ロンベスター子爵夫妻
あれからカルロスとも次第に打ち解けられるようになった。それもこれもみんなのお陰だ。
学力テストも終わり、長期休暇が迫っていたある日、僕に書簡が届いた。
その書簡の宛名はなんと今回学園に入るにあたり、養父となっていたロンベスター子爵からだった。
内容は是非、長期休暇にロンベスター子爵領に遊びに来ないかという内容だった。
最近、僕は長期休暇はどうしたらいいのか悩んでいたので子爵の誘いはとても助かった。なのでリネットに頼みすぐに書簡を送ってもらった。
そして、返答は『楽しみにお待ちしております。』だった。
それから普段通りに授業をこなし最終日を迎えた。
「明日から長期休暇に入るわけだが皆さん、気をつけて家まで帰ってください。また新学期に元気な姿で会いましょう」
先生はそう言うと教室を後にした。
こうして前期の学園のカリキュラムは終了した。
皆と別れを惜しみつつも各自、実家に出発していった。
僕もロンベスター子爵領に出発した。もちろんリネットとフロースとも一緒だ。移動手段にはロンベスター子爵が用意してくれた馬車だ。
ロンベスター子爵領は王都の南東部に位置している。馬車で片道4日ほどの位置にある。僕らは間の町で宿を取りながら向かった。そして昼過ぎに目的地にやってきた。
屋敷に着くと、入り口に数人の姿が見えた。
「長旅、お疲れ様でしたトーラス様。私はこのロンベスター子爵家当主セバス・ロンベスターでございます。隣は妻のエマでございます。粗末な屋敷で申し訳ございませんが、自分の家だと思っておくつろぎください。今、ここにいる者はトーラス様の事情を知っているものばかりですのでご安心ください」
セバスさんはスラッとした落ち着きのある壮年の男性だった。
「ありがとうございます。今回は学園に入るにあたりいろいろとご迷惑をおかけしてすみせん。エマさんにも不名誉な話になってしまいすみせん」
僕は謝りたかった。僕の今の立場はセバスさんと町の平民の女性との間の子供。少なからず貴族の間で噂になったはずだ。エマさんには嫌な思いをさせているはずだ。
「トーラス様、いえここではトーラス君と呼ばせてもらうわ。もちろん嫌な思いをしなかったと言えば嘘になりますわ。でもね私は嬉しかったのよ。主人と結婚してから今まで私たちは子供を授かる事は出来なかったわ。たとえ偽りの息子だったとしても私は主人から話を聞いた時、嬉しかったわ。だからトーラス君は気にやまないで。この家で私たちを家族だと思ってのんびり過ごしてくれると私は嬉しいわ」
エマさんの言葉は本当に嬉しかった。記憶を取り戻してから本当に僕は沢山の素晴らしい人に巡り会えているなぁと改めて感じた。
「ありがとうございます。様も君もいりません。呼び捨てで呼んでください。何せ今の僕はトーラス・ロンベスターなのですから。僕も二人の事をセバスお父様、エマお母様と呼んでもいいですか?」
「まぁ! 嬉しいわトーラス。もちろんよ」
「もちろんだとも。それじゃあ屋敷に入ろうかトーラス」
二人は笑顔で言ってくれた。
その後、屋敷の中の案内とそこで働く使用人を紹介してもらった。使用人は出迎えてくれたメイド二人と執事一人とあとは料理人が二人と貴族の屋敷にしてはとても少人数だった。
屋敷がそこまで大きいわけではないのでこの人数で足りるのかもしれない。
使用人の人達も気さくな人ばかりでのんびり過ごせそうだと思った。
部屋に案内されて『夕食まで時間がありますので旅の疲れもありますので一眠りされてはいかがですか?』と言われたのでお言葉に甘えて眠る事にした。やはり馬車の長旅は疲れたみたいでリネットとこの屋敷のメイドに準備をしてもらったお風呂に入りベッドに入るとすぐに眠りに落ちていた。
目が覚めると外はもう暗くなっていた。
するとドアの外からリネットの声がした。
「トーラス様、夕食の時間になりました。お目覚めですか?お入りしてもよろしいですか?」
僕が肯定するとリネットは服装を整えてくれた。
その後、食事をする部屋に向かった。
部屋に入ると、もう二人は席に座っていた。
「すみません。遅くなりました」
「トーラス、ゆっくり休めたかしら。長旅で疲れたでしょうからいっぱい食べてね」
「それでは食事を始めようか。レイトン持ってきて貰えるかい」
セバスお父様の声にかしこまりましたと言い部屋を後にした。
レイトンさんとはこの家の執事の事だ。
食事がくるまで少し話をすることになった。
「トーラス、学園はどうだい? 楽しんでいるかい?」
「はい。たくさん友達が出来てとても充実してます!」
「トーラスは本当に友達が好きみたいね。その笑顔が物語ってるわ」
「はい。本当に皆と出会えた事は僕にとって幸運でした。学園の6年間、皆と切磋琢磨して精進したいと思います」
二人は『頑張れ』と言ってくれた。
話し終わると丁度、食事が運びこまれ食事がスタートした。食事はどれもとても美味しく堪能させていただいた。
食事が終わり、軽い雑談をしていると、セバスお義父様から今後の予定について聞かれた。
「トーラスはここで何かやりたいことはあるかな?」
「領内を見て回りたいです。ここに住む人々と交流していろいろ学びたいです。あと領地運営についても学びたいです」
「優秀だと聞いていたけど、想像以上だね。構わないよ。日程を組んだら後で知らせるよ。領地運営はレイトンに学ぶといいよ。彼は私の右腕として領地運営の一端を担ってくれている。レイトン頼めるかい?」
レイトンさんは『かしこまりました』と頭を下げた。
「ありがとうございます。楽しみにしてます。それでは部屋に戻ります。おやすみなさい」
僕の言葉に『おやすみなさい!』と微笑んでいた。
その後、部屋に戻り日課にしている読書と勉強をしてから眠りについた。




