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異母姉の過去と後悔

タイトルの義姉を異母姉に変更しました。

ふと、父親が一緒だから義理の姉ではないと気づきました。

血は繋がってるし。

「二人が仲が良いのは良いことなんだけど、私がいる事忘れてないかしら」


 ノアールお姉様の声に僕はリディアナから離れた。


「すみません」


 ノアールお姉様を見ると、クスクスと微笑んでいた。リディアナは顔を真っ赤にしていた。

 多分、僕の顔も赤くなってるに違いない。


「良いものが見れて私は幸せよ。いいところを邪魔しちゃって悪いんだけど、リディアナさん、今からトーラス君と話があるから、あなた達の友達に戻るのが遅くなるって言いに行ってもらえないかしら? きっと、トーラス君が帰ってこなくて心配してるわ」


 ノアールお姉様の言うとおり、皆は僕が帰ってこなくて心配してるだろう。


「僕からもお願い。後、武術大会が終わったらリディアナに言いたい事があるから時間をもらえないかな?」

「わかった。行ってくるわ。私も話したい事があるから。ノアールお姉様、失礼します」

「行ってらっしゃい。リディアナさんならわかってると思うけど、トーラス君の身分の言葉は秘密だからね」


 リディアナ『はい』と返事をして、部屋を出ていった。


 リディアナが部屋を出た後、少しの間、沈黙が続いた。

 僕は何を話したらいいかわからなくなっていた。

 今までは異母姉というよりは生徒会長、学園の先輩という立場の人として、ノアールお姉様とは接してきた。

 しかし、今、ノアールお姉様に僕が第三王子だとバレてしまった。

 その事について、お姉様はどう思ってるんだろうか?


「トーラス君、いえ、私の異母弟トーラス!」


 ノアールお姉様は僕を弟と呼んだ。

 その瞬間、様々な事が頭をよぎった。


「生徒会長、今まで黙っていてすみません」


 僕は言葉を振り絞り謝罪をした。

 すると、ノアールお姉様は


「生徒会長じゃないでしょ。お姉様でしょ。何で謝るのよ。謝らなくちゃいけないのは私の方よ。私、知っていたの。トーラスが私の異母弟の第三王子だって。」


 ノアールお姉様の言葉に唖然とした。

 知っていた? 僕が第三王子だということを? なぜ? 一度も会った事もないのに。

 もしかして、国王か宰相から聞いていたのか。

 駄目だ。頭の中が整理出来ない。


「なぜ、お姉様は知っていたのですか?」

「それは、王宮であなたを見たことがあるからよ」


 僕を見た事がある? いつ? 僕の記憶では一度もない。もしかしたら、忘れているのか?


「僕の記憶ではお姉様とは一度も王宮で会った事がないと思うのですが、違いますか?」

「違わないわ。面と向かって顔を合わせた事はないわ。私があなたを離れた場所から見ていたのよ」

「なぜ、僕を見ていたのですか?」


 ノアールお姉様は少し悩むような仕草をしてから僕に話を始めた。


「少し、私の昔話をしてもいいかしら?」

「はい」

「私は生まれた時から第一王女として、何一つ不自由なく育ちました。私が欲しいと言えば、何でも手に入った。でもね、一つだけ、私がどれだけ望んでも手に入らない物があったの。それは母からの愛情。私が生まれた一年後に第一王子であるクライブが生まれた事もあり、母の愛情は全て、クライブに注がれたわ。母から見たらいずれ国王になるかもしれないクライブとどこかに嫁いでいく私、比べるまでもなかったのね。だから私はずっと親の愛情に飢えていたの。少しでも構って欲しくて勉強も語学も作法なども頑張った。でも母は私に無関心だった。私はその頃、絶望していた。私の心の中はぐちゃぐちゃだった。そんな状態で私は学園に入る年になった。私は嬉しかった。息苦しい王宮から出る事が出来るから。学園生活は本当に楽しかった。もう王宮に帰りたく無いぐらいに。長期休みは本当に憂鬱だったわ。そんな時、私に転機が訪れたのは。あれは一学年の長期休みに王宮に帰って来た時だったわ。その時も、私は王宮に居場所がなく、居場所を求め、ぶらぶらしていたわ。ふと、入った部屋である女性と出会ったの。その女性が私の心の隙間を埋めてくれたの。その女性はあなたのお母様のリディア様なの」


 今のノアールお姉様からはまったく想像がつかない。

 でもお姉様の気持ちは痛いくらいにわかる。子供にとって、小さい頃の大人からの愛情はかけがえのない物だ。

 僕もマアサに出会わなければ、今の自分はいないと思っている。


「リディア様にたくさんの事を話したわ。リディア様は嫌な顔もせずに、聞いてくれた。私は話せば話すほど、心が軽くなっていくのを感じていた。まるで本当のお母様と話してるようだった。私を優しく包み込んでくれた。いろんな言葉をくれて私の心を癒してくれた。私は毎日、リディア様の元に通うようになっていた。その中で、リディア様が第三妃という立場である事を知ったわ。そしてトーラス、あなたの事も。あなたの置かれていたひどい状況を聞いたわ。リディア様はいつもトーラスの事を話す時だけ泣きそうな顔をされるの。自分の力が足りないからトーラスを助けられないと嘆かれていた。だから私はその時、トーラスの様子を見に行ったの。私が助けなければと思ったの。だけど、そこで見たのは人形のように歩くあなただった。あなたを見て、私は怯んでしまったの。私にあの子を助けられるのかと。そのまま何も出来ずに長期休みが終わり、学園に戻ったわ。私は学園にいる間、ずっと後悔していた。なぜ、手を差しのべなかったのか。そんな思いを抱えながら一年の時が流れ、私は再び、王宮に帰って来た。私は愕然としたわ。そこにいたのは、生き生きとした顔をしたあなただった。私はすぐにリディア様の元に行って、何があったのか聞いたの。リディア様の親友でもあり、リディアナさんのお母様でもあるマアサさんがトーラスを闇の中から救いだしてくれた事を。私は嬉しかったけど、少し悔しかった。私がトーラスを救ってあげられなかったから。だから私は決意したの。いずれ、学園に入学するあなたを影から見守ろうって!」


 ノアールお姉様の話を聞き、僕をどれだけ思っていてくれたかを感じられて素直に嬉しかった。


「ごめんなさい。あの時、あなたを助ける事が出来なくて。こんな頼りない姉だけど、私はあなたの事を姉として愛してるわ」


 僕はもう限界だった。

 涙がポロポロ流れてきた。


「生徒会に入ってから今日までずっとノアールお姉様の事を見続けてきました。だから、お姉様みたいに頼りになるお姉様をもって僕は幸せ者だなぁっていつも思ってました。僕はずっと、お姉様に僕は異母弟のトーラスです! って言いたかったんです。僕も大好きです。お姉様!」


 そう言うと、僕はノアールお姉様に抱きしめられた。

 涙が止まらないのに、心はどんどん満たされていく。

 そうだ。僕はあきらめていたんだ。

 こんな風に姉と心をかよわせられるようになることを。








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