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待機室の攻防

 アレックスが闘いを終えて、客席に帰って来た。


「お疲れ様。かっこよかったわよ!」


 真っ先に声をかけたのはアンジェリカだった。


「サンキュー。まぁ当然の結果だな」


 アレックスは得意気な顔をしてそう言った。


「そのドヤ顔を見ると、誉めなきゃよかったって思ってしまうわね。まぁ今回はすっきりしたからいいけどね。イザベルはアレックスの勇姿を見てどうだった?」

「私ですか? まぁ、合格点をあげてもいいんじゃないかしら!」

「もぉ、イザベルは素直じゃないんだから! 試合中はあんなに真剣に応援してアレックスの一挙手一投足に百面相してたのに!」


 アンジェリカはイザベルに抱きつきながらそう言った。

 イザベルは顔を真っ赤にしながら『そんな事ありえませんわ!』と叫んでいた。


「カルロスは俺の勇姿、どうだった?」

「僕は武術の事はわからないから試合中は本当にヒヤヒヤしたよ。だから勝った時は本当に嬉しかったよ。お疲れ様」

「サンキューな。この勢いで優勝するから応援よろしくな」


 アレックスはそう言うと、カルロスに対してハイタッチをしようと手を出した。

 カルロスはそれに気付き、恥ずかしそうにしながらもハイタッチした。


 僕らはその光景を見て、穏やかな気持ちになっていた。

 カルロスは最近ではどんどん明るくなってきたし、会話に加わる事も増えた。

 特に勉強嫌いのアレックスとイザベルがいつも勉強を見てもらっている事をよく見る。


「アレックスお疲れ! また一段と腕を上げたようだね。僕もうかうかしてられないな」

「油断してると、あっという間に追い抜くぜ! 今から決勝戦が楽しみだぜ!」


 アレックスと決勝で闘えるなら本当に嬉しい。

 しかし、先程のアルバート先輩の試合を見てしまったからアレックスが勝ち上がるかはわからなくなった。

 順当に勝ち上がれば準決勝でアレックスとアルバート先輩は当たるのだ。


「アレックス、そう簡単に決勝に進めると思わない方がいいと思うよ」


 僕は真剣に言った。

 アレックスは何かを悟ったのか真剣な顔つきに変わった。


「俺のブロックに誰か強い奴がいたんだな」

「そうだよ。強敵だよ。油断したら一瞬で負けるよ」

「トーラスがそこまで言う奴なのか」

「実は生徒会の先輩なんだ。名前はアルバート先輩。去年の下級生の部の優勝者だよ。さっき、アレックスの試合の前にアルバート先輩の試合を見たけど、相当な強さだよ」

「なるほどな。トーラスとの再戦の前に立ちはだかる壁という訳だな。相手にとって不足ないぜ!」


 アレックスは怖じ気づくどころか気合いが入りまくりだった。それでこそ、アレックスだ。


「この事は置いといて、次はトーラスの番だな。負けるとは思わないけど、気を抜くなよ」

「わかっているよ。気を引き締めて望むつもりだよ。アレックスに負けないくらいの試合を見せるつもりだよ」

「そっか。頑張れよ」

「ありがとう」


 それから少し経ち、アナウンスで僕の名前が呼ばれた。


「皆、行ってきます」

「頑張れよ。負けんなよ」

「頑張ってね。あいつにこの世の地獄というものを見せてあげてちょうだい」

「私が応援してあげるんですから、頑張るんてわすわよ」

「トーラスの事だから心配はしてないけど、やり過ぎないようにね」


 アレックス、アンジェリカ、イザベル、カルロスの順に激励の言葉をもらった。


 僕は待機室に移動しながら考えていた。

 先輩は自分が僕に負けるなんて一欠片も思っていないはずだ。

 僕はその甘い考えを粉々にしてやるつもりだ。

 ロイスへの愚かな行為の数々、リディアナと僕に対する行い、全ての報いは受けてもらう。

 そして愚かな考え方を改めてもらう。

 まぁそれは無理かもしれないけど。


 そんな事を考えていると、待機室に到着した。

 部屋に入ると、トスティード先輩がいた。


「お前、逃げなかったんだな。来るのが遅いから怖じ気づいて逃げたもんだと思ったわ」


 トスティードはゲラゲラ笑いながらそう言った。


「なんで僕が先輩ごときと闘うだけで逃げなくちゃいけないんですか。先輩、流石に自惚れが過ぎるんじゃないですか?」


 僕は嫌みたっぷりに言い返した。


「てめぇいい度胸してんじゃねぇか。聞いたぜ。お前、子爵家の庶子なんだってな。元平民の分際で俺様に楯突いた事を試合で思い知らせてやるよ」


 先輩は誰から聞いたのかわからないが僕の出自を知っていた。 

 まぁ作り話だけどね。


「それじゃあ、先輩が蔑む平民の僕に負けちゃう先輩はそれ以下って事ですね」

「てめぇ、本当に口だけは一人前だな。試合が始まればへらず口も叩けなくなるからな。少しは粘ってくれよな。いきなり参ったって言っても止めねぇからな」

「どうぞ。お好きなように。もちろん僕は先輩が参ったと言ったら止めてあげますよ。なので駄目だと思ったらお早めにお願いしますね。僕もまだまだ未熟者なので手加減出来ないかもしれませんので」


 その後も、険悪な雰囲気のまま、時が過ぎ、ついに、僕らの出番になった。


 僕は軽くストレッチをして、歩き出した。

 1回戦同様にリディアナが剣とプロテクターを渡してくれた。

 僕はリディアナに『ロイスのためにも、自分のためにも、そしてリディアナのためにも頑張ってくるよ!』と言ってリングに向かった。

 後ろからリディアナの『頑張って!』の言葉が聞こえた。


 さぁ、試合が始まる。借りは百倍にして返してやる!






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