糸口を探せ!
僕がこの町の状況を説明するとセバスお父様が嘆いた。
「何てことだ。この町が乗っ取られただと。どうしたらいいんだ。レイトン何か方法はないか?」
セバスお父様は嘆きながらもどうにかしようとレイトンさんに尋ねた。
「まずはカイル様を救出するのが先決かと思われます。しかし申し訳ございません。方法が思い浮かびません」
レイトンさん以外も皆、困惑した表情を浮かべていた。
今の状況はなかなか厳しい。こちらはエマお母様を除いて5人。あちらはガジルと盗賊5人の計6人。しかも人質を取られているので思いきった行動をとることが出来ない。
僕は何か糸口がないか考えた。
そういえば、ガジルが僕を見たときの目が気になる。とても蔑んだ目をしていた。あれはどういう意味があるのだろうか? もしかして僕が憎いのかな? 確か僕の事を噂のご子息と言っていた。噂と言うのは僕がセバスお父様と平民の女性の間に生まれた子供だということだ。ということは、引き取られなければ平民だった僕が貴族になったのが許せないということだろうか? それなら僕への恨みを利用するのは良いかもしれない。
僕はいろいろ考えてある1つの案を思い付いた。
「皆さん、少しいいですか? 1つ案があるのですがいいですか?」
僕の言葉に皆は頷いたので話を続けた。
「ガジルは僕に対して恨みみたいなものを持っていると思うんです」
「それはなぜでしょうか? 初めて会ったトーラス様が恨まれる意味がわかりません」
他の皆もレイトンさんの言葉に相づちを打っていた。
「僕自身というよりも多分僕がセバスお父様に引き取られた事に対してだと思うんです」
僕の言葉に皆、よく分からないという顔をしていた。
「ガジルは僕の事を噂のご子息と言っていました。その噂とは何かわかりますかレイトンさん」
「その噂とはトーラス様は旦那様が平民の女性との間にもうけたお子様というものです。無論、ここにいる皆様は作り話ということはご存じだと思います。その噂がどうしてトーラス様を恨む理由になるのですか?」
「もしセバスお父様とエマお母様にお子様がいた場合、平民との間である子供は子爵家に引き取られることはなかったと思ったのではないでしょうか。ガジルからしてみれば平民の小僧が運良く子爵家子息になった。町長の座を乗っとるような人間です。何の努力もせずに貴族になった子供を恨むことがあってもおかしくはありません」
皆、『それはありうるな』と頷いた。
「トーラスの言葉は正しい気がするがそれがどういう糸口になるんだい?」
セバスお父様は不思議そうな顔をしていた。
「ガジルは僕を地の底に叩き落としたいはずです。その気持ちを利用するんです。作戦はこうです。確かこの後、町長宅で晩餐会が開かれるはずです。セバスお父様、エマお母様にはガジルの前で僕を存分に甘やかしてもらいます。それを見せつけます。しかし、この現状を面白く思っていない人間を作ります。それは執事のレイトンさんです。レイトンさんには平民の母を持つ子供は子爵家に相応しくないと思っているように演技をしてガジルに近づいて欲しいのです。子供を葬る手伝いをして欲しいと言って近付いて欲しいのです。成功したあかつきには町長よりも更に高い地位を約束するとか言えば、必ず食い付いてくるはずです。上手く取り入ってカイル様たちの居場所を聞き出してください。ガジルが僕に気を取られている間に救出してください。そうなれば、形勢逆転です」
「なりません。良い作戦だとは思いますが、トーラス様の命を危険に晒すなんて、私は認めません」
セバスお父様は叫んだ。
「それでは他に何か作戦はありますか? 僕なら大丈夫です。フロースとリネットが付いてますし、僕は結構、腕が立つんですよ。大丈夫です。僕を信じてください」
僕の言葉に何とかセバスお父様は折れてくれた。
フロースとリネットにもしもの時はどんな手を使っても逃げなさいと念を押していた。
こうして作戦は決まった。
僕たちは晩餐会に出るために着替えて町長宅に向かった。




