変わった二人
僕らは二人一組でアレックスを探す事にした。
僕とイザベル、アンジェリカとカルロスだ。
リディアナは仕事中。
ロイスは寮で静養している。側にリネットとフロースについてもらっている。
なぜ、二人を側に付けたかというと、トスティード先輩は謹慎中だけど、何らかの手を使って報復してくるかもしれない。
ロイスは標的になるかもしれないので、用心のためだ。
とりあえず校舎の近くでアレックスの目撃情報がないか、聞くため人を探した。
しかし、今、生徒のほとんどが競技場にいるため、見当たらない。
僕とイザベルはとりあえず中庭に行ってみた。
「あそこに誰かいますわ!」
イザベルの指差す先に人影が見えた。
アレックスを見かけてないか聞くためにその人の元に向かった。
「すみません。お尋ねしたい事があるのですが?」
「何かな?」
「人を探しているんですが、赤い髪が特徴で背は僕くらいなんですが」
「その子ならさっき見たよ。あっちの池の方に走っていったよ」
「本当ですか。ありがとうございます」
僕とイザベルは頭を下げ、その人に礼を言って、アレックスが向かった池の方に走り始めた。
池に着くと、そこにはアレックスの姿があった。
「アレックス、探したよ!」
「トーラス、イザベル、情けない所を見られちまったな。ごめん、トーラス。約束、守れなくて。自信満々にトーラスに決勝戦で闘おうって言っときながら先輩に完膚なきまでにやられて。結局、俺は昔から何も変わってなかったんだ」
「そんな事ないよ。アレックスは変わったし、強くなったよ!」
「天才のお前に俺の何がわかる! 俺がいくら努力を重ねたところで天才のお前に追い付く事は出来ねぇんだよ! もうほっといてくれよ!」
アレックスの言葉に僕は言葉を失った。
しかし、そんな時、イザベルがアレックスに向かって歩きだし、アレックスの前に着くと、アレックスの頬を思いっきり叩いた。
「何、しやがるんだ」
「ふざけないで! 何が変わってないよ。あなたはそうやってまた自分の殻に閉じ籠るつもりなのかしら?」
「お前に俺の気持ちの何が分かるんだよ!」
「分かるに決まってるわよ!」
「何でだよ!」
「私とアレックスは一緒だから。皆と友達になる前、私たちは本当にひどい人間だったわよね。自覚あるでしょ。私はそんな人間から変わろうと思ったわ。アレックスもそうでしょ。私はずっと、怖かった。いつか、リディアナ達からも見捨てれて、また昔のように一人ぼっちになっちゃうんじゃないかって。私は必死でしたわ。今までの周囲の最悪の評価を変えるために。何度もくじけそうになりましたわ。それでも、私がなぜ、くじけずにいられたかわかって?」
「……」
「アレックスがいたからですわ。私と同じように変わろうと努力するあなたが側にいたから私は変わる事が出来たんですわ。くじけそうになっても努力するあなたを見ると、自然と力が湧いてくるの、私も負けてられないって気持ちになったのよ。だからアレックス、自分をもっと、信じなさい。あなたは変わったわ。あなたはカッコ悪くなんてないわ。あなたの試合の時の姿は輝いていましたわ。あれだけの試合をして、あなたをバカにする人なんて存在しませんわ。負けてしまって悔しいなら強くなればいいではありませんか。一人でダメならあなたには回りにたくさんの頼りになる友達がいますわ。それに私もいますわ」
アレックスはイザベルの言葉を聞き終わると、イザベルを引き寄せ抱き締めた。
「いきなり、何、するんですの!」
「すまん。何か、抱き締めたい気分だったんだ。サンキュー、イザベル。元気出たわ。情けないな俺。また、いっぱい努力して、イザベルにふさわしい人間になるから側にいてくれよな。トーラスもいろいろと言ってごめんな」
イザベルは顔を真っ赤にしていた。
あれは、端から見たら愛の告白にしか見えなかった。アレックス本人は無自覚だろうけど。
「気にしてないよ。それじゃあ、僕は決勝戦があるから競技場に戻るよ。来年、前年度優勝者として、アレックスの前に立てるように、先輩を倒してくるよ!」
「おうよ。頑張ってこいよ!」
僕はその場を立ち去り競技場に向かい歩き始めた。
後ろからイザベルの『この状況を放置していくんじゃありませんわ!』と叫んでいたが、スルーした。
しばらく歩くと、向こうからアンジェリカとカルロスが駆け寄ってきた。
「トーラス、アレックス見つかった? イザベルはどこにいるの?
分かれて、探してるの?」
「アレックスは見つかったよ。池の方にいたよ」
「良かったわ。それでアレックスの様子はどうだったの?」
「すごく落ち込んでいたけど、イザベルのお陰で元に戻ったよ。僕はお邪魔かなって思ったから先に競技場に戻る事にしたんだ」
僕の言葉にアンジェリカの顔がニヤリとした笑顔に変わった。
「何それ! まさか、あの二人が! 私、ちょっと見てくるわね、また後でね」
アンジェリカはそう言うと、池の方に走っていった。
「カルロス、アンジェリカが暴走しないように見てもらえないかな」
「わかったよ」
アンジェリカの事はカルロスに任せた。
少ししたら、池の方から『違いますわ!』というイザベルの叫びが聞こえてきたが、気にせず、競技場に向かった。
新たなる恋の予感です。




