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見覚えのある構えとアレックスの試合

 僕たちは観客席に戻り、自分達の出番を待った。


「この試合でやっと1回戦も終わりだな。準備は出来てるかトーラス!」

「もちろんだよアレックス! アレックスこそ足元をすくわれないでね」

「心配無用だぜ。長期休みの秘密特訓の成果を見せてやるぜ!」


 その後も、試合を観戦しながら待っていると、アナウンスでアレックスが呼ばれたので待機部屋に向かっていった。

 僕は再び試合を観始めると僕のよく知る先輩がリングの上にいた。


 今、まさに試合開始を待っていたのは生徒会で一緒のアルバート先輩だった。

 今日はいろんな事があって試合をあまり観戦できていないけど、僕が一番、闘っている姿を見てみたかった人だ!

 アルバート先輩はヴェストリア侯爵家の長男である。

 先輩に聞いた話によると、現ヴェストリア侯爵は王宮で財務大臣の職についている。

 家系的にも文官を多く輩出しており、武官になる者は少ないらしい。

 そういう家系の生まれのアルバート先輩だが、先輩は去年の下級生の部の優勝者なのだ。

 例の二人もアルバート先輩が現れた途端に逃げていったから相当な実力者であるのは間違いない。


 そんな事を考えていると、試合が始まった。

 両者、剣を構える。

 僕はアルバート先輩の構えに驚いた。

 先輩の構えは師匠のウィル先生に瓜二つだった。

 僕自信の構えもウィル先生を参考にしているのでとても似ている。


 試合はアルバート先輩の圧勝だった。

 一気に間合いを詰め、相手の剣を弾き剣を突きつけて相手が降参した。

 動きの1つ1つが洗練されていて、無駄がない。

 先輩は本当に強い!

 それ以上に僕は先輩の構えが気になっていた。

 もしかしたら先輩もウィル先生の指導を受けた事があるのかもしれない。


「トーラス! トーラスってば!」


 そんな時、横からアンジェリカの僕を呼ぶ声がした。

 ふと横を見ると、アンジェリカが少し怒った表情でそこにいた。


「やっと気づいたわね。何度呼んでも応答がないし、もうすぐアレックスの試合が始まるわよ。どうしたの?」

「ごめんアンジェリカ。試合を見るのに集中しすぎていたよ。アレックスの試合が始まるんだね。どこ?」

「あそこよ。トーラスが人の試合にそこまで熱中するなんて珍しいわね。知り合いとか?」

「そうなんだよ。生徒会の先輩なんだ。しかも去年の下級生の部の優勝者なんだ。是非とも試合を見たいと思っていたから、つい熱中しすぎたよ」

「なるほどね。凄い先輩なのね。でも今はアレックスの試合が始まるから応援しましょ!」

「もちろんだよ。まぁでも僕はアレックスの事は心配してないけどね。それだけの努力をアレックスはしてきたのを知っているからね」

「本当にトーラスとアレックスの自信満々ぶりはすごいわ。でもトーラスが言うと安心するわね」


 僕はアルバート先輩の事を一旦、忘れてアレックスの試合に集中した。


 そして、二人の名前がアナウンスされ、リングに上がった。

 アレックスの反対側から上がってくるのは正真正銘、あの時の先輩だった。


 審判の合図で試合が始まった。

 すぐに両者、間合いを詰め、剣での打ち合いが始まる。

 そんな中、僕はあることに気づいた。

 二人の口が動いていた。

 何か話してるようだった。

 さすがに遠すぎて聞こえなかったので後でアレックスに聞いてみよう。


 その後も互いに譲らずに打ち合いは続いた。

 相手の先輩も口だけではなく、ある程度の実力はあるようだ。しかし少し苦しそうな顔をしている。

 反面、アレックスの顔を見ると、まだまだ余裕っていう顔をしていた。

 段々、先輩の剣の勢いは弱くなってきた。

 アレックスはそこを見逃さずに攻めに出た。

 すると、一歩後ろに下がり、驚愕の行動に出た。

 先輩は持っている剣をアレックスに向かって投げてきたのだ。

 剣を受け止め、一瞬怯んでがら空きになったアレックスの腹に向かって突進してきた。

 しかし、アレックスはすぐに横に避けてしかも先輩の足を引っかけて転ばした。

 転んで立ち上がろうとする先輩にアレックスは剣を突き立て何か言った。

 すると、先輩の口から『参りました』という言葉が出て、試合はアレックスの勝利で終わった。

 

 アレックスは手を僕たちの方に高々と上げていた。

 その瞬間、闘技場中から大きな歓声が上がった。

 僕らもアレックスに向かって大声で勝利を讃えた。

 僕は心の中で次は僕の番だなと気を引き締めながらアレックスの帰りを待っていた。


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