視察開始!
あれから時が経ち、今日は念願の領内視察の日である。数日前に日程が決まったと執事のレイトンさんから報告を受けた。
今回の視察は周辺の町や村を訪れて領民の声に耳を傾けるのが目的だ。ついでに僕に領内を案内してくれるみたいだ。
視察に向かうのはセバスお父様、エマお母様、僕、侍女にリネット、護衛にフロースとレイトンさんの計6人だ。
なんとレイトンさんは武術の腕も相当立つそうで視察の際はいつも執事兼護衛として同行するそうだ。
あとロンベスター子爵領の治安はとてもよく、子爵夫妻の二人もよく視察に町に行くそうで人員は少人数でも大丈夫と言うことになった。
移動は馬車で行う。護衛の二人は騎馬で横を歩き、リネットが馬車の御者を担当する。リネットが馬車まで動かせるなんて驚きだ。
最初の目的地は領内の南側にある町からだ。そこから西側の町を経由して領内最大の町であるサイゼスを視察する行程だ。
ロンベスター子爵領はこの国にあまたある貴族領の中ではかなり小さい。真ん中あたりに領内最大のサイゼスがあり、その周りに大小様々な町や村が点在している。この領内はこの国で1・2を争うほどワインの生産が盛んで町や村によって様々な品種のワインを作っており村同士で切磋琢磨してより良いワインを産み出している。
今回の視察には村のブドウ畑の視察も含まれているから楽しみだ。
そして僕らは数日かけて最初の目的地の町のリムロスに到着した。
そして宿泊する宿にこの町の町長が挨拶に訪れた。僕も同席することになった。
「セバス様、エマ様、この度、町長に就任いたしましたガジルと申します。よろしくお願いいたします」
この町の町長のようだ。新任みたいだがなぜかセバスお父様が浮かない顔をしている。
「ガジルとやら、カイルはどうした? 私は町長が代わったなど報告を受けていないぞ。どういうことだ!」
セバスお父様は少し怒気をはらんだ声で問い詰めた。
「前町長は一週間前に解任されました。申し訳ございません。ゴタゴタしておりまして報告が遅くなりました。丁度、視察に参られるとお聞き致しましたのでその時に報告しようと思っておりました。お話しは変わるのですが、お隣の方はどなたですか?」
町長の言葉にセバスお父様は納得してないようだったが僕を紹介した。
「この子はこの度、私たちの養子となったトーラスだ」
「噂のご子息でしたか。ご挨拶が遅くなりましたトーラス様」
町長の顔と言葉がまったく一致していなかった。
僕を蔑んだ目で見ていたのだ。
その後、仕事があると言い、部屋を出ていった。
町長が出ていった後、セバスお父様は嘆いていた。
「どういうことだ。カイルが解任されただと。この町に何があったんだ」
セバスお父様は前町長の解任に疑問があるようだ。
「セバスお父様、前町長のカイル殿はどういった方だったのですか?」
「カイルは素晴らしい人物だよ。民の事を良く考え仕事をするやつでとても民に慕われていたんだ。だからカイルが解任されるなんて私には考えられないんだよ」
僕はセバスお父様の言葉に何かあると思った。何より町長の僕を見た蔑むような目が気になっている。とても町長にふさわしい人物には見えない。
「セバスお父様、これは調べてみる必要がありますね。何かがこの町に起きているのは確かです。僕に調べさせてもらってもいいですか?」
「いけません! あなた様ははこの国の第三王子であらせられるのですよ。危険になるかもしれない状況に足を踏み込ませるわけにはまいりません。私共で対処いたしますので」
この時ばかりは自分の息子のトーラスではなくこの国の第三王子のトーラスとして扱った。
「セバスお父様の僕の身を案じてくれるのはとても嬉しいです。しかし、僕は大好きなお父様、お母様の大切な町が危ない状況になるかもしれないのを指を咥えて見ている事はできません。絶対に危ない事はしません。それに僕にはフロースとリネットがついています。少し町の住民に話を聞いてくるだけですお願いします」
僕の懇願にセバスお父様は折れてくれた。
こうして僕とリネット、フロースは少し服装を代え町に聞き込みに出掛けた。




