「ありがとうリディアナ。もう大丈夫だよ」
「良かったわ。決勝戦、頑張ってね。応援してるからね!」
「勝つよ。行ってくる!」
僕はこれまで通りリディアナから剣とプロテクターを受け取りリングに上がった。
リングに上がると、アルバート先輩の姿はすでにあった。
「アルバート先輩、よろしくお願いします」
「よろしく頼むよ。君の実力はこれまでの試合で見せてもらった。楽しい試合になりそうだね。お互いに全力を尽くそう」
「はい」
「観客席の皆様、下級生の部、決勝戦を始めます。ガイウス先生お願いします」
「それでは下級生の部、決勝戦を始めます。両者、準備はいいか?」
「はい」
「はい」
「始め!」
ガイウス先生の合図と共に決勝戦が始まった。




