奪われた町
僕らは早速、町中を歩くことにした。
「何か町の雰囲気がおかしい気がする。ロイスはどう思う?」
僕は率直な感想を言い、ロイスに尋ねた。
「私もそう思います。町を歩く人々に覇気が感じられません」
ロイスも同じ印象を持ったようだ。
「私は町の人々が何かにおびえているように感じます。何かがこの町に起こっているのは確かだと思います。ここは町民の誰かに話を聞くのがよろしいかと思います」
「そうだね。どこかお店に入って話を聞いてみよう」
僕らは歩きながらお店を探すことにした。すると食堂を見つけたのでその店に入ることにした。
店に入ると奥から女性が出てきた。
「すみません。本日はお店はやっていないんです」
彼女はそう言うと奥に下がろうとした。
「すみません。少し聞きたいことがあります。僕らは旅人なのですが、この町に入ってから町の雰囲気とそこに住む人々の様子がおかしいと感じました。何かあったのですか?」
「旅人さんですか。なら早くこの町を離れたほうがいいですよ」
彼女は僕らのことを気遣ってくれた
「お気づかいありがとうございます。しかし、このままこの状況を見過ごすわけにはいきません。何か僕らに助けになることはありませんか?」
僕は彼女の眼をまっすぐ見て言った。
「わかりました。話を聞かれるとまずいので奥にどうぞ」
彼女は僕たちを奥の部屋に招いてくれた。奥は居住スペースのようでそこには男性がいた。
「私はマイサと言います。彼は旦那のジョセフです。あなたたちは旅人と申しましたが私には旅人には見えません。あなたの身分を伺ってもいいですか?」
やはり旅人を装うのには無理があったようだ。
「僕はトーラスと言います。彼はフロース。僕の護衛を務めています。彼女はリネット。僕の侍女を務めています。すみません。旅人と偽ってしまい。身分は明かせませんが、この町のこの状況を変えたいとは本当に思っています。よければこの町に何があったのか話していだだけませんか?」
僕の問いに彼女は話始めた。
「わかりました。あなた方を信じることにします。あれは1カ月前の事です。ある日、この町にとある男がやってきました。その男はとても衰弱していました。彼を不憫に思ったこの町の町長のカイル様は家に招き、看病なさいました。男は徐々に体調も回復していき、感謝の印に仕事を手伝わせてほしいとカイル様に頼んだそうです。そのまま男はカイル様の下で仕事をするようになりました。男はとても真面目ですぐにカイル様は男を信頼するようになりました。そして、そんなある日、町の近くに少数だが盗賊が住み着いたという噂が町中に流れました。カイル様は町の警備隊の者に声をかけ、様子を見に行くことになりました。カイル様は男に自分がいない間、町を守ってくれと頼んでいたそうです。しかし、男はカイル様が出ると、密かに盗賊たちを町に招き入れ、カイル様の奥さまとお子様を人質にとりました。我々はすぐにカイル様を呼びに行くと、盗賊のアジトはもぬけの殻だったそうです。そして、男は戻ったカイル様も捕え、この町の町長の地位に無理やりつきました。町民たちもカイル様たちが人質になっているため手が出せず、何か起こそうとしても手下の盗賊たちを使って脅されました。そして男は町民から金をむしり取りました。その男とはもちろん、今の町長のガジルです。今、思うと、ガジルが衰弱した姿で町に現れたのも恩返しという口実でカイル様の側に近付き町を乗っ取るためだったのです。以上がこの町の現状です」
彼女が言い終わると、僕は怒りが込み上げてきた。しかし一旦落ち着きどうしたらこの状況を変えられるか考えた。
「カイル様は今どうなっていますか? 後、盗賊は何人ですか?」
「カイル様はご家族と一緒に幽閉されています。盗賊は5人程度です」
僕は盗賊の人数があまり多くないことに安心しつつ、まずはカイル様たちの救出が最優先だと考えた。
「いろいろお話、ありがとうございます。必ずこの町を元の素晴らしい町に戻せるように頑張ります。僕は今、この町に来ているロンベスター子爵夫妻の関係者です。ですので子爵と話し合い糸口を探りたいと思います。絶対に希望を捨てないでください。僕たちを信じてください」
僕は二人にそう言うと、店を後にした。
その後、怪しまれないように宿屋に戻り、この町の状況をセバスお父様に話した。




